第20話
突然だがこの街の紹介をしよう。
まず私たちが住んでいる村は人口が数百規模の村で、村の子供も多くない。そのため小学校を卒業したら隣の市に移動する。
中学校ではそれなりに増え、といっても学年の人数は一クラス30人程度の学校だ。
中学校を卒業すると、いよいよ高校生。
市には二つの高校があり、いわゆる進学校と呼ばれる学校と専門校と呼ばれる学校になる。私はここの進学校と呼ばれる学校に通っているため、勿論だが勉強が難しい。
「こんなことを勉強して将来に役立つのか?」
「思春期の中学生みたいなこと言うなよ」
この世界に来て数日。既に少し諦めかけている。聞くところによると、この世界は学歴社会。将来に不安しかない。
「市民を守ったりするような、体を使った仕事はないのか」
「警察官も学力は必要だぞ」
せめて後数年、早く生まれ変わっていれば、まだ勉強についていけたのだろうか。もうこの歳になると、やっていることが高度すぎてついていける気がしない。
キーンコーンカーンコーン
ようやく学校終了のチャイムが鳴る。
「ふぅ……」
学校が終わり、一息をつく。
「バンブー! 今日はどこに寄っていくんだ!」
「急に元気だな」
「ああ、勉強は精神力が鍛えられるが、長時間するのは体に毒だからな」
精神力。根性。そういったものはあると思っていたが勘違いだったらしい。苦手なものをやっている時は、耐えがたい苦痛だ。
(そう考えると、私は新兵にかなり無理をさせていたのかもしれないな)
新兵を鍛えるのは毎年の恒例行事だ。きつい行軍や、先輩からの愛のムチ。そうして選び抜かれた者だけが兵士としてのキャリアを積んでいく。
しかし今思うと、無理をさせすぎていたのかもしれない。もしあの場所に戻ることがあるのならば、少しだけ新兵に優しくしてやろう。そう心に刻んだ。
靴を履き替え校門から出る。
さて今日は、どこに行こうか。そんな気持ちを抱えワクワクしながら帰路に付く。
「タカシさん!」
「ん?」
校門を出ると見慣れない学生が立っていた。身なりはうちの高校のものとも違う。誰だろうか。
「誰だ貴様は」
「お、おれ……あの河川敷にいた、学生です!」
「河川敷……ああ、あの時の」
川近くの場所で、襲ってきた若者をあしらった時にいた学生か。
「ほう、なるほど。お礼参りか」
「ち、違いますよ!」
「なんだ違うのか」
少年は少し言い淀んでから覚悟を決め、頭を下げる。
「俺をタカシさんの弟子にして下さい!」
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