第13話

俺には保育園から、ずっと一緒の腐れ縁の友人がいる。


親友というと少し恥ずかしいので腐れ縁と呼んでいるが……まあ親友だ。


 10年以上も一緒に過ごしていると、幼い時のやらかしや、それこそ初恋の相手だって知っている。


「ねぇ。やっぱりタカシ、少し変じゃない?」


「……そうか?」


 目の前に座っているのは山田さくら。さくらとは中学からの付き合いなのでかれこれ4年程度、一緒につるんでいる。


「だってそうよ。あんな……イタイ? こと言わなかったじゃない」


うーん。そうかぁ?


俺の知っているタカシは、中学時代は重度の厨二病を患っていた。


傷を負っていないのに絆創膏を貼っていたり……


ものもらいと言って眼帯を付けたり……


やけに難しい、薔薇とか、慟哭とか。難しい漢字の練習をしていたり……


 特にアニメにハマっている時はわかりやすい。アニメに出てくるカッコイイキャラの真似を良くしていた。

 最近は少しナリをひそめていたが、それがぶり返しているだけにも見える。


 最近のタカシのことを思い出しながら、こんなに痛かったか? いや、こんなもんか。と納得する。


「まぁ。今って、転生モノのアニメ流行ってるし、その影響じゃないか」


「うーん。そうなのかなぁ」


 今もタカシに目を向けると、『なんだ、このシュワシュワする飲み物は!?』と叫んでいる。

 転生モノの定番ネタかと、ツッコミを入れたくなる。


「そんなに気になるなら、次の休みに誘って話してみればいいじゃん」


「えっ!」


うーん……と、顎に手を当てながらさくらは考える。俺はその様子を見ながら、「はぁ」とため息をつく。


(いい加減、どっちかが告ればいいのに)


お互い……お互い? 意識しあっているのは前々から知っている。いや、最近のタカシは分からんな。

 田舎は狭い世界のため、結構身近なあいつとあいつがくっついた。みたいな話をよく聞く。高校に入り、こうしてクラスメイトが増えたが、中学までは一クラス20人もいかないような学校だった。


「タケシィ……あんたもついてきてよ」


かくいう俺も、一時期さくらのことを気になっている時期があった。


惚れていた弱みか、こうして頼られると、どうしても断りづらい。


「……仕方ねぇな」


俺は重い腰を上げた。

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