第10話 公衆浴場にて

 クリスとヒエイは薬草採集のクエスト達成報告をして冒険者ギルドから出ると、すでに日が沈んでいた。

「このあと、お風呂行かない?」「戦いの返り血で少し汚れたからお風呂行きたい」

『俺も行きたい』


 クリスとヒエイはそう言うと、ユキに教えてもらった公衆浴場へと、向かった。


「なんか日本の銭湯を思い出す」

『カク商会といい、なんか所々で和風要素あるよな』

 クリスとヒエイがそう言い見た物とは、瓦屋根の和風の建物で、奥には煙突が見え、入口にのれんが掛けられていて公衆浴場の文字が書いてある建物だった。

 2人がのれんをくぐると、木の香りがした。中には木でできた鍵付きの下駄箱がありクリスとヒエイは靴を下駄箱に入れて引き戸を開けると中央に番台があり左右で男に女で分かれていて隣には休憩スペースがあった。番台の上のおばあさんはこちらを見ると、お風呂に入る時のマナーと料金を丁寧に説明してくれた。そしてクリスとヒエイは料金を払うと男女でそれぞれ分かれて入った。

 ヒエイは女湯に躊躇なく入るクリスを見て少し驚きつつも男湯に入っていった。一方でクリスは自身の精神が女に変化していることに気づいてなかった。

 クリスが脱衣所に入ると他の女性客がいて、ロッカーが並んでいた。クリスが空いているロッカーを探していると、そこには服を脱いで裸になっているユキがいた。クリスは訪ねた。

「ユキさん来ていたんですね」

 ユキがこちらに気付いた。

「そう、これから入るところ」「良かったら一緒に入ろ」


「は、はい」

 ユキの反応にクリスは少し驚きつつも、そう答えた。それもそのはず自身が前は男だったことをユキの一言で急に思い出したのだから、クリスはそんな反応をするも、すぐにユキの隣で恥ずかしそうにしながら服を脱いで、服をロッカーに入れ始めた。クリスが服を脱ぎ終わると、ユキがこちらを見て言った。

「クリスは結構スタイルいいんだね」


「あ、ありがとう」

 クリスが恥ずかしそうに言う、しかしクリスがをユキをよく見ると、白い肌にピクりと動く狐の耳、そしてフリフリと動く白いフサフサのシッポに目をやるとクリスは言った。

「シッポ可愛い触らせて」

 クリスが目を輝かせて言うとユキはビクリと反応した。

「シッポは敏感なところだからだめ」

 ユキが恥ずかしそうに答えた。

 そんな会話をすると、ユキと一緒に浴場へと向かった。扉を開けて中に入ると木で出来た壁に石畳出てきた床と浴槽があった。クリスとユキが中に入ると、ユキは一直線にシャワースペースへ行き、クリスはその後に付いて行った。そしてユキはシャワースペースの使いかたをクリスに教えた。

「ここの丸いところをひねるとお湯が出てくるから」

 ユキがそう言って蛇口をひねると頭より少し上の方にある竹で出来た口のところからお湯が出てきた。それを見てクリスも蛇口をひねり髪の毛を洗い始めた。クリスの髪の毛の洗い方を隣で見ていたユキは洗っている手を止めクリスに近づいてきた。

「その洗い方だと髪の毛を傷めるよ」

 ユキはそう言ってクリスの髪の毛を洗い始め、ユキは髪の毛の洗い方をクリスに教えた。そして一通り洗い終えると、ユキとクリスは浴槽に浸かった。

「あ~〜」「染み渡る〜〜」

 クリスは湯の気持ちよさに声が漏れた。それを見てユキがクスッと笑った。しばらく沈黙が続くと、ユキが突然クリスにヒエイとの関係について聞いてきた。

「クリスはヒエイとどんな関係なの?」「やっぱり彼氏?」

 突然の内容にクリスは吹き出してしまい慌てて訂正した。

「いや、いや、全然違うただの親友だから!!」「独りぼっちの私に話しかけてくれた大切な親友なの」


「本当かな~〜」「でも一緒に居ればそう言う感情も湧くんじゃないの」

 ユキが疑いの目でからかうと、クリスはすぐに反応した。

「絶対にない!!」

 クリスがはっきりとそう言った。それもそのはず高校時代の親友で元は男だったのだから。


「でもいつかそう言う感情が湧くかもよ、クリスがそんな感情が湧かなくてもヒエイの方が」「クリスは鈍感だから分からないかもしれないけど、ヒエイは割とクリスの事も意識してるよ」

 クリスはその言葉に顔が赤くなり意識が朦朧としてきた。

「そ、そ、そんなこと…………」

 次の瞬間クリスは隣にいたユキに倒れこみ意識を失った。



「ユキ……」

 クリスがゆっくりと目を開けるとユキの顔がみえた。クリスは休憩スペースのベンチに寝ていて、ユキにひざ枕されていた。

「目が覚めたんだ」「のぼせて倒れたんだよ」

 ユキがそう言うと、クリスは身体を起こした。すると丁度ヒエイが男湯から出てくると、休憩スペースにいたユキとクリスの方に歩いて近づいて来ると、クリスの顔色が悪いのに気づいたのか心配そうにクリスを見て言った。

『顔色悪いけど大丈夫か?』


「少しのぼせて……」

 クリスがそう答えた。

『大丈夫か?』『少し休んでから帰る?』

「そうする」

 クリスがそう言うと、3人は会話しながら少し休んでから、宿屋に戻った。


 クリスとヒエイは宿屋に着くなり夜ご飯を食べた、食べ終わり部屋に戻るとクリスは歯を磨き終わるとすぐに寝てしまった。

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