第10話友情と恋の眼差し
時は少し遡って…
賢也が走っていった後、セラ先生は内心不安だらけだった。
(さっきのって絶対虐めようとしてたよね。折角けんちゃんが立ち直ったのにまた引きこもったら…)
彼女は居ても立っても居られず後を追おうとしたが
「セラ先生!お電話が入っておりますわよ」
彼女の先輩の先生に呼ばれて電話の対応に追われることとなった。
「まったく、なんてタイミングの悪い」
それから彼女が仕事を片付けると時間は30分ほど経っていた。
彼女が急いで彼のことを見に行くと彼は地面に座り込んで上を見上げていた。
(何やってんの! けんちゃんならもっとやれるでしょ!)
彼女は手を抜いてやる気を見せない彼に内心怒っていた。
(あいつらもなんなのよ!けんちゃんを怒鳴りつけて‼︎)
彼女の怒りはピークに達していた。
彼女は彼がこっちを見たことに気がつくと怒りを全身で表現する。
(もうけんちゃん!やっておしまい!)
彼はそれを見るとにこやかな笑みを返してきた。
ドクンッ(な、何今の!心臓が飛び跳ねたみたいに…)
彼女は何故か恥ずかしくなり窓の下に隠れて座り込んだ。
そうして彼女は彼の活躍をこっそり眺めていた。
そして終了のチャイムがなった時、
「起立、礼」
とあるクラスでは授業を終えた者達が移動教室への準備を進めていた。
「ねぇねぇ雫ちゃん!外でサッカーやってるらしいけど今すっごいことなってるよ」
「どうしたのよ?桜、そんなすっごいことなんてないでしょ。どうせサッカー部員の人達が無双してるだけでしょ」
「いいからいいからとりあえず見に行こうよ」
桜に誘われていってみると、ちょうど今朝会った賢也が一人かわしてシュートしているところが見えた。
「…確かにすごかったわね」
「でしょでしょ。彼さ、サッカー部員でもないのにあんなゴール入れてるのよ! それにさっきかわした神木君はサッカー部のエースなのよ!」
「そ、そうなんだ」
「神木君をあんなに簡単に抜けるなんて絶対サッカー部に入るべきだよ! 私さっそく今日の放課後に勧誘してくるね」
彼女は桜の話は話半分に聞いて意識は完全に彼に注がれていた。
(かっこいい)
みんなから遅れて教室から移動していると不意に彼女はお気に入りの本を階段の下に落としてしまった。
彼女が急いで本を取りに行くと外からガンッ!と音が聞こえてきた。
見てみると賢也がボールに向かって走り込んでいた。
そして彼はそのまま可憐にボールを蹴ってシュートを決めた。
(賢也君 えへへ、かっこいいなぁ。昨日もかっこよく守ってくれたし…)
彼女は昨日ことを思い出して頬を緩ませながら移動していった。
またある教室では…
「起立、礼」
終わりの合図を言い終わった彼女に彼女の友達が近づいていた。
「“委員長”! ちょっとさっきの授業でわからないところがありまして…」
「いいわよ、見せて」
彼女は快く承諾すると友達に先程の授業の解説を教えていた。
すると他の生徒達が次々とグラウンドを眺めているのが目に入った。
「何をしているのですか?」
「委員長、実は外でサッカーをしているそうなんですが。これがなかなかに白熱しているようで…」
「なるほど、どれどれ」
彼女も外を眺めてみるとちょうど賢也がゴールを決めるところが見えた。
「すごいですねぇ」
「……」
「委員長?」
「え、ああ、そうですね」
彼女は返事こそ返したものの以前視線は一人の男に釘付けになっていた。
(賢也君♡)
ゴールが決まるとチームメンバーは走って彼に近づいてゆく。
「ナイスゴール!賢也」
「ナイスでしたよ賢也君」
「お前すげぇな!」
「今のゴールは凄過ぎでしょ!」
「いやぁ、それほどでも…」
彼は褒め慣れておらず、恥ずかしがりながらどうしたものかと困り果ててしまった。
「ほんとすげぇよ!」
「ですです。さっきのゴールはどんな回転をかけたのですか?」
「え、えーっと…」
「おいお前たち!さっさと片付けに取り掛かれ。 じゃないと次の授業に間に合わないぞ」
その言葉を聞いて興奮は収まり、皆それぞれに片付けを始める。
(結局逆転は出来なかったけど、三点取ったしセラねぇもこれで満足してくれるだろう)
彼が保健室を見てみると何故か頬を赤らめたセラねぇがこっちに気づくとグッドサインを返してきた。
彼はそれに笑顔で答えるとそそくさと片付けを手伝いに行った。
ちなみにそれを見た彼女がまた頬を赤らめて窓の下に隠れていたことに彼は気づいていなかった。
彼がボールを片付けに行くとそこにはサッカー部の陽キャが彼を待っていた。
彼が少し身構えていると
「さっきのすごかったよ」
何故か彼は称賛の言葉を送ってきた。
「ありがとう、ございます」
「なんで敬語なんだよw それよりさぁお前なんでサッカー部入んないんだよ。 さっきのが出来るならうちのレギュラーなんざ余裕でなれるだろうし、そもそもお前なんでいっつも休んでんだ?」
「えーっと、俺実は保健室登校なんだよね。 その関係で部活にも入んないってだけだよ」
「…ふーん、まぁ何が原因かは聞かないが勿体無いしサッカー部に入れよ」
「ま、まぁ機会があればで」
「歯切れが悪いなぁ、まぁいいや。俺は神木 悟 サッカー部に入った時はよろしくな」
「まだ入るかわかりませんよぉ〜」
彼はその言葉を聞きながら立ち去っていった。
彼が片付け終わるとチームメンバーだった奴らが近寄ってきて彼に話しかけながらクラスに戻ることとなった。
その後ろ姿を眺めて
「ちっ」
面白くなさそうに舌打ちする陽キャがいた。
____________________
ここからどんどん彼の交友関係を広げてどんどん彼とヒロイン達の関わりを広げていくぞ!
そしてその裏で嫉妬する本命ヒロイン
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