孤児院にて


ガキンチョの扱いなんて、私にとっては簡単な事だ。

ちょっとした仮面を装着して、適当なヒーローショーを見せればすぐ夢中になる。


私がガキの頃もそうだったしな。

タダで見れるからと、姉さんが私と妹を連れて見せてくれたものだ。

実に懐かしい。


ともあれ、これでクソ騒がしいガキ共も、私に従順な下僕となる。

戦災孤児ゆえ、センシティブな扱いになる可能性も危惧していたが。

魔族に扮したのが功を制し、杞憂に終わったようだ。

匂い対策もしたから、人間バレする事も無かったし。

結果として最後まで、スムーズに医療活動ができた。


負傷しているガキの状態は、過酷を極めていた。

身体の一部欠損から果ては失明など、見るも無惨なモノばかり。

また五体満足なガキも多いが、その多くが心的外傷を負っている。

男児女児を問わず、人間の兵士達から玩具にされたんだろう。

嗚呼、可哀想に…


と言った具合に並の治癒師であれば、匙を投げる案件である。

院長は、よくこれらを引き取りながら孤児院を運営できているものだ。


尚、医療行為はまとめて行わず、回数を分散させた。

勿論、孤児院を訪れる際は、魔族スキンの状態で。


私の魔力保有量ならば、一度でガキ全員を心身共に完全治癒できる。

しかし私は、そんな勿体無い事はしない。

手当たり次第に軽く終わらせたら、有り難みも少なくなるものだ。


孤児の中でも、失明したメスガキは、最後の治癒対象にする事とした。

おそらくは戦火に紛れて、男どもに弄ばれたのだろう。

とても酷い状態だった。

身体中は傷跡だらけ。

両手足はあるものの、歩行時は常に片足をひきづっている。

肝心の目は、意図的に潰されている。

その状態で保護されるまで、よく生き長らえたものだ。


彼女の治療は、あえて先送りにした。

視力の回復はとても高難度なモノだの、魔力を食うだのと、難癖を付けてね。

周囲の友達が、心身共に全快していくのを感じ、自分は治療されないのかもしれない、というメスガキの雰囲気は特に最高だった。

このメスガキ、状態を復元すれば、器量も孤児達の中では最高だ。


だから治療に着手するまでの間、念入りにコミュニケーションを取った。

まるで、お姫様をあやすように。


「あの…おにいさん、わたしのばんは…まだですか?」


「大丈夫、大丈夫。安心しろ、必ず目が見えるようになる」


「ほんとう?」


「ああ、約束しよう」


私は、メスガキの頭を優しく撫でて励ました。

目が見えない中、不安そうな声で私に問いかける姿は最高だったよ。

院長の言う嗅覚が鋭いガキ、というのはコイツの事だが。

全くバレてない。

この短期間で、見事に信頼されている。

可愛いなぁ。

実に良い、私の健康に良い。



数度にわたったガキ共の治癒も、終盤に差し掛かった。

身体の一部が欠損しているもの、PTSDを患ったもの等、ほぼ全員は治療した。

残るは失明している、このメスガキだ。


今回の治療は院長に頼み込んで、私とメスガキの二人きりにしてもらった。

これまでの成果もあって、院長はすんなり承諾しすぐに別室を設えてくれた。


ちなみにこの個室には、防音魔法をガッチリ張った。

ここで何が起こっても、外部には一切の音が漏れない。


あとは、魔王城の誰かさんが覗き見するために使っている、あの下世話な魔法…

逆探知を察知されると色々と面倒なので、魔法による具体的な対処が出来なかったが。


結局は、王妃エキドナをちょっとだけ発情させて魔王を襲わせた。

私がメスガキと一緒にいる間だけ。


過去に魔王から依頼されて、エキドナを治療した時の事だ。

私の因子を気付かれない程度にごく僅か、彼女の生殖器に仕込ませていた。

昏睡状態のエキドナに、直接注入するのは容易かったよ。

彼女が私に何をされたのか、魔王にも分かるまい。

おかげで効果は覿面だった。


エキドナをムラムラさせた結果、早々に魔王城から来る監視の目が無くなった。

エキドナが自慰をしたら水泡に帰す計りごとだが、うまくいったようだ。

遠見の魔法で監視する余裕が無いあたり、かなり激しいプレイが予想されるな。


まぁ彼らにしても、夫婦の営みが出来て何よりだろう。

割と良い成果だったので、今度はウチのパーティーメンバーの性欲制御にでも流用してみるか。

アイツら性欲を持て余し過ぎだし。


私?私は良いのだよ。

私は自分自身を客観的に見ることができる。

彼等彼女達と違うのだ。



さて、肝心なメスガキの治療だが…

特段のトラブルも無く完了した。

逆に苦労して治療した感、これを演出するのが大変だったが。


「ふう…お嬢さん、君の眼は元通りだ。目隠しを外すから、目を開けるんだ。光に慣れていないから、ゆっくりとね」


「うん」


私はメスガキの目隠しをそっと、外してやった。


「ほら、どうだ?見えるか?眩しくないかい?」


「!!…う゛ん…まぶしい…まぶしいよぉ…ありがとお…ありがとぉ…」


どうやら、窓から差し込む日差しが眩しいようだ。

ガキは泣きながら、目を細めて光が刺す方を見つめている。


それにしても、美しい瞳だ。

吸い込まれるような、緋色。

奇しくも、魔族スキンの私とそっくりだ。


「それは良かった。さぁ、私がどんなふうに見えるか?」


「…あっ!えへへ、おにいさんじゃなくて、おねいさんだったんだね。でもカッコいいのは、おなじだね。えらい魔族さまみたい」


