僕らの夏休み

@kodaitiseiryu2024

プロローグ

小学生の頃に見た花火をずっと忘れられない。あの頃は幼かった。父さんと祭りに参加して、金魚掬いや、りんご飴、綿菓子に輪投げ。色々な屋台で父さんと一緒に食べて遊んで。

本当に楽しかった、父さんと母さんと遊べる最後の夏祭りは。父さんと母さんは僕たちもアメリカで一緒に住まないかと、打診された事があったけどあの頃は拒否してしまった。

もちろん姉たちも拒否してしていた。英語は翻訳装置と呼ばれる、頭に被るヘルメットみたいな装置を付ければいいから、言葉の壁はない。

だけど僕たちは日本に残る事となった

あの日家族全員で見る花火は切なく儚い花火だった。

もっと一緒に居たかった、もっと楽しみたかった。しかしそれは叶わない願いだ。

それでも父さんが思い留まってくれる事を信じた。しかし現実になることはなかった。父さん達はそのままアメリカへ転勤した。花火のように儚く一縷の想いは届くことはなかった。僕はそうして想いと、決別して中学、高校に進学した。


僕の名前は大神一輝高校一年生で、青春真っ只中の16歳である。

両親は海外で働いていて、姉の志穂と刹那と妹の友奈との4人くらしで、志穂姐は二十四歳で夜中に帰ってくるからあまり接点はないので、よく知らない。

刹那姉は高校三年生で塾に通っている。

愛東看護学校に合格する事を目標にしている。

愛東学校で看護師の資格を取得するのが夢らしい。

刹那は人一倍正義感があり、曲がった事が嫌いだ。

妹の友奈は中学三年生で数学が苦手らしい。

友奈は友達の遥とちょくちょく遊んでいて、家に連れて来る位だった。

カレーが好きで三食カレーでも飽きないので、給食係の僕にカレーを毎日出せと言い出す始末だ。

ちなみに掃除係は友奈で会計係が刹那だ。買い出しは僕か刹那で行く。友奈に任せるとカレーばかり買いそうだからだ。

僕はアニメが好きで、小遣いでアニメグッズを買い集めるのが趣味だ。

ファンタスティックオンラインも好きで、LV22で装備もそこそこ強いやつで、魔法も結構習得している。

僕の夢は小説家になることだ。僕はヒーローになりたい訳でも、英雄になりたい訳でもないが。僕の物語であることは確かだ。

僕の物語は僕は主人公となる。しかし主人公でも僕は違うと思う。

僕は僕を信じる。

家族を信じる。

友達を信じる。

未来を信じる。

主人公なんてたいそれた人物ではない。

ヒーローではない

英雄ではない

そんな僕の物語



名古屋市西区の庄内通駅のすぐ近くに、僕は住んでいる。そして学校はさくら通り線の駅の近くだ。

よく晴れた月曜日で今はもう夏になる時期の7月で、暑くて蒸し蒸しするので少し億劫だ。

僕は夏生まれだが夏が嫌いだし、暑いのもきらいだ。

暑い日差しのなか、日を避けながら、学校まで行くのに苦労している。まだ7時だと言うのに暑くてたまらなかった。

朝から暑いとやる気を失うのだ。昨日は夜中の2時までファンタスティックオンラインをプレイしていた。なのに朝は必ず5時30に起きる

早起きは三文の徳というけど、夏は例外じゃないかなと僕は思う。

5時30分に僕は起きると朝ご飯の準備を始める。今日の朝ご飯は、白米、焼きシャケ、ほうれん草のお浸しと卵焼きだ。それを6時30分に作り終えると、7時まで待ち刹那と友奈を起こす。

「友奈起きろ朝だぞ」

友奈は起こすと、すぐに起きて寝ぼけているのか、また寝ようとした。

「友奈また寝るなよ、起きろ!!」

すると友奈は起きて

「おはようございます、お兄さま」

と挨拶をしてから、黙々と布団を片付けた。

「友奈朝ご飯は出来てるから早く食べろよ」

「わかりましたわ、お兄さま」

友奈はそのまま洗濯場に向かって行った。そこで友奈は顔を洗い、歯磨きをし始めた。まあ友奈は起こすのは楽でいいのだが、問題は刹那姉なのだ

「起きろよ、刹那姉」

「後もう少しだけ」

テンプレートみたいなセリフを言うとまた寝た。なんでこの人はこうなのかな?これでも姉か?

