第5話出る杭は打たれる

彼が教室に入ると先程まで騒がしかったは皆一様に静かになり、ヒソヒソと何かを話し始める。


そしてクラスの中でも陽キャに位置する男達はわざとらしくでかい声で話し始めた。

「おいおいあいつって」

「ああ、休んでばっかの奴だ」

「そのくせして成績はトップとかおかしな話だぜ」

「ああ、どうせ家の金使い込んで家庭教師とか雇って家で楽に勉強してんだろうな」

「いいよなぁ。俺もそれくらいしてもらえれば成績トップくらい余裕なのに」

「ほんとずりーよな」

「……」


俺が彼らを無視して席に座って勉強を始めると彼らは面白くなかったのか、舌打ちをした後話題を変えて盛り上がっていた。


(俺は塾とか入ったことすらないんだけどな。 まぁ、そんなことより勉強勉強)


三十分ほど経って朝礼を行った後、俺たちは体育のため体操服に着替えてグラウンドに移動となった。


グラウンドへの道をそこまで覚えていなかったため、みんなに続いて移動していると先程の陽キャ達が俺に絡んできた。


「おーい、君学年成績で一番だったんだろすごいじゃん」

「は、はぁありがとうございます」

「えーっとなんて言ったけ。 …お前はさ、学年成績の結果とかって知ってるか?」

「いや、俺は基本的に先生から自分の成績表を渡されたときに番数を確認するだけだから知らないけど…」

「そうか、そうか。知らなかったか…。 俺はよお、不平等だと思うんだよ。 毎日真面目に出席して勉強してる奴より休んでばっかの奴のほうが成績いいのはおかしいと思わねぇか?」

(こいつら…)


「俺は別に休んでるわけじゃ…」


「何やってるんですか〜?」

「「…セラ先生!こんちわす!」」

「こんにちはぁ、ところでぇーなんの話してたんですか?」

「えーっと、いやこいつが学校休んでばっかだからなんで休んでんのか聞いてただけですよ」

「ですです!」


(こいつら急におべっか使い始めたな)


事実、彼は知らないが彼女 松風 瀬良は保健室のマドンナと呼ばれ、学園の三大美女と呼ばれる女子達に引けを取らない人気ぶりである。


彼女に告白して玉砕された男は数知れず、さらにその中には男性教師も混ざってるとか混じっていないとか。


「へぇ〜、そうだったんだ。 それより君たち早く移動しないと授業に遅れるわよ」

「は、はい。そ、それじゃあ失礼します。おい行くぞ」

「はぁ?なんで俺まで」

「いいからこいよ。早く…」

「あぁ、ちょっと待って。その子には用事があるから」

「はいー!わかりました。 それでは〜」

あいつらは俺のことを気にも止めずに走り去って行った。


「はぁ、…で。 セラ先生、用事ってなんです?」

「いやぁ、可愛い弟が困ってそうだったから助けてあげようと思って」

「別に…あいつらが言ってたようになんでもねぇよ。 …それにもしあいつらがなんかしてきたら叩きのめすだけさ」


(そうだ、あれからあれだけ鍛えたんだ。 もうあんな目に遭わないように…)

だがその手は無意識震えていた。

そしてそれを見つめた彼女は深いため息をつく。


「はぁ、けんちゃんはみえっぱりだからなぁ…。 無理はしないでね」

「…あぁ、わかってるよ」

彼はそれだけ言い残してグラウンドに去っていった。



彼がグラウンドに着くとみんなは整列して先生に指示を受けていた。

彼は空気を読んでその列の中に混ざって姿勢を正す。

「よし、全員揃ったな。 では今日は準備体操の後にサッカーをするぞ」


先生の指示に従い全員で準備体操をした後は体育員が持ってきたボールを使って出席番号の奇数と偶数に分かれてチームを作り、サッカーをすることとなった。


当然のように前の方にはさっきの陽キャ達がいくこととなり、俺たちのような陰キャはみんな後ろの方で守備をすることとなった。


陽キャ達は前の方でじゃんけんで先行後攻を決めた後、突然こちらを向いてヒソヒソと何かを話したあと互いに笑い合っていた。


彼はその目に少しの既視感を感じていた。


先生の合図で試合が始まると陽キャ達が蹴り出し、相手の方に攻め始める。


順調にパスを繰り返し前に進んでいったが、いつもふざけてばかりでみんなから笑われている楊キャにパスが渡ると彼はトラップをミスしてボールが場外に飛んでいき相手ボールになってしまった。


攻守交代で相手はゆっくりとしながらも着実にボールを繋いで迫ってくる。


すると一人の陽キャが俺の方に走り出してくる。


「ヘイ!こっち」


彼は仲間からパスを受け取ると俺の目の前までドリブルしながら切り込んでくる。


「へっ、勉強が出来たところで運動ができない奴が調子乗ってんじゃねぇよ」

(乗ってるつもりはないんだけどなぁ。 ていうかドリブル全然上手くねぇじゃん)


俺は彼が勢いのまま蹴ったボールを奪おうとボールを蹴ると彼は俺の足に蹴りを入れてきた。


だが俺がそのまま足で無理矢理ボールを蹴り上げるとボールは彼の膝に当たった後場外に出ていった。


そのあとボールを拾いに場外へ行こうとしていると彼は膝を抑えて痛がる仕草を見せていた。


「いつつ、お前ファールしてんじゃねぇよ。下手なのはわかるけど手加減しろって」

「はぁ?お前が俺の足を…」


俺が言い返そうとしていると後ろから肩を引っ張られた。 振り返るとさっきの陽キャの一人が俺を睨んできていた。


「お前さぁ、こいつはお前と違って次の週に大会控えてんだぞ。 こいつが怪我して出られなくなったらどうすんだよ!」

「いや俺は…」

「いいよ、こんな勉強ばっかしてる奴の蹴りなんて受けたところで怪我なんかしねぇって」

「…わかってるよ。ちっ、次から気をつけろよ」

「……」(なんとも酷い話だな。 あいつが一方的にファールしてきたくせにこっちがわるもんみてぇに言いやがって…。

あぁ、なんかやる気めっちゃ失せてきたな)


周りの奴らに目を向けるがそいつらは目が合うとすぐに目を逸らして俺を腫物扱いしてくる。


それを見た彼は昔の光景を思い出していた。


それは彼が不登校になった原因の事件であり、彼が嫌な意味で成長した事件であった。


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