第4話 子狐亭の中にて

「う~~ん」

クリスは宿屋のベッドの上で光魔法書下級を見ながら唸っていた。


『どうしたんだ?』

ヒエイは唸っているクリスにそう尋ねると。


「なるほどね、この世界の魔法はプログラムと同じなんだ」

『へー』

「この世界のスキルは魔法を簡単にする物みたい」「要するに、スキル無くても頑張れば、魔法が使えると、そう言うことみたい」


『マジ、俺も魔法使えるの?』

ヒエイは驚いた声でクリスに聞いた。


「だけど相当難しいよ」「スキルは魔法の詠唱をすると自動で魔法を発動させる物なんだけど」「スキル無しで魔法を使うには、魔法を発動させるためたに必要な魔力コントロールと術式の理解が必要なんだけど、……」

「まあ、あとは術式を頭に思い浮かべると魔法が使える」「あとはプログラムと同じ要領で、オリジナル魔法と魔法名だけで、魔法発動ができる」「魔法が作れるよ」


『うん、わからん』

ヒエイは思考を放棄した。

 そうクリスは日本にいた頃プログラマーを育成する専門学校に通っていたのだ。プログラムが分からないヒエイには、クリスがぶつぶつ言っていることを理解出来なかった。そうこうしているとヒエイのお腹が鳴った。


『そろそろご飯食べいこ』

ヒエイがそう言うと。

「行く、行く」

クリスはベッドから飛び起きて声を弾ませながら言った。そうすると2人は、部屋を出て階段を降りて一階へ向かった。

 

 下に降りると、食事スペースに、席いっぱいに人がいた。2人はキョロキョロして席を探すと、隅の方に席があった。2人が座ると机にはメニューがあった。メニューに目を通した後、食器を忙しそうに片付けているユキに声をかけた。2人が注文したのは、ボアの定食、しばらく待っているとユキが忙しそうに2人分の定食をもって来た。2人は目を輝かせた。


「美味しそうだね」

『うまそうだな』

 2人はそう言うと、揃って言った。


『「いただきます」』


初めにクリスが手を付けたのはボアの肉、一口サイズに切ってあり、肉は少し癖のある肉だが中は柔らかく美味しくて、パンは丸く少し硬いが野菜スープに付けて食べるとスープのダシと塩気の味が加わって美味しい。野菜スープには芋とキャベツぽい葉っぱと、人参のようなカブのような味がする丸くて黄色の一口サイズの野菜が入っていた。

 言わずもがな、この後定食のおかわりを2回もした。

食べ終わるとヒエイは口を開き、クリスと話し始めた。


『結局、2回もおかわりしているし』

「いや~~」「食べた、食べた」

 クリスは満足そうに言うと、ヒエイと話し始めた、そう明日の予定についてだ。

『明日はどうする?』

「昼ごろまで光魔法の勉強とオリジナル魔法の開発する予定」「12時に教会に行ってクラスに就いて、その後ギルドかな〜〜」

『12時と言っても時間なんて、分からないぞ?』『時計無いし』

「あるよステータスの左上の方に小さく時計のマークが、それを押すと時間がでるよ」

クリスの言った通りだった。ヒエイとのそんな会話が終わると、2人はユキにお金を払って『「ごちそうさまです」』と、言って階段を上がり部屋に帰った。ユキは不思議そうな顔をしていた。


 クリスは部屋に入るなりベッドにダイブした。ヒエイはゆっくりと腰を下ろすと、クリスは疲れたようでヒエイに「そろそろ寝よう、ランプ消すよ」と言うと、ヒエイは突然、思い出したように言った。

『歯磨きとお風呂入って無い』

「そんなの無いでしょ、異世界に……」「まあ、お風呂は公衆浴場とかありそうだけど」「どの道今日は無理だから」「午前中に魔法の開発と、ヒエイのスキルの実験をしたら探しに行こう」

『そうだな……』

 ヒエイは諦めてそう言うと、クリスは部屋全体を明るくするほどの魔法のランプを消して、2人はベッドに入った。クリスは高校の修学旅行の時のことを思い出したようで、ヒエイと会話をし始めた。


「覚えてる?」「修学旅行の時のこと」

『覚えてる』『確か寝る前に将棋やっていて、その時はなかなか決着がつかなくて夜遅くまでやってたら先生に怒られたよな』

「うん、うん、懐かしいよね」「確か航一、あいつは先に寝たんだよね」

『航一、元気にしているかな…………』

そんな会話をしていと、隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきた。2人共お互いの顔は見えないが、顔を真っ赤にしていた。しばらくの間、沈黙が続くと、2人はゆっくり眠りに着いた。


 

 

 

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