僕は何でかそう思ってしまう。歳上とは到底思えるはずもない。めんどくさいなあ

「起きろ、遅刻するぞ」

「えー、今日学校ないよ」

「いやあるだろ。嘘を吐くな早く起きろ」

といい布団を取り上げた。刹那姉はそれでも寝ようとする。だが嫌がる刹那姉を起こして、俺はリビングに向かう。

そして二人がご飯を食べ終えると、学校に向かった。

学校までの道のりを歩いていると、同じ様に歩いている幼馴染の紗月がいた。

紗月は見た目はクールそうだが、実際はとても甘えん坊な女の子だ。

いつもロングヘアでいい香りがするのだ。多分シャンプーの匂いか、洗剤の匂いだ。

「おい紗月、おはよう」

僕は気軽に声をかけた。紗月は振り向くと

「あっ、一輝君おはよう。今日も暑いね」

と紗月はそう口にした。そして俺の隣で歩き始めた。

「ああ、今日は一段と暑くなるってニュースで言ってたぞ」

今朝のニュースの話をすると紗月は

「へぇーそうなんだ、ワタシ今日テレビ見てないんだ」

「なんでだ?」

怪訝そうに俺が訊くと

「だって、今日漢字のテストでしょ、願掛けだよ」

「そう言えば来週から漢字のテストだって忘れてたよ」

「一輝君だめじゃん」

笑いながら紗月は言った。その笑い顔はとても可愛かった。

「おーす、おはよう。紗月に一輝」

後ろから声を掛けてきたのは、同じく幼馴染の佐藤隆史だった。

佐藤隆史俺の友達で、金髪でチャラい感じのいわゆるヤンキーみたいな風貌をしていて、でも性格は良い。

「さっきの話だけど、俺は勉強ちゃんとしてたよ、紗月と一輝はぶっちゃけどうなんだよ。自信あるのか?」

「僕は勉強したけど、自信ないよ」

「ワタシも」

そう俺たちが言うと

「そっか、まあ二人なら大丈夫じゃないの、っと。まあ呑気に勉強しているなら…まあいいか。」

と言い隆史は去った。

「何なんだろうなあいつ、やけに挑発的だな」

「さあ、そんな事より、早く学校に行こう」

「ちょっまっ」

先に走り去った紗月を見てるしかない、僕だった。

おいおいそんなのありかよ。僕は唖然としていた、そこからは、ゆっくりと歩き始めた。

とことこ学校に向かっていると、後ろの方から声が聞こえた

「大神先輩おはようございます」

一柳圭人がこちらに向かって来た。圭人はいつも僕と話をする。

「おはようさん」

「先輩は一人寂しく学校ですか、寂しいですね」

圭人は生意気な事を言ってきた。これがなければ良い奴何だけどな。

「ほっとけ」

俺は拒絶する様に言ってみた。しかし何事も無かったかの様に

「いやいや、尊敬しているんですよこれでも」

と本当かどうか解らない事を言ってきた。圭人はミステリアスな奴だ。秘密しかない。

「嘘つけ」

冗談混じりに言ってみると

「本当ですよ、そもそも先輩は自分に自信無さ過ぎですよ。そんなんだから、紗月先輩振り向かないんですよ」

と訳わからん事を言い始める始末だ。

ここで違うと訂正しないと、後々面倒な事になるから、はっきり言っておこう。

「言っておくが、僕は別に紗月の事を好きではない」

「そうですか、いやあ、ぼくの予想で言っただけですよ。先輩はもっと自分に自信持ってくださいよ、尊敬する先輩のそんな姿見たくないですし」

「お前が言うと、全部ふりに思うのはなんでだろうな」

「いやいや、ふりだなんて。」

圭人は白々しくそう言うと

「あっもう学校に着きましたよ。じゃあぼくはここで」

といい圭人は逃げていった。

僕は圭人と別れると教室に向かって歩き始める。朝とはいえ暑くなる季節で、少しうんざりした気分だった。

そもそも圭人と何故話すようになったか?それすら思い出せないままだ。

なんとなく不思議な気分になるのを自覚していた。

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