第13話美少女裁判官は悪魔です

「えーっと、梓さん?」

「……」


 俺は今、梓さんにくっつかれながら廊下を歩いている。


 彼女は何も返事を返さず、ただぎゅっと俺から離れないぞと言わんばかりに力を込めて離れない。


 正直梓さんはセラねぇにも負けずとも劣らない絶世の美少女な訳で、そんな彼女と保健室登校の得体の知れない男がくっついて歩いてたらねぇ。


 周りにいる男達からは殺意のこもった眼差しが、女子達からはキャーキャーと黄色い声援を浴びる。


 それに加えて彼女はセラねぇよりも恐らくは少し大きいタワワの持ち主なわけで、くっつかれながら歩くと揺れたタワワが何度も俺の腕に当たってその度に俺の理性は弾け飛びそうになる。


(大丈夫だ、俺にはセラねぇがいる。 セラねぇ意外にうつつを抜かすなどあるわけが……)


 彼は必死に男の本能と戦いながら食堂へと向かった。


「……あのさ、飯どれにするか決めてる?」

「逆に賢也君はなんにするんですか?」


(あれ? 賢也君??)


「……俺はやっぱりカレーかなぁ。 あれは結構割安だし、うまいしで最高だからなぁ」

「じゃあわたしもそれにします!」


 注文を済ませると先に俺のが届いたので窓際の中庭がよく見える場所に座ると、さも当然のように横に梓さんも座ってきた。


「……これは美味しいですね」

「だろ? 食堂のメニューの中でもこれだけはお店で出されてもおかしくないくらいに美味しいからなぁ。 特にこの辛さと具の多さがいいんだよなぁ」

「……なるほど。 賢也君はこういった味が好きなんですね?」

「そうだなぁ……ところでなんでお前はメモとってんだ?」

「……淑女の秘密ですよ」


 そういったこともあるのかな? っと賢也は無理矢理納得した後に話の本題を話始める。


「……で、さっきのはなんだったんだ?」

「さっきのとは?」

「いや! さっき抱きついてきた話だよ!」

「ああ、あれですか」

「あれですか、じゃねぇよ! なんで居ないんですか! って俺たち会う約束とかしてないだろ」

「何を言ってるんですか! 賢也君が駅に来なかったじゃないですか!」

「……えーっとまぁ今日は車だったし、電車使ってないけど」

「なんでですか! 私を一人にするつもりですか! 賢也君のせいで遅刻しちゃったじゃないですか!」

「いやいやなんでだよ! 一人で行きゃあいいじゃないか!」

「ダメです! 私は賢也君と一緒じゃないと登校しません!」

「なんでだよ!」

「私はもう賢也君と一緒じゃないと電車に乗らないからです!」

「意気揚々と言ってんじゃねぇよ! いくらなんでも無理あるだろ!」

「ひどいです、賢也君。 痴漢に遭って一人で電車に乗らなくなったいたいけな美少女を見捨てるなんて……チラッチラチラ」

「いや、今日電車乗ってきてんじゃん」

「……なんでひどい! 賢也君は私を見捨てると言うのですか」

「いや、誤魔化されないから!」


 俺は彼女に惑わされないよう必死に抵抗していたが、そこで周りから多くの視線が注がれていることに気がついた。


 男達はまるで俺が悪いと言わんばかりに俺を睨みつけていて、女子達もクスクスと俺たちを笑いものにしているのが目に入った。


「ああもう! 分かったよ。 明日からはいつも通り、電車通学だから」

「! 本当ですか! 言質取りましたからね! 撤回は無しですよ!」


 周りからの視線にうんざりしている俺を横目に梓さんは嬉しそうにブツブツと何かを呟いていた。


「これで一歩前進。 次は……」


 彼女は何かをメモ帳に記した後、こっちに振り向く。


「賢也君! あ、あなたには今日私に一人で登校させました!」

「は、はぁ。 まぁそうだな」

「ということで賢也君には罰として今日は私と一緒に帰ってもらいます!」

「は、はい!? なんだよその罰は」

「これはもう決定事項です。 被告人の意義は認められません」

「被告人の人権は無しか?」

「無しです!」

「ひでぇな。 弁護人は?」

「居ません! 私が裁判長ですから私に絶対服従です!」

「悪徳裁判官甚だしいな」


 ということで俺は不当裁判の末、梓さんと一緒に帰ることとなった。



「ただいま〜あら? どうしたのけんちゃん? そんなにげっそりしちゃって」

「……いや、ただ裁判の公平性の大切さを学んで感服しただけだよ」

「あらまぁ、ほんとに具合悪そうにしちゃって。 私が癒してあげようか?」

「ぜひお願いします。 と言いたいところだけど、そういうのは元気な時にお願いしようかな」

「ふふふ、冗談言っちゃって。 こんなおばさんよりも若いJK達にしておきなさい」


(冗談じゃないし、おばさんじゃないんだけどなぁ)


 セラねぇは今年で二十五歳だし、外見だけで言うなら二十歳と言われてもおかしくないくらい美人だ。


 当然学校の男達から昨日のクソ教師のような男にまでおモテになられる。


「そういえば今日は帰りに岩瀬薬局の方に寄ってくからちょっと帰り遅くなるわよ」

「ごめん、今日は電車で帰るわ」

「あら? 珍しいわね? 何か用事でもあるの?」


(梓さんのことは……言わなくてもいいか。 誤解されても困るしな)


「いや今日はちょっと一人で街をブラブラ見て周りたい気分だっただけだよ」

「そうなの。 わかったわ。 なら今日は早めに仕事切り上げるかなぁ」


 セラねぇは眠たそうに欠伸を手で隠した後残った仕事を片付け始めた。


___________________ 受験勉強辛い。

投稿全然できない。


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