第13話 オークジェネラル戦

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 第13話 オークジェネラル戦

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 エルダーの武器は金属のメイスだ。

 剣は斬れ味が落ちるからメイスにしたと言っていた。


 オーク集落の壊滅作戦は順調に進み、俺たちはオークリーダー二体を含む多くのオークを倒した。


 冒険者は三百人集まったが、その半分は七級だ。

 七級は補助要員なので、戦闘は六級以上が行っている。つまり、戦闘をしているのは、百五十人程度だ。

 オーク千体対冒険者百五十人。数の差は圧倒的だが、冒険者の士気は高い。


「お前たちは下がれ! そこの奴ら、前に出ろ!」


 三級パーティー【ライトニング】のリーダーが冒険者の疲弊を考えた指揮をしている。

 これがなかなか堂に入っており、あの人ならすぐに二級に上がれるんじゃないかと思わせるカリスマ性を感じるのだった。


 前に出ろと指示が飛んできたから、エルダーと共に前進した。

 オークリーダーが十体のオークを指揮して、組織だった防衛戦を繰り広げている。


「ゼイルハルトはオークリーダーを狙ってくれ。オークは俺が引きつける」

「分かった」


 普通は四級のエルダーがオークリーダーに対するのだが、遠距離から一方的に攻撃できる俺に任された。


「ストーンバレット!」


 エルダーが雑魚オークを引きつけている隙間から、俺はストーンバレットを放った。


 オークの間を縫って高速で飛翔する石の弾丸が、オークリーダーの喉を貫通した。

 喉は眉間と同じように弱点の一つだ。

 寸分たがわず喉を貫いたことで、オークリーダーは悲鳴をあげることなく倒れた。


「やるな、ゼイルハルト!」

「これくらいやらないとソロはキツいですからね」

「そりゃそうだ!」


 俺がオークリーダーを倒す間に、エルダーも二体のオークをメイスで殴り倒していた。さすがは四級だ。


 ストーンバレットを八発展開し、発射!

