第7話 できること
ジリリリリリリリリリリ!!
鳴り響く携帯のアラームを止めながら、あたしはのろのろと布団から這い出た。
今日は土曜日で、学校は休み。やったね!
……まあ、昨日入学したばっかだけどさ。
あー、今日は何にもやることが無いなー。明日は笑夏と一緒にお出かけだけど、今日は何も無い。笑夏、土曜はピアノのレッスンがあるんだよね。
気が早いけど歌詞とか作ろっかな?ソロ曲の歌詞なんかは、作っとけば後々楽になるだろうし。
歌詞はどんな感じがいいかなぁ。今までのハイドラの傾向的に、グループ全員が1つのテーマで曲を作って、それぞれ自分らしさを演出するっていうパターンが多い……というか、人気なんだよね。元の部活とか好きなものとか。バラバラの曲より、テーマが揃っているのにオリジナリティが溢れているグループの方が、グループ・ソロ共にいい感じだって思われるみたい。
だったら、あたしたちも何かテーマに合わせて作ろっかな。うーん、好きな食べ物?趣味?なんかいまいちピンと来ない。
共通点とかはどうかな。……あれ、なくない?
あたしたちはあんまり、ていうか全然似てないらしく、新しくできた友だちからは「なんで2人は一緒にいるの?」って絶対聞かれる。だから、共通点って言っても北海道出身とか幼稚園から同じ学校(園)に通っているとか……
あ!雪!雪が好き!あたしたち2人とも、雪が好きなんだよね。かまくら作ったり、雪うさぎに雪だるま、雪合戦にそりすべり。小さい頃から雪を使っていっぱい遊んできた。北海道生まれ北海道育ちだもん。
それなら、雪をテーマに歌詞を書いてみよう。あたしのは、性格に合わせた明るいアイドルポップス。笑夏のは、笑夏の演技力を活かしたバラードにしたいな。
中学校の文化祭の演劇で、笑夏は出演者のなかでも一際輝いていた。圧倒的な演技力で劇を引っ張っていた。笑夏の放つ声に、何気ない仕草に、指の動きひとつに、髪が揺れる瞬間に、目を奪われてしまう。笑夏が口を開いたらもう、笑夏しか見えなくなってしまうのだった。あれは凄かったなぁ……中学の演劇部の中で、笑夏は立派な女優だった。
だから、笑夏のソロ曲はその演技力が活きるような曲にしたいな。恋愛っぽさも入れてみたらいいかも。恋愛の切ない気持ちも、笑夏なら美しく歌いきってくれるだろうから。
あー、楽しみになってきたー!もっと構想を固めて、どんどん歌詞に起こしていきたいな。北海道出身のアイドルが雪をテーマにした歌を歌うなんて、らしくていいじゃない?
ソロ曲は、メンバーの個性をアピールするチャンス。あたしたちらしさを出して、あたしたちのアイドルを好きになって貰えたらいいな。
でも、そうするにもまずは笑夏のお母さんを説得するところから。活動許可が取れないと何も出来ないもんね。
少しでも、出来ることないかな……あっ、そうだ、走り込みでもしておこう!アイドルには体力が必要だからね。
そう決まったら、いつまでもゴロゴロしてられない!ふわふわもこもこなラグから起き上がったあたしは、身支度を整えるために部屋を出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます