第5話 ダメマス登場
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第5話 ダメマス登場
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ライガット様と一緒にギルドに入るのは、悪目立ちするから嫌だったんだ……。
「おいガキ! 俺たちと模擬戦しろ!」
ライガット様はドラグア伯爵家の紋章が入った濃紺の軍服、その胸には勲章がいくつもあり、さらにド派手な深紅のマントをまとっている。
深紅のマントは副団長専用の色で、他の騎士が赤系のマントをつけることは禁止されている。
騎士団と言っても、皆が騎士ではない。
兵卒、従者、下級騎士、中級騎士、上級騎士と階級があって、兵卒と従者はマントをつけることを許されていない。
マントがつけられるのは下級騎士からで、下級騎士は灰色、中級騎士は白色、上級騎士は緑色、副団長は赤色、団長は青色のマントと、色が定められている。
これはどこの国でも同じようなものだ。
もっとも男爵家の騎士団長と王家の騎士団長が同じ青色のマントをつけているんだが……。
ちょっと貴族のことを知っている人なら、マントの色の意味も知っている。
で、俺がライガット様と一緒にギルドへ入っていき、指名依頼を処理された。
それを遠巻きに見ていた冒険者で、負けん気のある人や性格の悪いヤツが俺につっかかってきたわけだ。
それを面白がったヤツがいる。ライガット様だ。この野郎、絡まれている俺を笑って見ていた。
しかも模擬戦して俺に勝ったら、指名依頼をそいつにするとかぬかしやがった。
ライガットに「様」なんかつける必要はない。この野郎で十分だ。
しかもギルマス(ギルドマスター)まで交ざっていやがる。
「さあ、並べ! パーティーでもソロでも構わんぞ! その代わり、死んでも文句言うなよ!」
俺は思うんだ……。死んだら文句は言えないぞ、と。
ギルマスがそれでいいのか?
「ゼイルハルト殿! たくさん集まったな!」
ギルマスは長身で細身の四十代のオッサンだ。
冒険者ギルドの各支部のギルマスは、引退した元冒険者が多い。
何年か前に聞いた話では、最低でも四級が条件らしい。
このちょび髭のオッサンは元三級だと、さっき自慢していた。ウザかった。
それで、こういったお祭りのようなことが好きなんだろう。いい加減、大人になれよ。
「お前が全員に勝ったら、五級に昇級させてやる」
「その言葉、忘れないでくださいよ」
「ああ、もちろんだ」
嘘ついたら、そのちょび髭むしってやるからな。
とはいえ、これはいい機会だ。
対戦相手には、魔法使いもいる。他人の魔力に干渉して、魔法の発動を阻害できるかここで実験させてもらおう。
「お前の対戦相手は八組だ」
ちょっと多くないか? 俺一人で相手するんだろ? 少しは考えろよ、このダメマス。
俺とあんたは初対面だよな? 昔、俺が悪戯した冒険者か? 記憶にないけどなー。
「七級パーティーが二組、六級パーティーが二組、五級パーティーが三組、五級冒険者が一人だ」
五級でソロの冒険者が混じっているのか。面倒だな。
てか、六級冒険者相手に五級が出てくるとか、ふざけているのかよ。
パーティーというのは、それぞれ役割が決まっている。
剣士・槍士(物理攻撃)、戦士・騎士(盾役)、盗賊・偵察 (斥候)、魔法使い・魔術士(魔法攻撃)、神官・僧侶(回復役)といった感じだ。
こういったパーティー相手の攻略方法はある程度確立している。
でも、ソロはこれらの役割を一人でこなす。器用貧乏ならまだいいが、多芸になると本当に厄介なんだよな。
「まずは七級パーティー【翼竜の翼】だ前に出ろ」
ギルマスが審判をする。ノリノリだな、あんた。
【翼竜の翼】は男ばかりの五人組で、丁度いいことに魔法使いがいた。
パーティー構成は剣士、槍士、戦士、テイマー、魔法使いか。
テイマーはモンスターを使役する職だ。大概は一体だが、たまに複数のモンスターを使役しているテイマーもいる。
今回は一体のようで、グリーンウルフがテイマーの横でお座りしている。
「それでは模擬戦を始めるぞ。両者前に」
ギルマスを挟んで、【翼竜の翼】の五人と対峙する。
「分かっていると思うが、模擬戦では死ぬこともある。大怪我をして高額な治療費が必要になる場合もある。それでもやるんだな?」
「止めてもいいのか?」
止めていいなら止めるぞ。
「お前はダメだ。そんなことしたら、面白くないだろ」
面白いとかの問題かよ!
このギルマス、本気でぶっ飛ばしたくなってきた。
魔法使いとの戦いがあるから、やるけどさ。
「相手が気絶したり、降参の意志を示したら、勝負ありだ。俺が止めた後に攻撃したら、治療費の負担、罰金、階級を下げるなど厳しく処分する」
ギルマスの説明を聞いて、【翼竜の翼】の五人と俺は頷いた。
「それじゃあ、開始位置まで下がれ」
およそ十メートル離れて、向き合う。
【翼竜の翼】は戦士と剣士のツートップ、その後ろに槍士、テイマー、そして魔法使いと縦長の配置だ。
先ずは邪魔な前衛の三人と、グリーンウルフを倒すのがセオリーだ。
グリーンウルフの討伐危険度は七級、体高一メートルほどのオオカミ型モンスターで、その名の通り緑色の毛皮をしている。耳と鼻がいいから、戦闘の他に索敵を任せる冒険者は多い。
特に、森や草原の中では毛皮の緑が生きる。草むらの中で待ち構え奇襲することもできるから、テイムして便利なモンスターだ。
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