第23話 四級パーティー【瞬撃の旅団】

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 第23話 四級パーティー【瞬撃の旅団】

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 二杯目のエールを頼んだところで、三人の男女が近づいてきた。


「バーサス、あんたまた飲んでるの?」


 気の強そうな軽鎧の女性は二十代前半か。焦げ茶色の髪を短く切り揃え、腰の後ろに二本のショートソードがクロスしている。

 ちなみに、胸はない。


「おう、お前たちか」

「子供を虐めたらダメよ、バーサス」


 女性魔法使いは年齢が二十代中頃くらいかな。ピンクの髪とエメラルドのような緑色の瞳をしている。

 うん、大きい!


「誰が虐めてるって? おいおい、俺は親睦を深めているんだよ。なー、ゼイルハルト」

「まあ、そうですね」


 バーサスが肩を組んでくる。イケメンとはいえ、男はお呼びじゃない。離れろよ。


「おい、坊主。こいつは酒癖が悪いんだ。すまなんだな」


 この男はたぶんドワーフの血が入っている。俺より少し高い背だが、樽のような体形をしていて、赤茶色の髪、そして顔のほとんどを覆う髭を生やしている。


「お前が言うな、ラングスター!」


 どうやら樽体型の人は、酒癖が悪いようだ。

 ドワーフの血が入っていそうだから、酒を水のように飲むんだろうな。


「おい、ゼイルハルト。こいつらは俺のパーティーメンバーだ」

「ゼイルハルトです。よろしくお願いします」


 特に巨乳のお姉さん、よろしくお願いします!


「あたしはイニシャニスよ。イニスって呼んでちょうだい」


 揺れない……。


「私はモーラよ。よろしくね」


 揺れてますよ!


「ワシはラングスターじゃ。よろしくな、坊主」


 髭が暑苦しい……。


「お前ら、聞いて驚け。このゼイルハルトはなんと三級冒険者だ」

「なんですって!?」

「え?」

「何じゃと!?」

「一応、三級冒険者をしています」


 三人とも唖然としてる。


「三人も飲みますか? 俺が奢りますので、遺跡の話を聞かせてください」


 三人を座らせて、マスターにエールを三つと肴の追加を頼んだ。


「まさか君みたいな少年が三級とはね……」


 イニスは豪快にエールを飲み、プハーッと息を吐いた。

 ボーイッシュな容姿だが、所作も少年のようだ。まさか本当は男の娘か?


「剣士のようだけど、その年齢で凄いわね」

「俺は魔法も使いますよ、モーラさん」

「え? でも、ゼイルハルト君からは、魔力がほとんど感じられないわよ」

「魔力は抑えてますから」

「あなた、その年で魔力操作を完璧に行っているというの?」


 モーラさんが目を見開く。胸も揺れる。


「この年で三級なんだ、隠し玉の一つや二つは持っているだろうさ。それに、ゼイルハルトはエールを魔法で冷たくして飲んでるんだぜ! 魔法を贅沢なことに使ってやがるぜ。ハハハ」

「なんじゃと!? ゼイルハルト! エールを冷たくするのか? それは旨いのか!?」


 俺が一杯目をまだ飲んでいるのに、後からやってきたラングスターはすでに三杯目を飲んでいる。

 しかも、バーサスの話を聞き魔法に驚くのではなく、酒のことに食いついてきたよ。ドワーフの血は、さすがだな。


「美味しいですよ。冷たくしましょうか」

「頼む!」


 三杯目がもうないから、四杯目を頼んだ。

 四杯目を冷たくしてやり、ラングスターが煽る。


「おおおっ! これはいい。旨いぞ、ゼイルハルト!」

「ハルト、あたしにも頼むよ」

「ハルト……?」

「アハハハ。ゼイルハルトって長いから、ハルトって呼んじゃダメ?」

「……いえ、いいですよ」

「それなら私はハルちゃんって呼んでいいかしら」

「……い、いいですよ」


 さすがにハルちゃんは気恥ずかしい。でも巨乳モーラさんを拒絶するなんてできない。


「おし! 俺もハルちゃ―――」

「ダメです!」

「なんでだよ!?」

「その呼び方はモーラさんのような綺麗なお姉さんだけ許します」

「まあ、綺麗なお姉さんだなんて。ウフフフ」


 モーラさんがクネクネプルンプルンしてます!


「ちっ。お姉さんって年じゃねぇだろ」

「バーサス。あんた、これからは背中に気をつけなさいよ。たまには手元が狂ってモンスターじゃなく、あなたの背中に当たるかもしれないわね」

「おい、それシャレにならんから、止めろよ!」

「綺麗なお姉さんの何が悪いわけ?」


 バーサスは一言多いようだ。口は禍の門というぞ。

 それにモーラさんはとても綺麗で巨乳なんだから、『綺麗なお姉さん』でいいじゃないか。


「おい、坊主。また頼む!」


 それ五杯目だよね? ラングスターはブレないな。


「とにかく、ハルちゃんが魔法を使えるのは分かったわ。勘違いしてごめんなさいね」

「いえ、いいのです」

「よし、この後は俺たちが遺跡を案内してやるぞ!」

「「「え?」」」


 バーサスの言葉に、俺とイニスさん、モーラさんが『こいつ何を言ってるんだ?』という目をした。

 ラングスターは六杯目を頼んでいる。


「さっき遺跡に行くって言ってたじゃねぇか、ハルトよ」

「ええ、言いましたけど……?」

「俺たちはこれでも十年以上遺跡探索をしているんだぜ。遺跡の隅々まで知り尽くしているってわけよ!」


 なるほど、彼らほど案内役に適した人はいないわけだ。


「あんたねー。あたしたち、今朝帰ってきたばかりなんだよ。三日は休暇だって言ったわよね!」

「いいじゃねぇか、ハルトが困っているんだぞ」


 いや、困ってないし。


「いいですよ。ポーターを雇って案内してもらいますから」


 ポーターは荷物持ちだけど、案内役でもある。

 帝都の相場は知らないが、他の遺跡のポーターはそこまで高くない。


「おいおい、俺が案内してやるって言ってんだぜ」

「バーサスさんはポーターの仕事を奪う気ですか」

「うっ……それはだな……」

「ハルちゃんの言う通りよ。遺跡の案内はポーターの子に任せなさい。体を休めるのも、冒険者の仕事よ」


 遺跡の中で何日も過ごすことになるから、冒険者は肉体的にも精神的にも疲弊する。

 そういった疲労に気づかず無茶をした人の死亡率はかなり高くなる。

 だからモーラさんの言うことは正しいし、バーサスはちゃんと休むべきだ。


「わーった、わーった。だが、遺跡のモンスターは強いぞ。三級だからって油断するなよ、ハルト」

「はい。油断するつもりはありません。それから……」

「ん? それから? なんだよ?」

「イニスさんとモーラさんがハルトとハルちゃんと呼ぶのはいいですが、バーサスは普通にゼイルハルトと呼んでくださいね」

「はぁ? なんで俺はダメなんだ!?」

「男にそう呼ばれると、気持ち悪いんですよ」

「うっ……マジか?」

「マジっす」

「「プッ。アハハハ」」


 イニスさんとモーラさんに笑われ、バーサスが眉間にシワを寄せた。


「ラングスターもダメなんだな?」

「ラングスターさんは『坊主』ですから」

「……で、なんで俺だけ呼び捨てなんだ?」

「バーサスですから」

「おい、なんで俺だからなんだよ!」


 イケメンはダメなんだよ。それくらい分かれよ!


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