第三話 試行錯誤
「おはよう日向さん」
「おはよう佐々木君」
よし!まずは第一段階突破。
人間関係であいさつはめちゃくちゃ大事だ。
この調子。
「入学して早々テストをやるなんて鬼だよね。まあ俺は勉強できるから余裕だけど」
「あはは。そうなんだ。すごいね。」
ミスった!なんか変な風に自慢してしまった。
絶対ひかれた。
「ていうかもう四月なのにまだ寒いよね。」
「そうだね」
そっけな!
もうちょっとなんか話してくれてもいいじゃん!
その後もなかなか話を盛り上げることができなかった。
そんなこんなで進展のある会話は何もできないまま2週間が終わってしまった。クラスメイトとはある程度打ち解けたが、日向さんとは全く進展しなかった。毎日話しかけてるんだけどなあ。
――――――
「なあ祐也。どうしたら隣の席の女の子と仲良くなれると思う?」
その夜祐也にラインで聞いてみた。
今の状況を話すと
「そりゃ何回も話してみるしかないだろう。もっとがんがんいけ!」
こんな返答しか返ってこなかった。
何回話してもダメな時の対処法について聞いているのに。
「何回話しても進展しないんだよ。なんかいい方法ないのか?」
「なら、デートに誘ってみればいいじゃん」
「え、デート!?」
「うん」
「ムリムリムリムリムリ。そんなのできるわけないじゃん」
「いけるって。そうやってぐいぐいいかないとまた中学の時みたいに何もできずにおわるぞ」
「うーん、そうか」
「そうだって」
「わかった。じゃあ放課後デートに誘ってみる」
――――――
「え?なんで?」
「いや、理由はないけど」
「ふたりっきり?」
「うん」
「ごめん。今日は予定があっていけない」
「あ、うん。それなら、全然気にしなくてもいいよ。ありがとう」
ぜんぜんだめじゃねえか!!
――――――
日向さんをデートに誘って撃沈してから、粛々と毎日を送っているとある日何だか雰囲気が違っているような気がした。
いや、表面上は何も変わっていない。
クラスメイトもいつもと同じように過ごしている、ように感じる。
でも何かが違うのだ。何かが。
そう思いながら過ごしていると、その違和感がはっきりする出来事が起きた。
ガシャーン
「あ。ごめーん」
クスクス
クラスの女子のリーダー格である睡蓮一花が日向さんの机にわざとらしくぶつかり、文房具をばらまいた上に拾うのを手伝うそぶりすら見せず取り巻きのほうへ歩いて行ったのだ。
睡蓮はそのとりまきといっしょに日向さんのほうをちらちら見ながらなにかクスクスと笑っている。
これは誰から見ても日向さんが睡蓮さんのグループからいじめをうけているとわかった。
しかし、誰も何も言わなかった。
というか、日向さんも何も言わずに床に落ちた文房具を拾っている。
「日向さん、はい」
「え、拾ってくれてありがとう。佐々木君」
「何も言わなくていいの、明らかにわざとだったよ」
「……うん」
「そう」
何か言いたくない事情があるのかもしれないし、それ以上深くは聞かなかった。
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