第8話
さぁ、これでどうなる?このループから抜け出せたのか?
朱音に告白しなかった次の日、裕也は不安な面持ちで机に座っていた。
今日の授業は全て終わり、後は家に帰るだけとなった教室には裕也一人だけが残っている。
今の所周囲に変わった様子はない。
案の定橙佳は転校してきたし、周囲の会話の内容だって特に変わってはいない。
「本当にこれでよかったのか?いやいや落ち着け。まだ1日目だ。明日になってれば何か変わってるかもしれない」
そうだ、今回は橙佳に殺される理由となった他の女子と付き合うということに関しては問題ないはずだ。だとすればこのままいけば殺されないはず。
正直これでループを脱出できなければもう思いつくことがない。あとやれることといったらどこか遠くに逃げることくらいだ。
「そんなことしたところで意味ない気がするけどな」
裕也は憂鬱な想いを胸に机に突っ伏していた。
「ねぇねぇ」
「んあ?」
教室に一人残っていた裕也に誰かが声をかけてくる。
裕也は項垂れる体の顔だけを横にして誰が来たのか確認する。
「え?橙佳?」
「やっぱりゆうくんだった。私のこと覚えててくれたんだ」
そこにいたのは嬉しそうに満面の笑みで裕也の顔を覗き込むようにしゃがんでいる橙佳の姿だった。
これはどういうことだ?今まで一度も話しかけてこなかった橙佳が俺に話しかけてきた?ってことはもしかして話が進んだのか!
「もちろん覚えてるよ。懐かしいな8年ぶりくらいか」
本当は2日ぶりくらいだけどな。
「覚えてくれてたんだ!嬉しい…。私ゆうくんに会うためにわざわざ戻ってきたんだよ。本当はパパとママと海外に行く予定だったんだけど私一人だけここに残してもらうことにしたの」
「へー、そうなんだ」
別に戻って来なくてもいいよ。俺は別にお前に会いたきゃねーんだよ。今すぐ海外にいってくんねぇーかな。
裕也はここ数日で橙佳に2回も殺されたことによって彼女のことが嫌いになっている。
いくら幼馴染みとは言っても中身の佐藤翔にはここ最近の記憶しかないのだ。
正直なんの思い出もない狂気じみた幼馴染みなどごめんである。
→「俺も会えて嬉しいよ」と言いながら頭を撫でる。
→「俺は別にお前に会いたいなんて思わなかったけどな」と言いながらこの場を後にする。
又しても二つの選択肢が裕也の目の前に現れる。
この選択肢いかれてんのか!?何でこんな両極端しかないんだよ。中間、この中間はないのか?
「俺も会えて嬉しいよ」
裕也はそっと橙佳の頭を撫でる。
「えへへ、もういきなり頭撫でないでよ」
言葉では少し嫌そうにしているが頭を撫でられている橙佳は嬉しそうに顔を真っ赤にしてもじもじしている。
佐藤翔は空気を読める男だ。
いくら嫌いな相手とはいえ無視してこの場を後にしようものならこの後自分がどのような目に合うのかなど明らかだ。
そう、ここで彼女を無視しようもんならすぐさま後を追いかけられて背中から刺されるに決まってる。
あー、早く家に帰って飯作らなきゃな。今日は何食べようかな。前回のループではハンバーグ食べたし、その前はえっと何食べたんだっけ?
裕也は軽い現実逃避をしながら橙佳の頭を撫でつつ天井を見上げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます