第5話
「わぁぁぁ!!!」
裕也は気がつくと外に立っていた。
裕也はすぐさま服をめくって自分の刺された腹を確認する。
腹には刺されたような跡はなく痛みもない。
そして裕也はようやく自分が室内ではなく外に立っていることに気づく。
「はぁ、はぁ、はぁ、ここはこの何処だ?」
自分の身に何が起きたわからないまま裕也は周囲を見渡す。
そこは見覚えのある場所だった。それもつい最近見た場所だ。
「神木くんその、大丈夫?」
「へ?」
取り乱す裕也の目の前、そこに立っていたのはあの一条朱音だった。
朱音は手で顔を隠しながら指の隙間からチラチラと裕也のことを見ていた。
「え?あれ?一条さん?どうしてここに?」
「どうしてって神木くんがここに呼んだんでしょ?話があるからって」
そうだ、思い出した。ここは俺が一条さんに告白した場所だ。そして校舎裏に二人っきりのこのシチュエーションはまさしく今から一条さんに告白するところだ。
でもどういうことだ?俺この前告白しておっけーをもらったはずだよな?もしかして今までのは夢だったのか?一条さんと付き合いたすぎて変な妄想でもしてたのか?
そうだよな、そうに決まってる。まさか俺にこんな美人な彼女ができるわけないし、それで幼馴染みのあいつがそのタイミングで転校してきたあげく殺しにくるなんて変な話だよな。
裕也は状況を理解すると大きく安堵のため息を吐く。そして朱音が先ほどから顔を赤くしてチラチラ見ている視線の先を見てみる。
朱音は先ほどからずっと裕也のめくった服の下、裕也の腹を見ており、そこを恥ずかしそうにしながらチラチラ覗き見していたのだ。
裕也は恥ずかしくなりすぐに服を整えると大きく息を吸う。そして告白しようとしたその時
→「好きです付き合ってください」
→「ごめん、やっぱりなんでもない」
「なんだこれ?」
突如として裕也の目の前に謎の文字が浮かび上がってきたのだ。
「ん?」
不思議に思いその文字を触ろうと手を伸ばす。しかし手は文字に触れることなく空を握る。
「神木くんどうかしたの?」
裕也のその態度に朱音は不思議そうに頭を少し傾ける。
「いやなんか目の前に文字が浮いてて」
「文字?そんなの見えないけど…神木くん大丈夫?今から保健室いく?」
あれ?もしかしてこれ見えてないのか?でも確かに変だよな文字が宙を浮いてるなんて。もしかしてこれも夢なのか?
裕也はまたしても混乱したもののすでに選ぶ方は決まっている。元々告白するつもりで一条さんをここに呼んだのだ。選択肢なんて一つに決まってる。
「好きです付き合ってください」
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