第18話 護衛依頼開始

 24日分の更新です。

 予約を忘れていました……。




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 第18話 護衛依頼開始

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 日が昇る前に城門に到着。少し待つと、城門が開いた。


「指名依頼を受けてきた三級冒険者のゼイルハルトです」

「聞いている。少しここで待つように」

「はい」


 門番は城門の左右に一人ずつおり、俺はその横で伯爵の馬車が出てくるまでの時間を潰すことになった。


 一時間くらい待ったか、伯爵一行がゾロゾロと出てきた。

 三十歳くらいの騎士が俺に声をかけてきた。


「冒険者のゼイルハルト殿か」

「はい。ゼイルハルトです」

「今回の指揮を執るウーゴライドだ。よろしく頼む」


 今回はライガットはいないようだ。


「こちらこそよろしくお願いします」

「ゼイルハルト殿は一番前の荷車に乗り、前方の警戒を頼む」

「分かりました」


 どうやら歩きではないらしい。

 荷車に乗るため移動していると、馬車のドアが開いた。

 俺は膝をついた。


「ゼイルハルト殿。今回は頼んだよ」

「はい。最善を尽くします」


 報酬の分は働かせてもらいますよ。


「ゼイルハルト殿。お久しぶりですね」

「これは姫様。ご無沙汰しております」


 アンジェラ様も帝都にいくようだ。


「嫌ですわ、わたくしのことはアンジェラと呼んでください」

「承知しました。アンジェラ様」

「もう、『様』なんてよそよそしいですわ。アンジェラとお呼びください」


 そんなことしたら周囲にいる騎士からどれほど白い目で見られることか。そういうことを考えて発言してほしい。


「それはさすがに難しいと……」

「アンジェラ。ゼイルハルト殿が困っている。そこまでにしなさい」

「困っているのですか?」

「身分の差を考えれば、呼び捨てはさすがに」

「……分かりました。諦めますわ」


『今回は』と強調しなくていいから!




 伯爵用の馬車、アンジェラ様用の馬車、その他に荷車が七台(四台は荷物、三台に兵士二十人が乗っている)と騎馬が三十騎。

 これが今回のメンバーで、その中にアンジェラ様の護衛騎士のマーテル様も馬に乗っていた。

 いつものことだが、蔑んだ目で俺を見てくる。巨乳さんならそういう目も大歓迎なんだがな~。


 荷車の御者に乗る際に視線を感じた。騎士の一人が鋭い目で俺を見ていた。もちろん、マーテル様ではない。男の騎士だ。

 その騎士はすぐに騎馬に跨り、視線を外した。俺も荷車に。


「ここに座ってくれ」


 まだ若い兵士が御者席の、自分の横を叩いた。


「出発!」


 俺が荷車に乗ったのを確認したウーゴライド様が、出発の号令を発した。


 俺は一番前の荷車の御者の横に座っている。

 御者は二十五歳のライトという兵士だ。


「あんたの活躍は俺も見ていたんだぜ」


 ライトはオーク集落壊滅作戦に参加していたらしい。


「もっとも、俺は怖くて木の影で震えていたんだけどな。ハハハ」


 あのオークデスピアの殺気は、遠くにいても犇々と感じるものだった。

 七級冒険者の中には、見えないオークデスピアの殺気に当てられて気絶した人もいたらしい。


 ギルマスから聞いた話だが、あの後ギルドが集落を調査したら、洞窟の中から多くの人骨も発見された。

 さらにその後判明したんだが、森を挟んでドラグア伯爵領の反対側の土地では、かなりのオークの被害があったらしい。

 集落や村がいくつも壊滅するほどの被害で、それを放置したその貴族にドラグア伯爵はかなり怒っていたらしい。


 ただ、その貴族も一年前の戦争で大きな被害が出ていて、その時に当主が死んだらしい。

 そういったことからかなり混乱しており、領内のことがおざなりになってしまったのだとか。


 魔力感知に感あり。


「ライトさん。モンスターです」

「え?」

「おそらくグリーンウルフです。数は五体ですね」


 森の中を指差して報告すると、ライトさんが横に陣取っていた騎士に報告した。


「冒険者。仕事だ」

「はい」


 俺は御者台から飛び降り、その勢いのまま駆けた。

 その後ろを一人の騎士が馬を走らせてついてくる。

 俺が荷車に乗り込む際に、鋭い視線を向けてきた人だ。どうやら監視のためについてきているようだ。


 近づいた俺にグリーンウルフが飛びかかってきた。


「ストーンバレット」


 五発のストーンバレットをコントロールし、グリーンウルフの眉間を撃ち抜く。

 封印が解除されたことで、魔力は体感で三十から四十倍くらいになっている。さらに魔力操作も以前より圧倒的にしやすくなった。


 グリーンウルフの死体をストレージに回収し、車列に戻る。

 騎士は何も言わず俺についてくる。


「もう終わったのか。さすがは三級冒険者だ」

「グリーンウルフですから」

「かー、三級冒険者は言うことが違うねぇ」


 ライトさんが俺を持ち上げるが、そういうのはいいから。

 ただ、彼の言葉に厭味は感じないから、悪い気はしない。


「ふん。冒険者ごときが」


 まあ、騎士の中にはこういうのもいる。

 ドラグア伯爵家の騎士団でそれなりの地位に就いている人は、人格者(平民に高圧的でない人)が多いが、全員がそうとは限らない。


 俺が今まで接したことある貴族や騎士は、まず間違いなく平民や冒険者を見下していただけに、ドラグア伯爵家が特殊だと言えるだろう。




 一日に一回か二回の襲撃を撃退するだけの楽な仕事も三日目、今日は野営をすることになった。


 伯爵家一行から少し離れた場所で、二つの商隊が野営の準備をしている。

 野営は危険なので、ある程度固まってするのが常識だ。騎士たちもそれが分かっているから、少し距離を開けていれば何も言わない。


 硬いパンと干し肉、野菜と干し肉が入ったスープで夕食を済ませる。

 さすがに伯爵とアンジェラ様はそれなりの料理を侍女が作っていたが、それでも城で食べるような豪華なものではない。


 見張りは兵士二十人と俺が三交代ですることになっている。

 騎士? 二十人も兵士がいるんだから、騎士が見張りなんてしないさ。騎士様だぜ。


 パチリッと焚火が爆ぜる音が妙に大きく聞こえる。

 今日はあいにくの曇りのようで、月も星も出ていない。嫌な雲だ。


「ゼイルハルト殿。気つけだ、飲むか」

「ありがとうございます」


 ライトさんが酒を持ってきてくれた。

 葡萄酒を焚火で温めたもので、適度に酒精が飛んでいて体が温まる。


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