HIghschool Dream Live! はぴねすまいる編
薄氷 暁
第1話 待ちに待った高校生活
白い雪が降り積もり、突き刺すような寒さがあたしと、あたしの幼なじみである笑夏を包み込んだあの日。……なんてカッコつけてみたけど、簡単に言えば冬の日の帰り道。あたしたちは、裏門から帰るために中学校のグラウンドを横切っていた。
あたしたち2人は、同じ高校を目指して受験勉強にあけくれる、そんな毎日だった。推薦入試が終わり、結果を待ちながら学校に通っている、そんなある日。あたしは、笑夏に、あるお願い……いや、お誘いをしたのだった。
「笑夏、あたし、笑夏と一緒にアイドルやりたい!」
あたしの突然の発言に驚いて、数秒フリーズする笑夏。数秒後、やっとのみこめたのか、驚きながら笑夏は言った。
「え、ええ!?い、いいけど………アイドルって、そんなに簡単になれるものなの?」
なんだ、そんなことか。大丈夫だよ、笑夏。だって、
「なれるよ、高校生になったら。だって、高校生になったら、高校生アイドルの大会が…ハイドラがあるんだもん!」
あたしは、昼休みに暇つぶしに作った小さな雪山の上で仁王立ちし、宣言する。そんなあたしを、笑夏は目をぱちぱちさせながら見ていた。
ハイドラ。正式な名前をHIghschoolDreamLive(ハイスクールドリームライブ)というその大会は、高校生のためにある大会だ。
男子部門・女子部門・性別不問(混合ユニット)部門の3つがあり、参加者、もとい参加校は年々増えている。どの部門も、学校ごとに2人以上9人未満のユニットでの応募で、オリジナル曲・オリジナルダンス・オリジナル衣装で歌って踊る動画をインターネット上にアップして活動するのだ。3部門全て、途中にある予選を勝ち抜いた5校だけが決勝に進むことが出来る。
「そ、そうなの、そんなのがあるのね…幸はそれに出たいのね?」
笑夏の問いにあたしは大きく頷き、
「もちろん!あたしね、笑夏と一緒に出たいの!ねぇ、笑夏、高校生になったら、一緒にハイドラに出ようよ!」
と叫んだ。
すると、笑夏の驚いた顔がだんだん笑顔になり…
「いいわね、楽しそう!私も一緒に出たい!」
満面の笑みで、笑夏は言ってくれた。
「ありがとう、笑夏!そう言ってくれて嬉しいよ!ねぇ、笑夏、絶対に優勝しようね!約束だよ!」
「うん!頑張ろうね!」
真っ白な世界の中、あたしたちは、熱く指切りをして、約束したのだ………
ジリリリリリリリリリリ!!
「おわー!!!!」
毎朝6時に設定している携帯のアラームが鳴り響き、あたしは飛び起きた。奇声をあげて飛び起きるという、今日から花の女子高生になるにはあんまりのスタートに、少しだけ頬を膨らませながら。
「それにしても……懐かしい夢だったなぁ」
確かあの後、雪山が少し溶けたことによって滑っちゃって、しばらく風邪で寝込んだっけ。笑夏にはそれはもう呆れられたし、話を聞いた親戚にはそれでも道産子か!なんて言われたし。
まあ、生まれも育ちも北海道ですけどね!
というか、北海道でアイドルなんてできるのかな?
今日は入学式。あたしと笑夏は、無事志望校に合格し、あたしたち2人の故郷である、北海道の私立早蕨学園高校に入学する。普通科しかないしクラスもそんなに多くは無いけど、地元の人たちからは愛されている学校だ。
北海道の高校のアイドルなんて、今までいたっけ。こういうのってやっぱり東京付近の都会の学校が多くて、北海道や沖縄、九州四国あたりはなかなか見かけないし、見かけても最終予選まで進んでなかった。ここ最近のハイドラしか知らないから、昔はどうかは分からないけど。あたしは、何だかそれが悔しかった。都会でしかアイドルできない、って言われてるみたいだから。
だったら、あたしたちが上手くやれば、増えるかもしれない。なにより、珍しさから注目してもらえるかもしれないからね!気弱になんてなっちゃダメ。幸は元気いっぱいがウリの女の子なんだから。
まずは、笑夏と一緒に部活を作らなきゃ。顧問はどうしよう、まずメンバーは2人だけになるのかな、ユニット名はどうしよう、曲なんて作れるかな、衣装作りとか大変そう……なんて、これからの学校生活…高校生アイドル生活に思いを馳せながら、あたしは高校に向かって走るのだった。
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