第四話 つらい時間の耐え方
睡蓮たちによる日向さんへのいじめは日に日にエスカレートしているようだった。ある日は文房具をとられたり、ある日は体操服を隠されたり、さすがに周りから見てもやりすぎだと思う人は多いようで、何人かは睡蓮たちに注意したようだがあまり効果はないらしい。
「日向さん。最近大丈夫?」
「大丈夫だよ。ありがとう佐々木君」
「なんで何も言わないの?日向さんが何か言えばやめてくれるかもしれないよ」
「いや、いいの」
「そう。何か手伝えることがあれば言って」
「ありがとう」
「じゃあさ、佐々木君」
日向さんが急に小声になった。
「うん?なに?」
「この前誘ってくれたデート、今日の放課後いかない?」
「え!いいの?」
「あはは。声大きいよ」
日向さんが困ったように笑う顔はとてもかわいかった。
「あ、ごめん。つい」
「じゃあ、放課後よろしくね」
「うん」
その日の授業はそわそわして全然集中できなかった。
「じゃあ、駅前で待ち合わせようよ」
「え、なんで?」
「だって学校から一緒に行ったらみんなにへんなうわさたてられちゃうかもしれないでしょ」
「たしかにそうだね」
そういうわけで、俺と日向さんは別々で栄えている駅のほうへ向かった。
「おまたせ。まった?」
「いや、ぜんぜんまってないよ」
「あはは。ベタな回答だね」
「俺はベタな展開とか結構好きだよ」
「そうなんだ」
俺たちはそんな会話をしながら進んでいく。
ちなみに日向さんは学校であった時と同じ状態のはずなのになんだかいつもより1.5倍はかわいかった。サラサラのボブヘアもすごく似合っていて、地味な制服でもとても華やかだった。
こんな俺が隣をあるいていいものかとそわそわしてしまっていた。
「なんで今日デートしてくれたの?」
「それは秘密」
なんで急にデートしてくれる気になったのか、見当もつかない。
そのあと俺たちは十二分にデートを楽しんだ。映画を見ておしゃれなカフェに行って感想を言い合いながら軽食をとって、最後にゲームセンターで遊んだ。
それはそれはとても楽しいひと時だった。
そして日向さんが可愛すぎた。
映画で感動して泣いてしまった日向さんやカフェで感想を言い合ってるときに熱くなっていた日向さん。ゲーセンでお金を使いすぎて半泣きになっている日向さんなど、彼女の新しい一面がたくさんみれて俺はとても満足していた。
「ねえ、またこうやって遊んでくれる?」
「うん。もちろん。日向さんの頼みならどこでもいくよ」
「あはは。ありがとう」
すると、日向さんは少しうつむいた。
「このままで今の状況が良くなると思う?」
「今の状況っていうのは、睡蓮さんたちのこと?」
「うん。私は、睡蓮さんたちと仲良くしたいと思っているし、何も言わずに辞めてくれたらそれが一番いいと思ってる。でも……」
「どんどんいじめはエスカレートしてるね」
「うん。やっぱり言わないといけないかな」
「そうだね。なんでそこまでためらってるの?先生にでもいえばすぐ解決してくれそうなのに」
「じゃあ、私の話、聞いてくれる?」
「もちろん」
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