第7話 降参、降参、また降参

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 第7話 降参、降参、また降参

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「レディーーー・ヒャイィッツ!」


 ダメマスが楽しんでいる!

 俺も楽しむことにした!


 邪魔な戦士の足をストーンバレットで撃ち抜く。

 が、これまでの模擬戦を見てきて学んだようで、戦士が盾で太ももを守った。


「ガハハハ! お前の戦い方はすでに見ている!」


 飛び上がり、棍棒を大きく振り上げた一撃。

 ガツンッ。

 俺の戦い方を見ていたら、シールドがあることも知っていて当然。戦士はストーンバレットだけ防げば勝てると思ったようだ。


「くっ、卑怯者め!」


 棍棒を落とした手を振っている。手が痺れたようだ。

 全然学んでないじゃん!


 そんな戦士の太ももにストーンバレットを打ち込む。

 前からの攻撃は防げたけど……。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ」


 後方からの攻撃は防げなかったな。


 さて、魔法使いが四人もいるんだ、楽しませてもらうぜ。


 まずは四人の魔力変換に干渉。

 四本も魔力を伸ばしたことなかったけど、意外とできてしまった。


「「「「何!?」」」」


 四人の魔法が不発に終わる。


 今度は一番右の魔法使いの丹田にある魔力をかき乱してみる。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ」


 白目を剥いて倒れた。

 この魔法使いは丹田にある魔力を動かす訓練をおざなりにしていたようだ。


 俺も丹田にある魔力を動かそうとした最初の時は、失禁するほどの痛みを感じたんだよ。

 赤子だったから、何度失禁してもおしめを変えてもらえたけど、今なら黒歴史ものだよな。


「おい、どうしたんだ!?」


 仲間が右側から二番目の魔法使いが、気絶した男の状態を確認する。


「こいつ、洩らしてやがる!」


 そんなこと大声で言ってやるなよ。仲間じゃないのかよ?

 観戦していた冒険者たちが大爆笑している。

 可哀想に、あの魔法使いの渾名は失禁君と決まったな。


「安心しろ、一人だけ不名誉な渾名をつけられることがないようにしていやる」


 左側の二人は、詠唱が終わりそうだ。

 共に魔力変換に干渉して、不発にさせる。


「「くっ、まただ!?」」


 そこで一番左の魔法使いの、毛細血管に魔力を通す。


「うにゃぁ……」


 へたり込んで失禁した。

 毛細血管に魔力を流すと滅茶苦茶気持ちがいいんだ。慣れてないと痛みとは逆の意味で失禁する。


「ま、待て! 俺は降参する!」


 左から二番目の魔法使いが降伏した。

 負けるよりも失禁のほうに恐怖が傾いたようだ。

 仕方がないから、もう一人の魔法使いの大腸を刺激するように魔力を弄る。


「あふんっ……」


 失禁ではなく脱糞した。

 その場に倒れ込んで、尻を突き出してピクピク痙攣している。

 あれは人生終わったな……。ちょっとやり過ぎた。すまん。


「そ、そこまで……勝者ゼイルハルト……」


 ダメマスは鼻を摘まんで俺の勝利宣言をした。

 可哀想だから、止めてやれよ。


「次! 【バジリスクの牙】入れ!」

「あー、俺たちは棄権する」


 五級パーティー【バジリスクの牙】は棄権を宣言したが、ダメマスが戦ってもいないのに、棄権するんじゃない! と怒っている。

 いや、戦いの前だから棄権なんだぞ。


「クソッ! 次【ト】」

「俺たちも棄権だ」

「あーーーっ、何も聞こえない! 【トロルの斧】、さっさと入れ! 五級パーティーのくせに逃げたら二階級降級だからな!」


 うわー。最悪だな、このダメマス。


【トロルの斧】の六人は、嫌そうな顔して出てきた。


「レィ・ファッ!」


 おい、端折るな!

 ちゃんと開始の合図をしろよ。


「「「「「「降参する」」」」」」


 開始と同時に【トロルの斧】は降参した。


 僧侶のいるパーティーだったから、ちょっと期待していたんだけどな……。


「ウガーッ! ガッデェムッ!」


 ダメマスが壊れたよ……。

 髪をかきむしって、地団太を踏んだ。


「【エルディーヒの英雄たち】! 戦わずに降参したら三階級降級だからな!」


 職権乱用もいいところだな、あんた。


 三人パーティーの【エルディーヒの英雄たち】が出てきた。

 三人はダメマスを睨んでいる。その気持ち、分かるよ。


「「「はぁ……」」」


 大きなため息が聞こえてきた。


 まあ、ダメマスのあのやり方は気に入らないけどさ、あんたらも指名依頼に目が眩んで俺から奪おうとしたんだろ。お互い様だと思うぜ、俺。


「レディーーー・ファイト!」


 おおお、まともに言ったよ。

 もう引き出しがなくなったか?


「こうなったらやるぞ!」

「「応!」」


 一人のイケメンと二人のブサメンか。イケメンがリーダーぽい。


「俺は左、エーは前、ビーは右だ」


 え? ブサメンAとブサメンB? いやいやいや、それあかんでしょう。

 それならイケメンはなんて名前だよ?


 三人は俺を取り囲むように動いている。狙いをつけさせないためのようだ。


「―――ファイア・ボール!」


 イケメンが魔法を使った。

 イケメンは剣、ブサメンA・Bは槍を持っていたから前衛かと思ったら、魔法も使えるのか。


 マナシールド!

 ドンッ。


「ちっ。やっぱりシールドを張っているのか」


 イケメンの舌打ちは、絵になる。ムカつくな、こんにゃろめ。


「ウォーター・ボール!」

「ウィンド・スラッシュ!」


 ドバッ。

 キシャンッ。


 どうやら三人の魔法は、俺のマナシールドを破るほどの威力はないようだ。


「今度は俺からだな」

「「「降参!」」」

「………」


 俺が動こうとしたら、降参された。

 人間の尊厳にかかわる攻撃は絶対に嫌だったようだ。


「ギルマス! 俺たちはちゃんと戦ったぞ!」

「「戦って降参したんだ!」」


 たしかに、三人は俺に攻撃をした。それを戦ったというかは、判断の分かれるところだろう。


「ちっ。ちっ。……ちっ。ボソボソ(勝者ゼイルハルト)」


 おい、誰か。審判変えてくれよ。


「ギルマス。聞こえないぞ」


 ギロッと睨まれた。


「勝者ゼイルハルト」


 嫌そうに言うんじゃないよ。まったく、このダメマスは。


「次だ、次! 五級冒険者のラナウエイ、出てこい!」

「………」


 シーン。

 誰も出てこないけど?


「おい、ラナウエイ! 出てこい!」

「おーい、ギルマスー」

「あんっ、なんだ!?」

「ラナウエイなら、腹が痛いと言ってどっかいったぞ」

「なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ! あんの野郎! 三階級降級だ!」


 ブチッブチッブチッブチッ。ダメマスの髪が散らばって、地面に落ちる。

 あんた、禿げるぞ。俺は構わんけど。


 こうして、俺の模擬戦は終了した。


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