第27話

「ん……?」


ここは…‥


誰かの背に負われながら、河川敷を歩いていた。


「……ハルト?」


「お、姉ちゃん起きた?」


え、なに。どういう状況で私は弟におぶられて河川敷を歩いてるの。


確か、私はあいつに……


「ごめん姉ちゃん心配かけて。でも今日でチームを抜けてきたから」


「……あっ!」


そうだ。あいつになんか嗅がされて、それで意識が遠くなったんだった。


あいつ……許さん! 今度あったら一発ぶっとばしてやる。


「姉ちゃんがさ。色々考えてあいつと付き合ってのは知ってたんだ。小さい頃、体も弱くて迷惑かけちゃってたし。だから俺も中学生になって、少しでも負担を減らしたくって、だからチームに入ったんだ」


「ハルト……」


変なことを考えていたら、ハルトが語りだしてしまった。


河川敷。夕方。


赤い日差しが少し眩しい。そこを弟におぶられながら二人で話し合う。


「でも、結局迷惑かけちゃって。そもそもチームに入っても、俺自身が変わらなきゃいけなかったんだ。やっと気づけた」


たどたどしく喋る弟だったが、いつの間にか大きくなった背中。


照れくさそうにしながら、私を背負っても倒れないだけの体格。


声にも少し自信が溢れ、それに心も成長した弟。


 自分の知らないうちに、弟は成長していた。夕日も相まって少しだけウルっときちゃう。そんな泣きそうな自分を隠すために、私は会話を続ける。


「私こそ……色々暴走しちゃってごめん」


「ううん。いいんだ。だけどこれからはさ、しっかり話し合ってから決めようって」


 別に仲は悪くない。だけどそれぞれ成長していって、少し兄妹で仲がいいのが気恥ずかしくなって、あんまり家でも喋ってなかった。

 いつの間にか弟は私がいなくても一人で立って進んでいけるし。私もそろそろ過保護を卒業しないといけないんだな。


はぁ。と小さくため息。


 なんか最近、まわりでいろんなことが起きてたな。その影響もあって、自分も変わらなきゃ、変わらなきゃって。少し焦っていたのかもしれない。


 そう勝手に焦っていた。……いや、あいつ。タカシが最近、変なせいだ。あいつがなんか少し大人っぽくなって、料理もうまくって、少しいいかなって思ってて……でも不良で……


「あぁぁぁぁ」と唸りながら、もうわけわかんなくなって、元カレのところにいってしまった。


(うん。タカシが悪い)


私は悪くない。そう結論つけた。明日会ったら、一言文句いってやろう。


「ところで姉ちゃん」


「ん? どうしたの?」


「そろそろ背中から降りてくれない。俺もう動けなくって……」


ムッ。


 バンっと背中を叩く。「いてぇ!」という声が聞こえるが無視。全くいい感じに頼りがいあるなぁ、とか考えてたのに、やっぱりまだまだか弱い弟だった。

「私はそんなに重くない!」とごねりながら、弟のご希望に沿って背中から降りる。


弟の顔が見える。


「ぷっ! あっはっは。なにその顔! うける!」


 背中から降りて弟と顔を合わせる。顔はアチコチ腫れてボロボロ。鼻血を止めるためにティッシュも詰まったその顔は、今かっこいいことをいった弟とはかけ離れていた。


あっはっは。久々に心の底から笑えた気がした。

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