第6話 調子に乗ってる感じ?
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第6話 調子に乗ってる感じ?
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「レディーーー・ファイッ!」
なんとも言えない発音で、模擬戦の開始を告げるギルマス。
その合図を受け、【翼竜の翼】の前衛三人とテイマーに命じられたグリーンウルフが動いた。
まずは剣士が踊りかかってきた。
「死ねやぁぁぁぁぁぁっ!」
模擬戦で殺しにくるのかよ。
ギルマスがあれじゃあ仕方ないか。
「マナシールド」
魔力の盾を展開し、その攻撃を防ぐ。
「ちっ、何かに阻まれたぞ!?」
「俺の突きに耐えられるかな!」
突き出された槍もマナシールドが防いでくれる。
このマナシールドは討伐危険度四級のグレートグリズリーの攻撃を防ぐために開発した無属性魔法だ。簡単に破られないだろう。
魔法使いは詠唱をしている。発動までに、もう少し時間があるか。
戦士の攻撃もグリーンウルフの攻撃も防いだマナシールドを展開したまま、俺は新しい魔法を構築する。
「この野郎! 出てこい!」
「卑怯者!」
「チキン野郎!」
随分な言われようだが、挑発にはのらないぞ。
ストーンバレットを五個展開すると、テイマーが叫んだ。
「魔法がくるぞ!」
俺の魔法の発動を感知したようだが、もう遅い。
「いけ」
五発のストーンバレットが弾かれたように飛んでいく。
瞬間、剣士、槍士、戦士、テイマー、グリーンウルフの足を撃ち抜いた。
「ガッ!?」
「ギャァァァッ」
「イッテーッ」
「アウッ」
「ガウッ」
五発なら狙った場所に正確に命中させるくらいできる。
詠唱していた魔法使いの魔法構築がそろそろ終わる。
そこで俺は魔法使いの魔力に干渉してみる。
二十メートルほど離れているが、俺の魔力は届いた。
魔法を発動させるには、いくつかの段階を踏まないといけない。
最初はどのような魔法を発動させるか。普通の魔法使いは詠唱することで、明確にする。
俺はこれを頭の中でイメージして、発動までの時間をある程度短縮している。
次に魔力を魔法に変換する。これも一般的には詠唱の中で行われる。
そして魔法は発動する。
簡単に述べているが、魔力を魔法に変換する行程が一番時間を要する。
変換中に、相手までの距離、飛翔系の魔法なら速度、命中後の威力、さらには追加効果があるかないか、といった条件を魔法に込めないといけない。
このうちの一つでも欠けると、魔法は不発になる。
俺がやろうとしているのは、魔力を魔法に変換する行程を一部削除するというものだ。
魔力変換が一部でも欠損すれば、魔法は発動しないのだから、ほんの一部でも削ってしまえば魔法の発動を阻害できるというのが、俺の考えだ。
理論というほどのものではないが、今回のことで俺の考えが正しいかどうか判断ができる。
「何っ!?」
魔法が不発に終わった。
魔法使いは何がおきたのか分からないようで、呆然と立ち尽くしている。
フフフ。俺の考えが正しいと立証できたぞ。これは魔法使い対策として、極めて有効だ。
踊り出したいくらい嬉しいが、ここでそんなことしたらヤバい奴認定される。ぐっと我慢だ。
魔法使いは再び詠唱を始めた。
詠唱に不備があると思ったのか、さきほどよりも丁寧にしている。
今度も魔力変換に干渉して、魔力を少しだけ削る。
「くっ!? なぜだ!? なぜ発動しない!?」
魔法使いは混乱しているようだ。
この魔法使い相手では、もう確認できそうにない。
俺は魔法使いとの距離を一気に詰め、その喉元に剣を突きつけた。
「うっ!?」
「降伏するか?」
唾を飲み込む音が聞こえ、魔法使いは諦めた。
「降伏する」
「そこまで! 勝者ゼイルハルト! 救護班、出動!」
まず一勝。
【翼竜の翼】の面々が救護班によって運び出されていく。
そんな恨めしそうな目で俺を見るんじゃない。逆恨みとか勘弁してくれよ。
「次! 【雷鳥】入れ!」
休憩なしかよ、このダメマスが!
まあ、休憩するほど疲れていないけど。
【雷鳥】のは七級パーティーになる。剣士(男)、槍士(女)、騎士(男)、盗賊(女)の男女混合四人パーティーだ。
「レディーーー・ファイツ!」
さっきと発音が違う。そんなことで遊ぶなよな、ダメマス。
「ストーンバレット」
魔法使いがいないから、サクッと終わらせる。
四人の悲鳴がし、太ももから出血して倒れた。
「そこまで! 勝者ゼイルハルト! ちっ。救護班!」
おい、今舌打ちしただろ!
次は六級パーティーの【フェニックスの炎】だ。剣士、槍士、槍士、戦士、騎士、盗賊の六人構成になる。全員女だ。
「レディーーー・ヒャイツッ!」
絶対わざと発音を変えているぞ、
調子に乗ってる感じ? あんたがその気なら、俺だってそれなりに楽しむからな!
「ストーンバレット」
と言っても、魔法使いがいないと、楽しめない。サクッと六人の太ももを撃ち抜く。
魔法使いがいたらもう少し検証したかったけど、このパーティーにはいないんだよ。
「そこまで! 勝者ゼイルハルト! 救護班!」
今度は舌打ちしなかったか。
「おい、ゼイルハルト」
「なんですか?」
「そんなにサクッと倒したら盛り上がらないだろ! もっと見せ場を作れよ!」
そんなこと知らんがな。
「へーい」
「おい、次だ! 【ソーサリアン】入れ!」
よっしゃーっ!
戦士、魔法使い、魔法使い、魔法使い、魔法使い! 男ばかりだから、遠慮しなくていいぞ!
これで検証が進む!
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