第6話きっかけはくだらないことで
第5話に少しだけ修正を加えました。
話にはあまり関係のない修正なので読み直さなくても大丈夫です。
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彼がまだ純粋であった中学の頃、彼はいつも誰かと笑い合ってまさしく陽キャと言われるポジションにいた。
彼は運動も勉強もどちらも出来たため、女子達には密かにモテていて男子達からは妬ましく思われてはいたが彼自身の明るさとその活躍から一定の人気と信頼を勝ち取っていた。
そんな彼が不登校になったのはある日のホームルームで起こった事件だった。
その日は運動会が近いということでみんなで残って練習することになっていたのだが、いざ放課後になった時にはみんな部活があるからとか用事があるとかでサボりろうとする者たちばかりだった。
そこで一旦話し合いということで全員が教室に集められたのだが先生は用事があるとかでいなくなってしまった。
彼もゴミ捨て当番でこの時は教室にいなかった。
しばらくしてクラス委員の女の子が教卓に立った。
彼女はまるメガネに三つ編みのツインテール、いつも口数が少ないがこういったみんなが嫌がる仕事を率先してやる、いかにも委員長といった感じの女の子だった。
「みんな面倒なのはわかるけど練習しないと勝てないしみんなで頑張ろうよ」
「……」
彼女の言葉も虚しく誰も聞く耳をもっていなかった。
「みんなだって他の団に勝ちたいでしょ?他の団も練習してるし練習しようよ!」
誰もが鬱陶しそうに話を聞かず、陽キャの女子に至ってはこの後どこに遊びに行くか話し合っている。
「ねぇみんな!…」
「なぁテメェさっきからうっせえぞ」
彼女の呼びかけが煩わしく感じたようで野球部のエースを務める陽キャが圧をかけながら彼女に近づいていく。
「な、なんですか?」
「部活がある俺たちがなんで残らされなきゃいけねぇんだよ」
「それはあなた達がふざけてばかりで全然練習できてないからですよ!」
「うるせぇなあ!俺たちには部活という正当な理由があんだろうが!さっさと帰らせろよ!」
「あなた達はこの前もそう言ってサボったじゃないですか!しかもあの時本当は部活なんてなかったそうじゃないですか!」
「…うるせぇなあ!大体テメェらみてぇな運動もできないカスどものせいでうまくいってねぇんじゃねぇのか!」
「私達はみんな日々の練習の甲斐もあって上達してきています!それに最近足を引っ張っているのはあなた達じゃないですか!」
話し合いは過激さを増していき、もはやどちらも冷静ではなかった。
「うるさいわねぇ…」
そこで先程まで無言を貫いていた陽キャの女子達が話に加わった。
「私達まで足引っ張ってるみたいに言われるのは心外なんですけどぉー」
「そもそも放課後に残ってまで練習することになったのはあんた達が下手くそで練習が足りないだけでしょ」
「…それはあなた達が練習に来ないからいざみんなでやるとあなた達とだけ連携が取れないからですよ!」
「はぁ?私たちのせいだって言うの?」
「マジで!?運動もできないノロマのくせに生意気なんですけど〜」
彼女達は多勢に無勢で押し倒していくが彼女も負けじと反論していく。
激しい言い合いが続く中で女子の一人が禁断の言葉を発した。
「…ねぇ男子、こいつ生意気だしさ。…しめちゃわない?」
その言葉を聞いた男達は顔色を変える。
「いいなぁ、やるか…」
その言葉にニヤついた野球部のエースはさらに彼女に近づいていく。
「まずは俺がやる」
「…ちょっと…あなた達なんの話してるの?」
周りにいた生徒達は固唾を飲んでその光景を眺めるだけだった。
彼が戻ってきたのはそれから5分後であった。
(いゃ〜ちょっと長引いちゃったな。委員長に怒られるかもな…)
彼は彼女とはよく掃除当番などで一緒だったためそれなりに仲はよく、彼は彼女のことを委員長とあだ名で呼んでいた。
そんなことを考えながらも彼はクラスの近くにやってきていた。
そのときクラスの壁からドンドンと激しい物音が聞こえ、彼は心配になって急いで中に入った。
「おい!何があって…」
そこで彼は地獄のような光景を目にした。
クラスのあちこちに椅子や机が散乱しており、半分以上の生徒がクラスの後ろで固まっていた。 後ろにいる友達はみんな前から目を背けている。
そして前の方では…
ぼろぼろになって髪を引っ張られている委員長と彼女を壁に押さえつけながら髪を引っ張る野球部の陽キャ、その周りで笑っている男達、そしてその後ろで何処かに潜ませていたスマホで撮影している女子とヒソヒソとその光景を笑い合っている女子達がいた。
「…“おい”」
「おお、賢也じゃねぇか。 ちょうどよかった、お前も一緒に…」
俺は怒りのままにそいつの喉を締め上げた。
「ぐぇが!」
「テメェ委員長に何やってやがる!」
「…テメェなに…しやがる!」
そいつは苦しそうに息を吐きながらせめてもの言葉を発する。
(何があったか知らないが、…こいつはここで叩きのめす)
俺は振り上げた拳をそいつに叩き込む…寸前というところで委員長に腕を掴まれた。
「ごっほ、げっぽ。 賢也君、暴力はダメだよ」
そこでようやく後ろで怖気付いていた奴らが前にやってきた。
「おい賢也、やめとけって」
「…お前ら」
彼はこの時彼らに対して言いようがない失望を抱いていた。
「はぁ、はぁ。…テンメェ!ふざけんじゃねぇぞ!」
そこで壁際でへばりついていた陽キャが彼に掴みかかろうとした。
が、「おい!やめときなってこれ以上やるとせんこうに見つかるかもしれないし…」
そこで意外にも先程まで黙っていた陽キャの女子が助け舟を出した。
「…ちっ!わかったよ。 いくぞ、お前ら」
彼は彼女の言葉に素直に従い、仲間達を引き連れて教室から出ていった。
静まり返った教室で彼女は声を上げた。
「はーい、みんな!あの人たちは帰っちゃったし今日はもう解散にしよっか」
彼女は無理をしながらも精一杯声を張り上げて問題ないように振る舞った。
そのあとはみんなバラバラに帰っていき、残った委員長と俺は後片付けをしていた。
「巻き込んじゃってごめんねぇ。 ちょっと怒りすぎちゃったみたい…」
「委員長は謝らなくていいよ。 あいつらが悪いんだし…」
「…そうだね。 でもありがとう、真っ先に私を助けてくれて…」
「いいって、…」
俺は若干のむず痒さは覚えたが、何故だか救われた気がした。
そしてこの事件をきっかけに彼に対するいじめは始まった。
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現実のいじめでありそうな展開にしました。
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