第14話
「はぁ、憂鬱だ」
昼休憩の時間。裕也は一人屋上でご飯を食べていた。
いつもであれば龍馬と教室で食べているのだが今日は部活の集まりがあるからとどこかに行ってしまった。
結局一人で教室にいるのも居心地が悪かったので誰もいない屋上に来ていた。
「なんかもうどうでもいいー」
ずっと好きだった相手がかなりやばいやつだったことに裕也はショックを受けていた。
そして今後こんなやばいヒロインたちがどんどん増えていくと思うと憂鬱になっていく。
裕也がそんな気怠げに焼きそばパンを食べていると屋上の扉が開いた。
裕也はいきなり扉が開いたことにビックリし、そちらの方向を見る。
そこには顔の左側が腫れ、目が半分虚な少女が立っていた。
服の隙間から見える腕や足にもあざのような跡があり、リボンの色からして一年生であることがわかる。
その少女は裕也の存在に気づいたのかこちらを見てきたがすぐさま視線を逸らした。裕也も関わり合いになりたくはなかったためにすぐ少女から視線を逸らす。
うわー、あれ多分いじめだよな。体にあんなあざばっか作ってかわいそー。この世界にもいじめとかあるだ。早くどっかいってくれねーかな
少女は手すりにもたれかかるとそのまま空を見てぼんやりとしている。
裕也は早くこの居心地の悪い空間から出たかったがパンがまだ残っているのに今屋上から出るとなんか女の子がいやでていったような感じがして少し罪悪感のようなものがあるため出るに出られない。
まぁ、実際は女の子と一緒にいるのがいやだから出たいんだけどそれが相手に伝わるのはなんとなくいやなんだよな。
裕也は若干食べるスピードを早める。
「先輩は私のことどう思いますか?」
「え?」
少女は空を見たまま裕也に話しかけてくる。
裕也もまさかこの状況で喋りかけてくるなんて思っていなかったためにパンを食べる手を止める。
どうって言われても俺この子知らないし、興味ないんだけど。
裕也がどう返せばよいのか考えていると再び少女が尋ねてくる。
「先輩は私のこと好きですか?」
こいつやばいやつだ。裕也はすぐに直感した。
初対面の相手に好きも嫌いもないだろ。この子そんなに自分に自信があるのか?
→「もちろん好きだよ。今初めて見た瞬間から俺は君に惚れている」
→「いや、別に好きではないけど。俺たち初対面だよね?」
また選択肢かよ、でも今回はありがたいな。正直どう返答すればいいのかわからなかったんだよな。
裕也は選択肢が出たことにやや安堵しつつ答える。
「いや、別に好きではないけど。俺たち初対面だよね?」
「そう、ですよね。私のこと好きになる人なんてあるわけないですよね」
少女はそう言うと屋上の手すりをまたぐ。
「おい、なにしてんだ?危ないぞ」
裕也は声をかけるがもう少女にはなにも届いていない。
「誰にも愛されない私なんてやっぱりこの世界には必要ないですよね。むしろ私みたいな子は生きてるだけで迷惑かけちゃうんだからもういっそ…」
次の瞬間、少女はそのまま何の抵抗もなく下へと落ちていった。
「は?」
裕也はまさかそのまま落ちるなど想像もしていなかったために手に持っていたパンを地面に落とす。
ゴツン
パンが地面に落ちると同時、硬いものが地面に勢いよく落ちたような鈍い音が聞こえてくる。
「うそだろ」
裕也は慌てて少女が落ちた場所へと走り、下を見る。
そこには先ほどの少女が頭から血を流して地面に寝そべっている姿があった。
裕也は放心状態になってしまう。
「見てあの子本当に屋上から飛び降りたよw」
「まじウケるw」
「あーあ、また新しいおもちゃ見つけないと」
いじめの主犯格であろう女の子たちの声が下の階から聞こえてくるが裕也の耳には届かない。
ただ、やけに早く来た救急車の音だけがこだまするようにうるさく耳の中で響いていた。
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