閑話

ウィーン、ピッ、ガシャ、ウィーン。


「……ふむ。この1000と書かれた紙は使えるのか」


「だからそう言ってるだろ」


 通貨を使いたいとバンブーに相談してみたところ、じゃあ自販機でジュースでも買えばとのことなので、その案を採用した。


「実際に使ってみないと、本当に使えるかどうか分からないだろ。……おっと、この10000というのは使えないのか、ただの紙切れか?」


「この国で一番高い紙切れだよ」


 これもこの国の通貨なのか。そうすると私の所持金が14000程度か。少ないな。聞けば一食安く済ませれば500円程度で済むらしいが、この程度の金銭では持って数日、安くすませて数週間といったところだろう。


「働かないといかんな」


 我が国では子供であろうと、働かざる者食うべからずだった。裕福な家庭ではない者は10歳程度の年齢でも働きに出ているほどだ。


「バンブー。仕事を探すならどこで探せばいいんだ」


「仕事……? 仕事っていえば、ハローワークとかか?」


なるほど、ハローワーク。一度行ってみる必要があるな。


……


「ここで仕事を紹介して貰えると聞いて、訪ねてみた」


「……はぁ」


 後日、ハローワークという建物に入ってみた。中には何人かの職員と、職を求めている大人が何人かいた。職を求めている人間は一応に下を向いている。


「どういったお仕事をお探しで?」


愛想の悪い職員が、怪訝な顔でこちらに質問をしてくる。


「そうだな……できれば討伐系の仕事がいい。あるか?」


「……ありません」


「なに……? では傭兵などはどうだ。どこかで戦争は起きてないか?」


「……ありません」


「なんだと!」


 困ったな。私の腕を活かすなら討伐か傭兵がベストなんだが。頭を使う系の仕事は、残念なことにまだ自信がない。


「あの。冷やかしなら帰ってください」


「冷やかしではない。私は真面目に仕事を探して――」


「はい、すいません! すぐに連れて帰ります」


「バンブー! 辞めろ、引っ張るな」


「いいから! ほら、出るぞ!」


そのまま首根っこを掴まれ建物の外に連れていかれる。


 なぜ邪魔をする! 私は真剣に職を探していたのに。この腕っぷしを発揮できる仕事はないのか。


「そんな仕事あるわけないだろ」


「なんて生きづらい国なんだ」


「逆に、そんな物騒な国のほうが生きにくそうだけどな」


 しかし困ったな。そうすると、私の金銭が心もとない。このまま過ごしていれば時期に金銭が底をつくだろう。


「どうすればいい」


「お前10000円以上持ってるだろ。普通の学生なら10000円あれば2か月は持つから」


「なに、そうなのか?」


この国の学生は、どうやら慎ましい生活を送っているらしい。

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