第2話 止まらないドキドキ
朝起きて、時計を確認。枕元にある時計が6時を指していることを確認しつつ、私はベッドから降りた。
今日は高校の入学式。今日から、私は高校生になるんだ。
そして、高校生アイドルに、なるんだ。
忘れっぽい幸があの時の約束を覚えているかは分からないけれど、私はずっと覚えていた。忘れられなかった、って言った方が正しいのかな?
だって、あんなにもドキドキしたの、本当に久しぶりだから。
小学生の時からずっと、大人しい良い子ちゃんで通ってきた私。やりたいこと、憧れることもたくさんあったけれど、周りの空気を気にしていつも諦めてばかりだった。
だから、幸が私を誘ってくれた時、本当に嬉しかった。幸はいつも、こんな私を引っぱって楽しい世界を見せてくれるから。
幸は他にも人を誘っているのかな?二人でやりたいな、なんて我儘を言ったら困らせちゃうかな?
あっ、そんなことを考えていたら時間がなくなっちゃう。とりあえず眠気覚ましに顔を洗いに行かないと。
お湯に切り替え忘れてしまったから、冷たすぎる水に手を浸しちゃって。しばらく悴んでしまった指を息で暖めながら部屋に戻る。
部屋まで戻る時にすれ違ったお父さんにおはよう、と挨拶をして、部屋で手早く着替える。
新しい制服に少しだけ胸をときめかせながら。
髪も結び、身支度は完了。あとは、お母さんが作ってくれたご飯を食べて、家を出る時間まで本でも読もうかな。
リビングへ行くと、お母さんが朝ごはんを準備してくれていました。
「お母さん、おはよう。ご飯ありがとう」
と言いながら、配膳をします。今日のご飯もとっても美味しそう。
「いただきます!」
箸を手に取り、食べ始めます。ご飯もお汁もおかずも美味しい。料理上手なお母さんで良かったなぁ。
なんて考えていると、私のお皿はいつの間にか空っぽ。美味しいから手が止まらなかったのかな?
「お母さんありがとう、美味しかったよ。ご馳走様でした」
手を合わせ、食器を手早く洗います。自分のお皿を洗い終わったあとは、歯磨きをしてもう一度顔を洗って、部屋で少しだけゆっくり。
中学の時から変わらない、私の朝。もしハイドラに出ることになったら、朝練とかするのかな。
そうこうしているうちに、いつの間にかいい時間になっていました。そろそろお家をでなきゃ。
「お母さん、そろそろ行こう」
「そうね、行きましょう」
私はお母さんと一緒にお家を出た。
学校までの道中、私はお母さんとお話しながら歩いていた。すると、後ろからトントン、と肩を叩かれる。振り返ると、笑顔の幸と、それからさちの親御さんがいた。
「笑夏、おはよー!おばさんも、おはようございます!」
私と幸は家も近く、小学校の時から一緒に通っていたのだ。
「あら、幸ちゃん、おはよう」
「幸、おはよう。どうせだから一緒に行こうか」
私が返すと、
「そだね!うん!」
と満面の笑みで言ってくる幸。朝から元気だなぁ。
「そういえばさ、笑夏。受験前の約束、覚えてる?」
「もちろん。忘れるわけないよ」
ああ、幸も覚えていたんだ。言い出したのは幸の方だけど、忘れっぽいからなぁ。
そんな私の顔を見てか、幸がジトっとこちらを見てくる。
「笑夏、なんか失礼なこと考えてるでしょ!」
「あら、バレちゃった?」
「分かるよ!何年一緒にいると思ってんのさ!」
そうだね。
幼稚園の頃からずっと一緒。言いたいことだって言えるし、何をやるにも息が合ってる自信はある。
「ねえ、幸。……絶対優勝しようね」
私は、そっと呟いた。
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