第6話
「ねぇタケシ。なんかタカシ雰囲気変わった?」
「そうか? いつもこんなもんだろ」
追求が終わりようやく席に座ることができた。一緒についてきた少女も交えて三人で会話をする。
「なんていうかこう……おっさん臭くなったような」
ぐはっ!
20代のころは分からなかった、30代になって初めて知ることになる、突き刺さるワード。「臭い」「キモイ」という言葉は、中身がおっさんである私の心に突き刺さる。
「そうだな……なあ、タカシ。あっちみてくれ」
そう言われて指さされたほうを見ると、室内の前の方で友達と喋っている少女2名がいる。
「右側の女の子、香澄だ」
カスミ。この身近にいる少女より先に別の女の子の名前を知ってしまった。
「あの子がどうした」
「お前、あの子のこと好きだっただろ」
なに――?
ふむ。これは思春期特有の「お前あいつのこと好きだろー」みたいな会話か。折角なので少し若い気分を取り戻して会話に乗ることにしよう。
カスミ、と呼ばれた少女は黒髪のロング。よく手入れされた髪はストレートで似合っている。可愛いというより綺麗が似合いそうな女性だ。なるほど、モテそうな気配はある。
だが、しかし――
「はは、何言ってるんだ。私はもう30代だぞ」
「いや同い年だろ」
流石に年齢が倍も違うと価値観も合わず難しいだろう。我が国でも15歳から成人とされて結婚が出来るが、これだけ歳の差が離れている結婚は政略結婚や金目当ての結婚でしか、ほとんど見たことがない。
冷静に状況を分析した。
「ほら、やっぱり変じゃない?」
――しまった!
若い話に乗ろうとしたのに、つい素で答えてしまった!
「そ、そんなことより次は体育だろう! ほら、はやく支度をしようではないか!」
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