第7話誰もいなかった
帰り道、その日はクラスの者達の思いはバラバラだった。
(おい、あれ大丈夫なのかよ。 まっ俺はなんもしてないし、どうでもいっか)
気にしない者。
(あれ大丈夫かなぁ。 俺なんもしてないけど問題になったりしないよねぇ?)
我が身を案ずる者。
(賢也やべーな。あいつに喧嘩売るとか、殺されるぞ)
友を案ずる者などなどさまざまだった。
そんな中。彼はというと…。
(イッテテェー、賢也の奴ふざけんじゃねぇぞ。 ぜってい許させねぇ)
「なぁお前ら…」
「「どうした?」」
「あいつつぶさねぇか?」
「…いいなぁ!」
「生意気にも俺らに反抗してきたことだし、いっちょやっちまうか!」
「だけどよぉ、あいつは結構力強いししめるのは無理じゃねぇか?」
「…いいかお前ら、俺にとっておきのアイディアがある」
そうして彼らが悪巧みをしている中。
彼女は友人と別れたあと爪を噛みながら帰っていた。
(あぁ!イラつく! なんで賢也はあんな女を庇うのよ! あんななんの取り柄もない愚図な女なんか助けて。 …なんであんな女の味方してんのよ!)
彼女は賢也に対して淡い恋心を抱いていた。
だから彼女は彼が傷つくのを恐れて、不自然にも仲間だった彼を止めて賢也を助けていた。
だが彼女の中の彼に対する愛は今変わろうとしていた。
(あんな女の味方をするなんて、ふざけんじゃないわよ。 私の方が何もかも完璧なのに、なんで…なんで、なんで、なんで!なんで!“なんで!”)
ときに愛は憎しみにも変わる。
そしてそれは愛憎とも言われ憎しみよりもずっと恐ろしい。
次の日、彼が教室に着くと教室は不自然なまでに静まり返っており、不思議に思いつつも席に向かうとそこには沢山の画鋲が山盛りになって置かれていた。
「なんでこんな……誰がおいた?」
誰もが彼から目を逸らし、口を閉ざしている。
「まさか昨日の…」
「ああ!すまねぇ!それなぁ、先生にお知らせの紙を貼っといてくれって言われてな。 置きっぱにしてたの忘れてたわ」
「あ、ああ……」
意外にも名乗りを上げたのは昨日の陽キャで彼は昨日の腹いせかと思っていたが一番の容疑者候補が真っ先に名乗りを上げたことで困惑しながらも納得するしかなかった。
彼自身誰かにこのことを相談してしたかったが友人達からは必要に避けられてしまい、 委員長は昨日の怪我のせいか休んでいたため頼れる者がおらず違和感は拭えなかった。
それからも彼は足を引っ掛けられたり、物がなくなったり、大小さまざまなことはありはしたが目立ったこと何も起こらなかったため、彼自身も杞憂だったかと思い、気にしないことにしていた。
だがそれだけで終わるはずもなく、ある日の朝方…。
彼のクラスではある噂が広がっていた。
それは賢也が女子更衣室に侵入して着替えを盗んだ というものだった。
「どういうことだよ…」
またもみんなは目を背けるばかりで関わろうとしてこない。
「おいおい、賢也ぁ。 お前いくらなんでもそれはさいっていじゃねぇかよ」
そこで我先にとあいつが声をかけてくる。
そこで彼はようやく自分がいじめの標的になっていることに気がついた。
「お前か、お前が噂を流したのかよ!」
「おいおい、言いがかりはよしてくれよ。 俺がそんなことするわけないだろ。 それにほら」
彼が指を刺した方を見ると女子たちが集まってこちらを睨みつけているのが見えた。
そしてその集団から一人の女子が近づいてくる。
彼女は俯きながら彼の机を指差した。
そこには見知らぬ女性者の下着が挟まっていた。
「これ、私の下着、賢也君の入ってるんだけど。 私が昨日、水泳の授業で無くしたの。なんで賢也君が持ってるの」
彼女はまるで俺が犯人であるかのように見つめてくる。
「いやいや、そんなはずないって。なぁみんな、俺が盗むわけないだろ…」
「……」
みんなは無口を貫く。 それがどういう意味か理解しているはずなのに。
「だあははっは! みんなお前が犯人だってよ」
「…お前か、俺をはめるためにお前が彼女に…」
「おいおい、いい加減往生際が悪いぞ。 大体、俺が昨日水泳の授業の前に帰ったのは知ってるだろ」
(確かにそうだ。こいつは用事があるとか言って早退してたはず…、じゃあ一体誰が…)
「ねぇ賢也君」
そこでこの前の陽キャ女子が呼びかけてくる。
「あなたいい加減罪を認めたら? あなたが犯人意外ありえないでしょ。さっさとこの子に謝ってあげなよ」
俺は周りに助けを乞おうと目を向ける。
だがみんな俺をさも当然のように睨んでいて、みんなが俺が犯人だとして疑っていなかった。
(なんだよ。 こんなことって…)
彼はこの時悟った。 じぶんに仲間がいないこと、みんなが我が身可愛さに自分を見捨てようとしていること、友などはなからいなかったということ、自分が何をやっても無駄だということに。
彼はその場から逃げ出した。
ただ現実の悲しさから目を背けるために。
彼が走り去った後にはどんよりとした涙が失望と悲しみを濁らせながら渦巻いていた。
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なんとも書いていて辛くなる話でした。
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