第37話 出口のない部屋
来人は、腕から血を流し、鏡の向こうで千田実清にもてあそばれる翔子を見るしかなかった。
理沙は、跪く来人に駆け寄り、ハンカチで出血をとめようとした。
鏡の向こう側から実清の声が聞こえる。
「佐倉来人‥お前は、その部屋からでられない‥いや鏡から‥」
来人と理沙は部屋を見渡すと、入って来たはずの扉は壁に変わっていて、そこにも鏡があった!
理沙は「嘘でしょ!」と驚き、入り口のあった壁に向かい、壁を叩くが、本当に扉は存在しなかった。
実清は言葉を続ける。
「さあどうする?佐倉来人?」
そう言うと、右手を翔子の胸元に滑り入れた。
伊勢佐木長者町 アップル
渡瀬聡太は、時間通り出勤した。
いつもと違うのは、来人の母、佐倉幸代がレジに立ち、目を閉じていた。
幸代は聡太が出勤した事に気づくと、「聡太くん、お願いがあるんだけど‥ちょっと来て?」と神妙な面持ちで聡太をバックヤードに連れ込んだ。
聡太がバックヤードについていくと、そこには、
キャリーケースに入った一匹の〝黒猫〟がいた。
幸代は、「この子をこの住所の家に放してきて欲しいの」と一枚のメモ用紙を聡太に渡した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます