第15話
本は、日差しを浴びると日焼けで色飛びをすることがある。
そのため、図書館内は本に日差しが直接当たらないよう設計されており、所々に光を呼び込むための工夫がされている。
窓際、館内が暗くならないよう設計されたその場所は、この昼の時間にはまるで、天から光が舞い降りるように設計された場所。
本を片手で持ち、足を組み、肘を付きながら本を読むその様子は、まるで絵画のような美しさがある。
その様子を眺める。
自然と、そちらをチラチラを見てしまう。
(あんな落ち着いた表情もするんだ……)
普段は見れないタカシの様子に、少しだけドキリとする。快活なイメージの強い彼は、クラスでも常に喋っている印象だ。残念ながら席が近くなったことはないので、普段の授業の様子は知らないが、きっと同じような感じなのだろう。と、想像する。
(……でもあれは、絵画っていうより)
彼の様子を改めて見ると、老人が縁側でくつろいでいるようにも見えた。
◆◆
一通り歴史書を読み漁った私たちは、談話スペースへと移動した。
「世の中には、魔法を使う人物が多いんだな」
風を操る戦略家がいたり、何もないところから金を生み出す錬金術師がいたり、時には天候を操る者もいる。歴史を辿ると、様々な魔法使いの名前が記されていた。
残念なことに現代では、魔法使いがいる。という話は聞かなくなったそうだが、歴史を調べれば多く存在していたことが分かっただけでも収穫があった。
「どうすれば私も、魔法を発動できるのだろうな」
「そういう話は妄想の中だけにしておけ」
バンブーから素っ気ない一言が返ってくる。
さっきからバンブーがずっとコレだ。反応が素っ気ないバンブーに疑いの目を持つ。魔法を使えるようになるのは、大体の武人が憧れる。戦場でも魔法があれば、より楽だった場面もいくつもあった。残念なことに魔法使いは貴重な戦力なので、私のいた最前線には存在していなかったが。
それなのにバンブーのこの態度は、武人……いや、男としておかしいと直感が告げている。
どうも何かを隠しているような気がしてならない。もしかしてこいつ、実は魔法が使えたりするのか?
私の勘がそう告げている。
「なんだバンブー。君は魔法を使いたい。そう思ったことはないのか」
「そりゃあ……なくはないけど。ただそういうのは中学くらいで卒業するもんだろ」
「ほう。ちなみにバンブーはどんな魔法を使おうと思ったのだ」
「そりゃあ、炎とか雷とか」
来た――!
「なら今ここで、『ファイアボール』そう唱えて貰ってもいいか?」
「いやだよ!」
やはりな。
こいつ、実は魔法を使えることを隠しているな!
「何故だ? 別に発動しないなら問題ないだろう」
「発動するしないの問題じゃなくて、恥ずかしいって話だよ!」
頑なに拒むバンブーが、ますます怪しく見えてくる。
かつて私の国にも、こうして自分の力を隠している人間がいた。厄介毎に巻き込まれたくない。自由に生きたいなどと謡いながら、自分から厄介毎に首を突っ込み「やれやれ、目立ちたくないんだけどな」なんて言いながら、隠していた力を開放する。そいつらと同じ匂いがする。
こういったやつは女性の前ではいい恰好つけるのだが、私のようなおっさんの前では動かない。そう相場が決まっていた。
「やれやれ。全く強情なやつだな君は」
「うぜー」
私は首を左右に振りながら、彼の頑なさにあきれるのだった。
いつかその化けの皮を剥いでやると心に誓った。
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