第19話

「裕也くん、よかったら一緒にテスト勉強しませんか?」


 この学校生活にもなんとなく慣れてきた今日この頃。学校では今日からテスト週間に突入した。


 テスト週間の間は部活動がなくなり、皆んなが放課後になると学校に残ったり、塾に行ったり、家に帰ったりしてそれぞれがテストに向けて勉強を始まる。


 それは無論裕也も同様で、前世でそこそこ良い大学に通っていた裕也は二度目の高校の授業を難なく受けることができていた。


 そんな中、裕也は最近では学校が終わり次第なるべく早く帰るようにしていたのだがどうやら今日は早く帰れそうにないらしい。


 裕也の目の前には朱音が立っており、どうやら早く帰ろうとしていた裕也のことを昇降口で待ち伏せしていたらしい。


 どうにかこの状況から逃げれないものかと考えていたがいきなり現れた二つの選択肢を見てそのことに関しては諦めていた。


→「もちろんいいよ、どこで勉強しようか?」

→「もちろんいいよ、よかったら俺の家で勉強しない?」


 相変わらずいろいろ終わっている選択肢を見てもうため息しか出ない。


 これ絶対一条さんの家に連れ込まれるだろ。嫌だな、あの写真がある家で勉強するとか。かといって家に呼ぶのはもっと嫌なんだよな。だって絶対物とか盗んだりしそうだもん。うわー、どっちも選びたくねぇー。


「もちろんいいよ、どこで勉強しようか?」


 裕也はぎこちない笑顔を作る。


「それじゃ、私の家なんてどうですか?今日も両親共に帰ってこないみたいなのでお泊まりをかねてみたいな…」


 朱音は頬赤らめ、まじまじしながら答える。


 あー、やっぱりそうなるか。絶対言うと思ったよ。でもお泊りって何だよ、流石にそこまで誘うか?もしここでお泊まりなんてしたら一生部屋から出れないような気がする。どうにかしてそれだけは避けなくては。


「いやー、ちょっとお泊まりは流石に。ほら俺たちって男と女だしそういうのは好きな人同士じゃないとさ何か間違いがあるかもしれないから」


「裕也くんになら私…」


 その顔やめろ。くー、顔が好みなだけに正直その誘惑に負けそう。でも落ち着け俺、相手は盗撮魔だ。それにこの世界にはまともな女子なんていない。それは今まで嫌というほどわかっているだろ。これも罠だ、だから俺の理性よ落ち着いてくれ。


ブー、ブー


 裕也がどうにかして自分を抑えつけていると突如としてポケットに入っていたスマホが鳴る。


 このタイミングでスマホが鳴るなど嫌なことが起きるとわかっていつつもつい興味本位でみてしまった。


「ゆーくんよかったらこの後一緒にテスト勉強でもしない?わからないことがあったら私が何でも教えてあげるからこの後ゆーくんの家行ってもいい?いいよね、私とゆーくんは結婚するんだからダメなんてことないよね?じゃあ後で行くから待っててね♡」


 それは橙佳からのメールだった。


 最初は誘いから始まっているのになぜか最後には一緒に勉強することが確定している。


 あーもう俺に拒否権はないんですかね。てかこれどうしよう。どう考えても両方同時は無理だろ。これどうすればいいんだ?とりあえず一条さんも俺の家に呼んだ方がいいのか?いや、二人を引き合わせる方がまずいか?でも橙佳を無視したら絶対この後殺される。どっちが正解なんだ?俺はどうすればいい?


「夜ご飯はオムライスがいいな」


「うん!私頑張って作るね」


 裕也は考えることをやめた。

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どうやらヒロイン全員がヤンデレのギャルゲーの主人公に転生したみたいです。選択肢を間違えただけで殺そうとしてくるヒロインたちからどうすれば逃げ切れますか? 無色 @ironasi

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