二章

第10話 出陣前に

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 第10話 出陣前に

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 一昨日と同じ宿で一泊した俺は、ギルドへ向かった。

 そしたら、ギルドの前に騎士団員が十人くらいいた。

 ギルドの中に入っても五人の騎士が目に入った。


「どうも。ギルマスはいますか?」

「はい。案内します」


 巨乳お姉さんの双丘は今日も健在です!

 お尻もいい形をしてますね!

 いいものを見させてもらいました。


 ギルマスの部屋に入ると、お姉さんは帰っていった。残念。

 その代わり、むさ苦しい男たちがいた。ちっ。


「やあ、ゼイルハルト殿」

「伯爵様。ごきげんよう」


 頭を下げておく。


「堅苦しい挨拶はいいよ。座ってくれるかな」


 ギルマス、伯爵、ライガット、ヘラルド、そして俺。華がほしい。


「早速だが、ゼイルハルトの調査通り、オークの集落が確認された。ヘラルド、頼む」

「この地図の場所に、間違いなく集落がありました。ここにも書いてあるように、オークが千体はいると思われます。さらにオークリーダーが数十体、オークジェネラルが二体確認できました」


 俺と同じ報告がされた。


「オークジェネラルが二体いるということは、オークキングがいる可能性もありますな」


 ライガットが難しい顔をする。


「オークキングは討伐危険度三級、オークジェネラルにしても四級のモンスターです。七級以上の冒険者を総動員する必要がありますな」

「ライガット。騎士団からどれほど出せる?」

「はっ。正直申しまして、多くて百騎でしょう」


 隣国との戦争で戦力を消失したのが痛いと愚痴るライガット。

 でも、伯爵が意外と多いなと呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。


「すぐに緊急招集をかけます。こういった場合の指揮権は騎士団にありますが、数を出してないのに指揮されますと、冒険者から反感があると思われます」


 今のギルマスはデキル人モードだ。

 あんな姿を見た後だが、仕事に関しては信頼できる人だな。あの姿は、この真面目モードの反動か? 息抜きは大事だよな。


「ならば、集落から逃げたオークの掃討を、騎士団にさせる。集落の壊滅作戦の指揮は、冒険者ギルドから出してくれ」

「話が早くて助かります」


 伯爵が一歩引いたことで、ギルマスが頭を下げた。

 ここで言い合っても状況は好転しないのが分かっているのだろう。伯爵もデキル人っぽい。


「ライガット。現場の指揮はお前が執れ」

「承知しました」


 伯爵の城に宿泊した時に、騎士団長が戦争の傷が癒えてなくて長期不在だと聞いた。だから、ライガットが騎士団を指揮しているらしい。


「冒険者の指揮権はギルドにあることを忘れるなよ」

「はっ」


 ギルマスはすぐに緊急招集をかけた。

 緊急招集はいわば強権だ。これに従わない冒険者は、最悪冒険者資格を剝奪される。

 そんなわけで、俺も参加することになった。


「いいかお前たち! 二日後にオークの集落を潰す! 七級以上は強制だ! 指揮は俺が執る!」


 ギルマスが出張って指揮するらしい。

 模擬戦のあの姿を見ているだけに、少し不安だ。




 宿で英気を養っていると、伯爵家から使いがやってきた。

 見たことある執事から、招待状なるものを渡された。


「壮行会……ですか」

「出陣を前に、ご当主様が皆様を激励したいと仰せにございます」

「……えーっと、俺、冒険者ですよ?」

「冒険者ギルドの方々も冒険者の方々も、お越しになる予定にございます」


 オークの集落の壊滅作戦は冒険者ギルドと騎士団の合同作戦だから理解はするが、なんで俺まで……?

 ただの五級冒険者だぜ? そういうのは、三級以上の高位冒険者が出るものだろ。


 執事は壮行会用の服まで置いていった。

 これ、強制のようだ。この町も早めに出たほうがいいかもしれないな。


 この服、体にピッタリ合うんですけど! いつサイズ取られたの? こわっ!


 伯爵の城に向かって歩いていると、貴族街に入った。

 貴族街は兵士の巡回が多い。


「お前、怪しい奴だな」

「あ、ども。壮行会へ出席する冒険者っす」


 兵士に案内状を出して見せる。兵士はそれを手に取って確認した。


「行ってよし」


 これ、三回目。ウッザー。


 貴族街だから巡回が多いのは仕方がないが、もううんざりだわ。


「ゼイルハルト。お前、なんで歩いてきたんだ?」


 アンジェラ様を助けた時にいた兵士が門番をしていた。


「冒険者ギルドから馬車が出ていると聞かなかったか?」

「聞きましたけど、俺、この町の冒険者じゃないから、他の冒険者と一緒に馬車に乗っても会話がないですよ」

「あー、なるほど。なんとなく分かるわ。ボッチってヤツだな」


 ボッチ言うな、こら!


「まあ、そうですね。ソロのボッチ野郎なんです」


 クソッ。なんで俺がこんなにへりくだらないといけないんだ。だから貴族案件は嫌いなんだ。


「俺が案内しよう。ついてこい」

「うっす」


 顔は笑って、心は怒る。

 生まれた時から逃亡生活をしてきた俺にとって、これくらい簡単なことだ。

 昔はベビースマイルで数々の乳をゲットしてきた俺だぜ!


「ここで待っていろ。すでにギルマスなどのギルド幹部はきている」

「うっす」


 控室に入ると、ギルマス他多数がいた。


「ん、なんだゼイルハルトじゃないか。一人か?」


 地元じゃないソロ冒険者に何を期待しているんだ、ダメマスよ。


「ええ、一人です」

「ギルドから馬車が出ていただろ。乗らなかったのか?」

「歩いてきました」

「なんでわざわざ歩くんだよ? わけわからんぞ、お前」


 ほっとけ。


 部屋の片隅で酒を飲んでいると、冒険者たちが集まってきた。

 目立たないように気配を消していると、会話が聞こえてくる。


 招待されたのは、やっぱり三級以上の冒険者だ。

 彼らのような高位冒険者はこういった貴族のパーティーに呼ばれることがある。高位になるとそういうこともあるのが、冒険者だ。

 そんなところに、五級を呼ぶんじゃないよ。まったく……。


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