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2024年6月18日 21:54
これまでに幾つか蟹場さんの作品を拝見し、感想を書いてきましたが、今回もほとんど同じ感想で、ある意味すごいと思います。同じというのは、・アイデア、着想がよい。・文章も十分でこなれている。・でも「何か」物足りない。で、ここまで同じだと作風と言っていいのかもしれません。もし作風なら、私が指摘しても詮ない話ですが、あえて一度だけ、この「何か」について文章化してみます。気に入らなければスルーしていただければ。今作を例にとって振り返ると、まずアイデアとして紫陽花の色変化と、それだけでなく血を吸うことによる変化を例示して、オチに意外性を出してる、という部分が秀逸です。酸とアルカリの変化は定番なので、そこから一捻りされたのだと思いますが、大変よいかと。「紫陽花が白かった」ことを知っていたことからホラー的な展開に持っていき終わる構成も悪くないものでした。文章も過不足なく……と言いたいところですが、今回はとくに説明が過多に感じられました。紫陽花の変化について、ここまで細部にわたり説明する必要はなく、必要最低限の情報をキビキビと出した方が、話運びにキレが出ると思います。これまでもその傾向は感じていましたが、今回あえて言及しましたのは、今作が掌編だからです。文字数が多ければ、説明が多少長くても問題ありませんから。ただ、このサイズの短編、内容であれば、説明を減らして物語の方に文字を割いてほしい、と思われます。さて、「何か足りない」についてですが、今作に照らし合わせて私が見るに、「ドラマ性」かなと考えました。アイデアは秀逸。文章も十分。ですが、話の構成がそこ止まりのため、「アイデアを披露して終わり」という感じの構成になっているんです。これは概ね、これまで読んだ作品でも言えることだと思います。例えば今作で言えば、「白い紫陽花が赤い」で終わっていて、そこにどんなドラマがあるのか、一切触れられていません。私ならそうですね……二人の向かう先を同級生の家にします。目的は学校のプリントを届けるため。昨日も同じように持っていき、父親らしい人物に手渡した。その家の庭に咲いていた紫陽花が、確か白い花で……という伏線から同じオチに持っていけば、多くを語らずともドラマ性が出るかと。同級生について触れておけば、その分、気付いた真実が重く怖くなるはずです。あ、血を吸って変色する下りは、埋めた死体からと考えるとかなり無理があるので、「新鮮な死体なら」とかフォローしてもいいかも。オチの恐怖も補強されますし。掌編サイズにこだわらなければ、もっと深いドラマを組むことも可能だと思いますし。でも掌編なら、匂わせるに留めるくらいが適切かな、と。蟹場さんの着想に「魅せ方」「物語の面白さ」が、加われば、文句なしに★3出せると思います。あくまで私の好み、趣味前提の希望なので、無理は言いませんが……一読者の意見ということで、ご寛恕いただければ。
作者からの返信
梶野カメムシさん、ご感想ありがとうございます。>文章も過不足なく……と言いたいところですが、今回はとくに説明が過多に感じられました。実を言うと、これでも説明を省いたくらいだったりします。これはおそらく自分が豆知識的な話が好きなせいで、つい書きたくなってしまうからでしょうね。そんなことは読まれる方には何の関係もないんですが。>ですが、話の構成がそこ止まりのため、「アイデアを披露して終わり」という感じの構成になっているんです。これもおっしゃる通りで、アイディアを閃いた時によく考えないまますぐに執筆に入っていることが原因かなと思います。確かに、梶野さんの例のように、見知らぬ人よりも知り合いが亡くなっている方が断然怖いですし、知り合いなら人となりや家庭環境を知っているのでドラマ性も出せますね。元の内容を尊重してくださったのだと思いますが、①帰り道で同級生に紫陽花について教えてもらう。その時に彼女の家の庭に白い紫陽花があるのを見つける。②翌日、同級生が休んだのでプリントを届けに行く。紫陽花が赤くなっているのを見て殺されたことに気づく。これくらいやってもよかったかもです。>もし作風なら、私が指摘しても詮ない話ですが、あえて一度だけ、この「何か」について文章化してみます。無意識でやってしまっているので、作風というよりは手癖や悪癖なんでしょうね。というか、前にも似たようなことをご指摘いただいたのに何度もすみません。すでにプロットを組んでしまったものがいくつかあって、今から改稿できるかは分かりません。なので次回作ではとは言えませんが、新しくプロットを立てる時は梶野さんのおっしゃられた点を意識したいと思います。丁寧な感想ありがとうございました。