 眉間とこめかみを撃ち抜き、七体が倒れた。


「ちっ、一体外した」


 予測を越えた動きをされると、狙いが狂うこともある。


「俺もいいところを見せないとな!」


 エルダーが体当たりで体勢を崩し、オークの顔面へメイスを叩き込んだ。


「そのメイスの破壊力は半端ないですね。さすがは四級だ」

「オークリーダーを一発でぶっ殺し、一度に七体のオークを倒したお前に言われてもなぁ」


 派手さでは、俺のほうが上だな。

 もっとも、派手さを競っているわけじゃないんだけど。


「この調子でいくぜ、相棒」

「了解」


 俺たちはオークとオークリーダーを倒しながら進んだ。

 適度に進むと下がれと指示があり、一息ついた。


「オークはかなり減りましたね」

「ああ、いい感じで進んでいるな」


 俺たちが立ちながら干し肉を咀嚼している。

 大規模な作戦中は落ちついて食事なんて望めない。


 腰にぶら下げた竹水筒で喉を潤す。

 水は後方で七級冒険者の魔法使いたちが補給して前線に配っている。

 竹水筒が空になったので、邪魔にならないところに転がしておく。今回は使い捨てだ。


 その時だ。轟音がし、そちらを見ると土煙が立ち上っていた。


「オークジェネラルのお出ましのようだな」


 エルダーの言葉に、俺は頷いた。

 オークジェネラルの討伐危険度は四級だ。エルダーなら勝てないまでも負けることもないだろう。


「エルダー。ジェネラルを引きつけろ!」

「あいよー」


 三級パーティー【ライトニング】のリーダーからの指示で、エルダーがジェネラルに対することになった。


 実戦をしているのは、六割くらいは六級だ。五級が三割以上で、四級以上はほとんどいない。

 つまり、エルダーは対オークジェネラルの主力として期待されている。


「ゼイルハルト、いけるか」

「問題ない」


 四級のエルダーと臨時とはいえパーティーを組んだんだから、ジェネラルと戦うのは覚悟していた。


「うっし、いくぞ」

「了解だ」


 エルダーの三メートル後方を走る。

 エルダーはスピードを緩めず、暴れ回っているオークジェネラルの横腹にメイスを叩きつる。


「おりゃーっ!」


 オークジェネラルのゴツい鎧をへこませたが、オークジェネラルは倒れない。


「グモッ!」


 大剣を振り回し絶ち切ろうとするが、エルダーはそれを盾で受け流した。

 壮絶な戦いが始まった。オークジェネラルもエルダーも一歩も引かない戦いだ。

 エルダーはオークジェネラルの攻撃を受け流してカウンターを入れている。

 オークジェネラルのスタミナも生命力も半端ない。


「お前らー! エルダーとジェネラルの戦いに、オークどもを近づけるな!」

「「「おおおっ!」」」


 オークジェネラルはエルダーに任せ、その間に他のオークを倒すように指示が出た。


 ストーンバレット三連発!


 なんと、オークジェネラルは俺のストーンバレット三連発を防ぎやがった!

 剣で二発、あと頭部のヘルムで一発を弾いた。


「そのまま援護してくれよ、相棒!」


 当たらなくても、俺のストーンバレットを防ぐためにオークジェネラルに隙が生まれる。その隙を見逃すエルダーではない。


 ダメージとしては、エルダーのメイスよりも俺のストーンバレットのほうが高い。

 その証拠にエルダーの攻撃を受けても攻撃しようとするオークジェネラルが、ストーンバレットは防御した。


「ちょっと自慢だな。フフフ」

「おいおい、笑っているんじゃねぇよ」

「集中する! その間、頼みましたよ。エルダー」

「お、おう? なんだか知らんが、任せろ!」


 ストーンバレットの上はストーンミサイルだが、あいつなら気合でストーンミサイルを耐えそうだよな。

 分厚い皮下脂肪は伊達じゃない。しかも、全身を鎧で守られたオークジェネラルは、簡単には倒れない。

 あれを試してみるいいチャンスだ。


 ストーンミサイルと同じ砲弾を構築する。

 ただし、これにはあるからくりがある。

 構築に少し時間がかかるのが難点だが、エルダーが抑えている今なら大丈夫だ。


「エルダー! 避けて!」

「応!」


 エルダーが距離を取った瞬間、砲弾を射出!

 オークジェネラルが危険と判断したが、避けられない。大剣を盾のようにし、砲弾を受けるつもりだ。

 その目には諦めはない。オークジェネラルは俺の魔法を受け止めてやるという確固たる意志を感じる。


「グガァァァァァァァァッ」


 砲弾を大剣で受けたオークジェネラルの咆哮は、大地を揺らすほどのものだ。腹の底からの咆哮だと分かる。


 ボムッ。


「グギャァァァァァァァァッ」


 悪いな、それマグマ弾なんだよ。

 へしゃけた砲弾の中から圧縮されたマグマが飛び散る。

 マグマは慣性の法則にしたがって、オークジェネラルにぶっかかった。


「グギャァァァァァァァァッ(熱ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ)」


 オークジェネラルが熱さのあまり、踊り出した。


「おい、あれはなんだ?」

「あれはマグマだ。超高温の土だな(岩かもしれないが)」

「マグマってあれか? 火山の赤いやつ」

「そそ。めっちゃ熱いドロドロ」

「うわー、引くわー。間違っても俺にかけるなよ」

「敵なら容赦はしないけど、味方なら大丈夫だ」

「俺、ゼイルハルトの仲間だよな!」


 肩を組む前に弱ったオークジェネラルにとどめをさせよ、エルダー。


「おっしゃーっ! オークジェネラルは四級冒険者エルダーと五級冒険者ゼイルハルトが討ち取ったぞーーーっ!」


 マグマによって鎧が溶け、分厚い皮下脂肪も焼け爛れあばら骨が剥き出しになったところに、メイスを叩き込んで太い骨を粉砕し、内臓をずたずたにした。

 さすがのオークジェネラルも、ここまでしたら倒れる。

 そして、エルダーの雄叫びだ。


 俺たちは勝った。討伐危険度四級のオークジェネラルを狩ったんだ。


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