第39話 魔導都市エルディス

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 第39話 魔導都市エルディス

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 最初の戦闘後、クモモドキのモンスターが三体現れた。

 風魔法のウィンドスラッシュと水魔法のウォータ、火属性のファイアを試してみたが、どれもいまいち効かなかった。

 ただし、倒せないのだが、ウォータは水量を増やすことで押し流すことはできるし、ファイアは熱量を上げることで硬い装甲を少しだけ溶かすことができた。

 今のところ、一番効果があるのはストーンミサイルだ。


 モンスターを倒しながら進んでいると、右に扉が現れた。かなり大きなもので、高さは五メートル、幅も五メートルある。


 当然だが、確認する。

 と思ったが、これはどうやって開けるのだろうか。ドアノブも取手も引手もない。

 押してみるが、びくともしない。


「ミユ、手伝ってくれ」

「はい」


 二人がかりで扉を押すが、まったく動く気配はない。

 その時、扉の横の壁から四角の箱が壁から出っ張っているのが、目に入った。


「これを……どうすればいいんだ?」


 さっぱり分からん。

 前世の記憶にも、こんなものの知識はない。

 魔力は微少ながら感じる。魔力を込めてみるか。


 ピコン。ガガガッ。


「お?」


 箱の一部が光り、俺は飛び退いた。


 <システム起動します>


 箱に文字が浮かび上がった。

 これは……ムーラ語か。

 まさかこんなところでムーラ語を見るとはな。

 前世で魔法を学んだ者なら、ムーラ語は馴染みがある。ただ、この時代ではムーラ語を見る機会はなかった。

 前世なら詠唱魔法といえば、ムーラ語だった。それがこの時代ではムーラ語ではなくなっていた。

 いつからそんなことになったのか。まったく嘆かわしい。

 おっといけない、話が横道に逸れてしまった。


 しかしシステムとはなんだ? 何がどうなっているのか、さっぱり理解できん。


「師匠。それはなんですか?」

「俺にもさっぱり分からん」


 ムーラ語は魔法文字とも言われていた。つまり、この地下遺跡には、魔法に関わる何かがある可能性が高い。


 <魔力充填率一パーセント>

 <魔力が不足しています。補充をお願いします>


 表示に従い、その箱に魔力を流し込んでみた。


 <魔力充填率三パーセント>


 廊下に灯りがついた。

 松明はない。魔法で光を発生させているのか?


 <魔力充填率十パーセント>


 <魔力充填率三十パーセント>


 <魔力充填率六十パーセント>


 <魔力充填率百パーセント>


 俺の全魔力の半分ほどで充填が完了した。


 <システムをオールクリア>

 <システム再起動に伴い、マスターの登録を行いました。最後にマスターのお名前を登録してください>


 マスターとはなんだ?

 よく分からんが、名前を登録すればいいようだ。


「俺はゼイルハルトだ」


 一応、ムーラ語で名前を告げる。


 <マスターの固体名として『ゼイルハルト』を登録しました。以後、ゼイルハルトの命令が最優先されます>


 お、おう……。だから何?


 プシューーーッ。

 扉が開いていく。


 部屋は十メートル四方で、灯りはついていた。

 中央に高さが腰くらいの箱があった。

 俺とミユが部屋に入ると、扉が閉まった。閉じ込められたのか?

 ミユが俺の左腕の裾を握ってくる。怖いのか、少し震えている。


「大丈夫だ。俺がいるだろ」

「はい」


 ミユを落ちつかせ、箱に触れてみる。

 部屋中に色々な絵が浮かび上がった。


「な、何?」


 ミユが怖がっている。

 俺もちょっと怖い。ちびったかも。

 未知のものに触れるのは恐ろしい。


 でも……。


 わくわくする。


 どういう原理か分からないが、地上の絵がある。しかも動いてるぞ、これ。


「これはなんだ?」


 しかも、すごく綺麗な絵だ。これは本当に絵なのか?


『監視カメラからの映像になります』


「「っ!?」」


「ミユ。今、喋ったか?」


 ミユは激しく首を左右に振った。

 それもそうか、声はムーラ語で語っているのだから、ミユであるわけがない。


『喋ったのは私です』

「誰だ!?」

『魔導都市エルディスを管理する管理システムです』

「魔導都市エルディスとはなんだ?」


 そこから管理システムの話が始まった。


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 管理システムは魔導都市エルディスを維持管理するために、魔導暦一九九九年に導入された。

 魔導都市エルディスは第三世代型都市であり、魔王種が率いるモンスターの侵攻に対する最新鋭防衛能力を有している。

 モンスターの侵攻に備えて、地下に造られたのが第三世代型都市になる。

 魔導都市エルディスは地下千メートルにあり、二十万人の生活を支える各種地下巨大プラントを備えている。

 防衛システムは固定型砲台各種、自律型移動砲台各種、防衛用魔導機各種があり、これらを自律型整備魔導機が保守点検を行っている。

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 俺が止めなかったら、いつまでも説明をしていたことだろう。


「なんか面白そうだな」

『意味がわかりません』

「こっちの話だ」


 さて、状況についていけず、ポカーンとしているミユを見る。


「ミユ。俺はやることができた。その間、お前は魔力制御の訓練をしてくれ」

「分かりました」


 俺は管理システムから魔導都市エルディスの情報を引き出していく。

 地上の遺跡はダミーの生活エリアのようで、本体は地下都市らしい。

 魔王種でも迎撃できる機能を備えていたが、人が移住する前にモンスターの侵攻を受けて地上の町が占拠されたらしい。そのため、人間はこの魔導都市エルディスを放棄したのだとか。

 魔導都市エルディスは自律型整備魔導機が保守していたが、魔力を供給する人間がいないため、魔力が切れて休眠状態になったらしい。


 今、俺たちがいるのは、魔導都市エルディスに通じる通路で、三十五区画の防衛用防壁によって区切られている最初の区画になる。

 各区画には、マスター権限を持つ人が操作できるように、この部屋と同じものがあるらしい。


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