これまでに幾つか蟹場さんの作品を拝見し、感想を書いてきましたが、今回もほとんど同じ感想で、ある意味すごいと思います。
同じというのは、
・アイデア、着想がよい。
・文章も十分でこなれている。
・でも「何か」物足りない。
で、ここまで同じだと作風と言っていいのかもしれません。もし作風なら、私が指摘しても詮ない話ですが、あえて一度だけ、この「何か」について文章化してみます。気に入らなければスルーしていただければ。
今作を例にとって振り返ると、まずアイデアとして紫陽花の色変化と、それだけでなく血を吸うことによる変化を例示して、オチに意外性を出してる、という部分が秀逸です。酸とアルカリの変化は定番なので、そこから一捻りされたのだと思いますが、大変よいかと。
「紫陽花が白かった」ことを知っていたことからホラー的な展開に持っていき終わる構成も悪くないものでした。
文章も過不足なく……と言いたいところですが、今回はとくに説明が過多に感じられました。紫陽花の変化について、ここまで細部にわたり説明する必要はなく、必要最低限の情報をキビキビと出した方が、話運びにキレが出ると思います。
これまでもその傾向は感じていましたが、今回あえて言及しましたのは、今作が掌編だからです。文字数が多ければ、説明が多少長くても問題ありませんから。ただ、このサイズの短編、内容であれば、説明を減らして物語の方に文字を割いてほしい、と思われます。
さて、「何か足りない」についてですが、今作に照らし合わせて私が見るに、「ドラマ性」かなと考えました。
アイデアは秀逸。文章も十分。
ですが、話の構成がそこ止まりのため、「アイデアを披露して終わり」という感じの構成になっているんです。これは概ね、これまで読んだ作品でも言えることだと思います。
例えば今作で言えば、「白い紫陽花が赤い」で終わっていて、そこにどんなドラマがあるのか、一切触れられていません。
私ならそうですね……
二人の向かう先を同級生の家にします。目的は学校のプリントを届けるため。昨日も同じように持っていき、父親らしい人物に手渡した。その家の庭に咲いていた紫陽花が、確か白い花で……という伏線から同じオチに持っていけば、多くを語らずともドラマ性が出るかと。同級生について触れておけば、その分、気付いた真実が重く怖くなるはずです。
あ、血を吸って変色する下りは、埋めた死体からと考えるとかなり無理があるので、「新鮮な死体なら」とかフォローしてもいいかも。オチの恐怖も補強されますし。
掌編サイズにこだわらなければ、もっと深いドラマを組むことも可能だと思いますし。でも掌編なら、匂わせるに留めるくらいが適切かな、と。
蟹場さんの着想に「魅せ方」「物語の面白さ」が、加われば、文句なしに★3出せると思います。
あくまで私の好み、趣味前提の希望なので、無理は言いませんが……一読者の意見ということで、ご寛恕いただければ。
作者からの返信
梶野カメムシさん、ご感想ありがとうございます。
>文章も過不足なく……と言いたいところですが、今回はとくに説明が過多に感じられました。
実を言うと、これでも説明を省いたくらいだったりします。
これはおそらく自分が豆知識的な話が好きなせいで、つい書きたくなってしまうからでしょうね。
そんなことは読まれる方には何の関係もないんですが。
>ですが、話の構成がそこ止まりのため、「アイデアを披露して終わり」という感じの構成になっているんです。
これもおっしゃる通りで、アイディアを閃いた時によく考えないまますぐに執筆に入っていることが原因かなと思います。
確かに、梶野さんの例のように、見知らぬ人よりも知り合いが亡くなっている方が断然怖いですし、知り合いなら人となりや家庭環境を知っているのでドラマ性も出せますね。
元の内容を尊重してくださったのだと思いますが、
①帰り道で同級生に紫陽花について教えてもらう。その時に彼女の家の庭に白い紫陽花があるのを見つける。
②翌日、同級生が休んだのでプリントを届けに行く。紫陽花が赤くなっているのを見て殺されたことに気づく。
これくらいやってもよかったかもです。
>もし作風なら、私が指摘しても詮ない話ですが、あえて一度だけ、この「何か」について文章化してみます。
無意識でやってしまっているので、作風というよりは手癖や悪癖なんでしょうね。
というか、前にも似たようなことをご指摘いただいたのに何度もすみません。
すでにプロットを組んでしまったものがいくつかあって、今から改稿できるかは分かりません。
なので次回作ではとは言えませんが、新しくプロットを立てる時は梶野さんのおっしゃられた点を意識したいと思います。
丁寧な感想ありがとうございました。