六章
第38話 地下遺跡
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第38話 地下遺跡
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ガツンッガツンッという音で目を覚ました。
まだ夜中だが、モンスター……いや、人の襲撃のようだ。
「ミユ。起きているか」
「はい」
「どうやら冒険者の襲撃のようだ」
「殲滅します」
「おう、攻撃してくるなら、モンスターと変わらん。容赦はするな。そして、決して油断するな」
「はい」
ミユがストーンハウスの一部を解除し、出ていく。
「おうおう、嬢ちゃんよー。よくもやってくれたな」
ミユの知り合いか?
建物の陰から覗き見ると、見覚えがあるヤツだった。
「あなたは試験官の方でしたわね」
「お前のおかげで俺の息子が酷い目に遭った!」
股間を撃ち抜かれた……名前はモブガーだったかな。
「お礼参りにやってきたぜ!」
「そうですか。後ろの方々もこの試験官に味方するのですか?」
「へへへ。嬢ちゃんが一晩相手してくれるんだったら、考えてもいいぜ」
「俺は毎晩だ。グヘヘヘ」
「お前ら、あんなまな板に欲情すんなよ。女日照りのヤツはこれだから嫌なんだよ」
「「うっせーんだよっ!」」
モブガーの仲間は三人。たしかモブガーは六級だったか。仲間も六級くらいか。
「お前ら、こいつは魔法を使う。一気にやるぞ!」
「「「応!」」」
その瞬間、ミユの呟きが聞こえた。
「ストーンバレット」
「「「「ギャァァァッ」」」」
まだ制御が甘い。まだまだ修業が足りん。訓練を追加だな。
「とどめです。ファイア」
四人をまとめて火葬か。
「ミユ。ゴミは残らず燃やし尽くせよ」
「はい」
あ、そうだ。
ミユの魔法制御はまだ甘い。ここで少し訓練しておくか。
魔力を伸ばしてミユの魔力に干渉する。
「ふへ……」
ミユが涙目で俺を見てくる。
「ちゃんとゴミを燃やし尽くせよ」
何か言いたそうだが、そこは無視してミユがファイアを維持するのを邪魔する。
「くっ」
ミユの顔が歪み、額から雨のような汗を流す。
「ほら、ファイアが揺らいでいるぞ。集中しろ」
この程度で魔法制御の安定を欠くようではダメだ。
ミユは俺の邪魔を受けてもなんとかゴミを燃やし尽くした。
まだまだ制御が甘いのは一目瞭然。修行が足りん。
「あの程度で制御が甘くなるようでは、まだまだだ。これからも魔力の制御を怠ることのないようにな」
「……はい」
疲れ切った顔だが、制御が甘いからそんなことになるのだ。
「クリーンで体を清めて寝るといい」
まだ夜明けまでには時間がある。ゆっくり寝るといい。
遺跡探索を開始して幾日。
二層はくまなく探索したから、三層に入ろうと思う。
そんな時だった。ミユがとうとうストレージに開眼した。
「容量がどのくらいか、確認してみてくれ」
「はい」
容量の確認は簡単だ。
ストレージに地面の土を目一杯収納すれば分かる。
地面に開いた穴の大きさが容量になるのだ。
「縦横五メートル、深さは十メートルか。まずまずの容量……ん、あれはなんだ?」
穴の深いところでボロリと壁が崩れて横穴が開いた。
「ミユ。あそこまで降りる階段を作ってくれ」
「はい」
俺たちはミユの作った階段を下りて、その横穴を覗き込んだ。
真っ暗で見えないので、光魔法のライトを発動させる。
小さな太陽が空中に浮かぶ。
「通路のようだな」
俺たちが立つ場所から通路の床は三メートルほど下にある。天井の高さは六メートルくらいで、幅は五メートルはある。結構広い通路だ。
フフフ。お宝の匂いがするぜ。
「息はできるな」
一応、ウィンドで空気を送り込んでおくか。
十分に風を送り込んだ俺は、ミユを連れて中に入る。
「ミユ。階段を解除して土を戻しておいてくれ」
「はい」
これで誰も入ってこられなくなった。
もしこの通路が地上に通じてなかったら、またここの土を収納すればいいから目印をつけておく。
通路をゆっくりと進む。今のところ罠はない。
と思ったら、何かが近づいてくる音がする。
それは六本脚で、金属の装甲を持ったクモのようなモンスターだった。
初めて見るモンスターだ。前世の知識にもない。
「ミユ」
「はい。ストーンバレット!」
石の弾丸が目に見えない速度で放たれる。
ガンッ。
モンスターは多少凹んだが、動きを止めない。
「もっと硬度と速度を上げろ」
「はい。ストーンバレット!」
さっきよりも高速で放たれた石の弾丸が、モンスターにめり込んだ。
だが、それでも動きは止まらない。
「ちっ。ストーンミサイル」
俺が放ったストーンミサイルは、モンスターに命中して半壊させた。
「ストーンミサイルをうけても半壊かよ……」
この地下遺跡は、かなり危険なモンスターがいるようだ。
「師匠、すみません」
「何も謝ることはない。あれはかなりの防御力だったからな。ただ、今度は別の属性の攻撃も試してみようか」
「はい」
俺はそのモンスターの死体を確認する。
体の中も金属でできているのが分かる。
俺が知るモンスターと、体の構造がまったく違っていることに驚きを覚える。
「それに、こいつは血を流さないのか」
血を流さないモンスターなど聞いたことがない。
「ん、これは……」
血ではないが、液体が少し流れ出ていた。
指先につけ、臭いを嗅いでみると臭い。触った感じは油のようなものだ。
火を近づけると、勢いよく燃えた。やっぱり油か。
「こいつの体内には油が流れているのか」
脂が多いモンスターはいるが、こんな油ではない。
なんとも異質なモンスターだ。
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