サラシで押さえつけられているとは言え、私には胸の膨らみがある。

それを見たメスガキは、私が女だと気が付いたようだ。


「さぁ、おいで。抱っこしてあげよう」


「うんっ!」


目も身体も全快したメスガキは、屈んだ私に飛び込んできた。

そのまま、優しく包容してやる。

可愛いなぁ、可愛いなぁ。


はやく、その可愛いらしいお顔を曇らせておくれ。


「君にだけは教えよう。私には秘密があるんだ」


「おねいさんのひみつ?なぁに?」


「ああ、実はな…私は人間なんだ」


魔族スキンを解除した。

すると私は一瞬で、聖女ティアナとなる。


「えっ?…あっ…ぁえ?」


匂うだろう。

お前がトラウマとなっている、ヒューマンの匂いだ。

思い出せ。

お前は人間のせいで…


「ごめんなさい、私ね、人間なんです。貴方を痛めつけた人間の仲間なんです」


ほら、壊れろ。

絶望しろ。

私にその瞬間を見せろ。


お前が信頼を寄せていたのは、お前の両親を殺した人間の一員だ。


泣くか?叫ぶか?怒るか?狂うか?また失明するか?言葉を失うか?

大丈夫、心が壊れても私がうまく人格を上書きしてやるから。


そしたらメスガキ、お前を愛してやるよ。

幼さは今のうちしか味わえない、とても貴重なものだ。

いや、幼さで言ったら…ヴァニタ相手ならいくらでも味わうチャンスがあった。


だが、アレはダメだ。

近親相姦は飽きる程したが、自分自身を相手に愛し合うのは無しだ。

それはオナニーに過ぎない。

だから、ありえない。


ほら!ほら!ほら!ホラァ!


私の心が、久方ぶりの絶頂を迎えようとしていた。

その瞬間だ。



“ばつん!”



私の豊満を押さえつけていた、胸のサラシとボタンが弾けた。


メスガキの頭は、私の豊かな双子山に優しく包まれた。


私の胸…また成長したんか?

いや、そんな筈は…

違う

あ、まさか


そう言う事か


胎児の成長を止めてるとは言え、身重だもんなぁ、この身体。


あ、アカン

ダメだ…漏れ始めてる…


はぁー…


「んふーふん、んー…んふー…ぷはぁ。おねいさんが人間でも、わたし驚かないよ。匂いがちょっとだけ違うのは、あんまり慣れないけど」


メスガキは一通り、私の豊かを顔面で味わった後、呼吸をするために顔を離した。

そこには私の想像した、錯乱しているメスガキの姿はなかった。


「なんだと?」


「わたしにとってはね、おねいさんの声が一緒なのが嬉しいの」


声か…それは盲点だった。

多少演技で、喋り方は変えていたが…

声質そのものは、変えてなかったな。


そうだ、匂いだ。

コイツは匂いには敏感だったはず。

なぜ人間の匂いを嗅いで慌てない?


「匂いは?」


「あんまりわからない。さっきまで、よくわかったんだけど」


「あっ…」


「どうしたの、おねいさん?」


メスガキが私を心配して、声を掛けた。


あー…

やってしまった…

失明で逆に鋭くなっていたメスガキの嗅覚も、元通りにしてしまった。

こんなドジを踏むなんて、恥ずかしい。


思考能力をクソ女神に下げられる以前に、しっかりと元に戻したんちゃうんか!

天上の女神を乗っ取った私ィ!

どないなっとんねん!


え!?調整ミスってる?

お前あのクソ女神のクソスペックに引っ張られて、バカになってんじゃねーよ!!


はぁ?急に有能になったら怪しまれる?

知らんがな!はよワレを元に戻さんかいボケェ!


はぁ…もういいや…ちくしょうめぇ…


「おねいさん、どうしたの?どこかわるいの?」


「あ…いえ…なんでもないです…」


もうテンション爆下がりだよ。

この少女が絶望に沈む瞬間を見られた筈なのに。

いや、もともと寛容そうだから多少ショックを受けても、受け入れていた可能性もあるが。


「あっ…おねいさん…これ…おかあさんとおなじ………あのね…おねいさんのコレ、すっていい?」


「ア、ハイ…ドウゾ…」


「おがぁざん…おがあざん!」


おー…泣きながら、夢中になって…


あ、そういえば。

さすがにお母さん役で赤ちゃんプレイをするのは、初めてだなぁ。


前世では飲み過ぎて、よく腹を下したなぁ(遠い目)。


はぁ…もういいや…


なんだろうこの気持ち。


例えるなら…目当てのラーメン屋に行ったら臨時休業で、他の店舗じゃ代替が効かないような…

そんな、やるせない気分。


はぁ…


魔族の娼館行こ



あ?このメスガキ?


なんか知らねえけど、孤児院にたまに来るお母さんになったらしよ、私。


いや、知らんがな。


ったくめんどくせぇなぁ。


ガキ共の治療が終わって、このメスガキを壊せば、二度と孤児院に寄ることなんて無いのに。


なんでわざわざ関係の無い、メスガキに授乳せなアカンねん。


いやまぁ…乳も張ってきたし、搾乳する手間が省けるから別にいいけど。


あ、ダメ


メスガキに授乳する所、魔王に覗かれちゃう


クソが


まぁいいか


ってか意外とテクニシャンだな、このメスガキ♡

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異世界TS転生曇らせ愉悦部が失敗するだけの汚話 アスタロット @yuruxya

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