第41話 三級冒険者確保!

 ■■■■■■■■■■

 第41話 三級冒険者確保!

 ■■■■■■■■■■


 俺とミユは帝都のそばに転移した。

 俺は伯爵からもらったメダルを持っているが、ミユがいるから二人で入門の列に並んだ。

 しかし、転移は便利だな。これを覚えてしまうと、もう馬車の旅なんてしたくなくなる。


「お、ハルトじゃないか」


 俺をハルトと呼ぶヤツは限られている。

 バーサスたち四級パーティー【瞬撃の旅団】の四人のうちの三人だ。


「しばらく見てなかったが、生きていたか」

「勝手に殺さないでくれ」

「ハルト、久しぶりね」

「ハルちゃん、今まで何をしてたの?」

「おう、坊主! 飲むぞ!」

「イニスさん、モーラさん、ラングスターさん。お久しぶりです。ちょっと遺跡にこもっていたので、帝都には久しぶりに帰ってきました。あと、ラングスターさんはなんで酒を出しているんですか」

「ガハハハ。冷やしてくれ」


 それ、エールじゃないだろ。スキットル(携帯用酒ボトル)じゃん。


 そんなことを話していると、俺の番になったので、冒険者証を見せて通ろうとしたら止められた。


「お前はこっちへこい」

「おい、ハルト。お前、何をしたんだ?」

「何もしてないよ。あ、ミユのことを頼むよ」

「お、おう……」


 ミユをバーサスに頼み、俺は門番についていく。

 通されたのは、小さな部屋だ。取り調べでもされるのか?

 だが、身に覚えは……クレフォ相手に色々やったが、咎められることではないはずだ。


 たっぷり五時間は待っただろうか。

 忘れられていると思っていたら、騎士が入ってきた。


「なんだ、ガキじゃないか」

「ガキでも三級冒険者ですよ。冒険者証は本物でしたから」


 騎士は威張っており、門番を顎で使っているようだ。


「こんなガキが三級とは、冒険者も質が落ちたんじゃないか」


 好き勝手言ってくれてるじゃないか。


「おい、お前。立て」


 大人しく立って、騎士の後についていく。

 荷車に載せられ、貴族街へ入った。

 そしてデカい屋敷の裏口から中に入った。


「ここで待て」


 庭先に座らされ、周囲には兵士が十人もいる。大層なもてなしだ。


 さっきの騎士が、燕尾服の初老の男と一緒にやってきた。服装からすると、執事だろう。


「この者が三級冒険者なのか?」

「はい。これが冒険者証です」

「たしかに三級冒険者のようですね。名はゼイルハルトですか」


 執事が俺の冒険者証を投げてよこした。


「ゼイルハルトとやら。お前のパーティーメンバーはどこにいる?」

「……俺はソロだ」

「は? お前のような子供がソロで三級だと? ハハハ。これは驚いた。てっきり他のパーティーメンバーがいるものだと思いましたよ」


 外見で人を判断するのはよくあることだ。俺のような外見が子供が三級と言っても、ほとんどのヤツは信じない。


 だから、なんだ?


「ゼイルハルトには、ニードルビーのハチミツを採ってきてもらいます。量は最低でも三百リットルです」


 こいつは何を勝手なことを言っているんだ?


「逃げても無駄ですよ。我がバルガーズ侯爵家の力を持ってすれば、冒険者の一人や二人を指名手配犯にすることくらい簡単なことです」


 権力を背景に、俺を好きに動かせると思っているわけか。


「報酬は?」

「フフフ。ありがたく思いなさい。無事にニードルビーのハチミツを入手したら、金貨を百枚与えましょう」


 一千万Zか。


 話にならなんな。

 こいつはものの価値というものを知らないようだ。


「断る」

「ハハハ。断ることなどできないのですよ」

「お前が行ってこい、バーカ」

「なっ。……生意気な子供ですね」

「ものの価値もしらんバカが何を言うか。お前のようなヤツを世間知らずと言うのだ」

「おのれ、冒険者の分際で!」

「その冒険者に頼らなければ、ニードルビーのハチミツを手に入れられないくせに威張るな。クズ」

「なんという侮辱! アンポッカス! この冒険者に身分というものを教えてやりなさい!」


 沸点が低いな、この執事。

 騎士のアンポッカスが棍棒で殴ってくる。痛くはない

 俺は体の表面に結界を張っている。いつなんどき何があるか分からないので、記憶が戻ってからはいつも張っているものだ。


「お前たちもやれ!」

「「「はっ!」」」


 兵士たちから暴行を受けるが、俺の結界を貫通するものではない。

 次第に殴っていた兵士の息が上がっていく。


「はぁはぁはぁ……」

「侯爵家の騎士と兵士にしては、質が悪いな。そんなことでは七級冒険者にもなれないぞ。ハハハ」

「お、おのれ!」


 必死に殴ってくるが、俺の結界はびくともしない。


「アンポッカス! 何をしているのだ!? 全然堪えてないではないか!?」


 アンポッカスたちのほうが堪えているけどな。

 そのアンポッカスが剣を抜いた。


「この野郎!」


 ガツンッ。

 そんな鈍らでは俺の結界は斬れないぞ。


「な、なんでだよ……」

「腕が悪い、剣も鈍ら、それでよく騎士なんてしているな」

「う、うるさい!」


 アンポッカスは狂ったように斬りつけてくる。

 次第に動きが悪くなっていき、大粒の汗を流し、肩で息をする。


「大した訓練もしてないんだろ? それじゃあ、いざという時に簡単に死ぬぞ」

「お前はなんなんだよ!?」

「三級冒険者だ。お前たちが逆立ちしたってなることはできない、高みにいる者だよ」

「くっ……」

「えーい、役立たずどもが! こんなガキ一人に、何をてこずっているのか!?」


 執事がヒステリックに喚き散らした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る