第3話 夜の若者
2024年6月21日(金曜日)、深夜2時。今日も雨が降っている。
深夜2時、アキラはコンビニのカウンターで在庫を確認していた。雨は相変わらず降り続き、コンビニの窓に無数の雨粒が垂れている。外の街灯が濡れたアスファルトに反射し、ぼんやりとした光が店内にも差し込んでいた。
店内には、冷蔵庫の低いハム音と蛍光灯の微かな音だけが響き、静寂に包まれていた。アキラはふと時計を見上げ、深夜2時を確認した。この時間になると、いつもどこかから誰かが訪れるのだ。
ドアが静かに開く音がして、アキラは顔を上げた。入ってきたのは、若い男性だった。彼はフード付きのパーカーを着ており、フードから滴る雨粒が彼の疲れた表情を際立たせていた。男性はコンビニの奥へと歩き、棚を見回し始めた。
彼はしばらく棚を見て回った後、温かいコーヒーの缶を手に取り、カウンターに向かってきた。アキラは微笑みながら対応した。「こんばんは。雨の中、大変ですね。」
「こんばんは。ええ、少し歩いていたんです。」男性はそう言いながら、コーヒーをカウンターに置いた。
「温かいコーヒーですか。雨の日には特に美味しく感じますね。」アキラはそう言ってレジを打ち、代金を告げた。
「そうですね。」男性は短く答え、財布から小銭を取り出して支払った。その動作はどこかしら疲れ切っているように見えた。
アキラはその様子を見て、少し話を続けることにした。「この時間に歩いているのは珍しいですね。何かお悩みですか?」
男性は少し驚いたようにアキラを見たが、やがて口を開いた。「実は…最近仕事でうまくいかなくて。夢を追いかけて上京してきたんですが、現実は厳しくて。」
アキラは優しく頷きながら聞いていた。「そうですか。私も若い頃は色々と苦労しました。大切なのは、諦めないことですよ。」
「諦めないこと、ですか…」男性は小さく呟き、ふと表情を和らげた。「ありがとうございます。少し気が楽になりました。」
「こちらこそ、話を聞かせてくれてありがとう。またいつでも立ち寄ってくださいね。」アキラは笑顔で答えた。
男性はコーヒーを手に取り、「ありがとう」と短く言って店を出て行った。アキラはその背中を見送りながら、今日も新たな出会いに心が温まるのを感じた。雨はまだ止む気配を見せず、しとしとと降り続けている。
店の外の街灯が再びアスファルトに反射し、夜の静けさを一層引き立てていた。アキラは次の訪問者を待ちながら、コンビニの静けさと外の雨音に包まれていた。
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