第12話

「……っ」


「おい、泣いてるのか?」


なに? そうか、俺は泣いていたのか……


腕の裾で目元を拭う。ああ、いい話だ転ミノ。こいつが紹介してくるのも分かる。


「一話で泣ける部分あったかな……ああ。仲間のクロツヤミノガが、鷲に食われるシーンか」


「いや、主人公が何かに轢かれ家族を思うシーンだ」


「冒頭かよ!」


 歳を取ると家族モノに涙もろくなる。『お父さん、お母さん。親不孝な俺でゴメン……』なんてシーンは涙が止まらなくなってしまう。


「しかし主人公は何に轢かれたんだ」


「今回は普通車だったな。だいたいトラックにひかれることが多いけど、最近別のモノも増えたよな」


「毎回違うのか?」


「ああ。トラック、車は王道だな。珍しいやつだと電車とかバイクとか。最近だと、あえて轢かれてない。みたいなのも多いな」


「なに……? つまりなにかに轢かれることが転生の鍵ということなのか!」


「そうだな」


 転生前のことを思い出す。蘇るのは騎馬の突進。俺は大量の騎馬に轢かれ転生したのだ。その事実に気付く。


「まさか。そうだったのか」


 なんの因果で、轢かれることと転生することが結びついているのか分からないが、恐らくそこを深堀していけば、俺が転生してしまった理由に辿り着けるかもしれない。


一縷の希望が差す。


「なあ、バンブー」


「なんだ」


「馬に轢かれる場所って、あるか?」


「あるわけないだろ!」

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