酒乱ティアナ
国王の公妾アトラとのファーストコンタクト、それ自体は悪くないものだった。
王宮に入り込んだヴァニタの仲介もあり、アトラとの邂逅後は円滑にコミュニケーションを取る事が出来た。
また実娘のエリナとも、パーティーを組んでいる事も、大いに幸いした。
アトラと打ち解けるのも、大して苦労しなかったからな。
次回以降の訪問についても、約束を取り付けたし、初回にしては上出来だ。
しかし、アトラ攻略における最も大きな問題は未だクリアしていない。
彼女にアプローチする時間が、そう多く残されていないのだ。
魔族領で二つ目の秘宝が手に入れば、残りは秘匿された神殿を解放するだけ。
私は物語から消え去る。
心苦しいが今生の実家や王都にも、寄り付くこともあるまい。
出来れば王都を離れる前に、彼女を堕としたいのだが…
これ以上、思い悩んでも仕方が無い。
私のプライドが許さないが、いざとなれば強硬手段に出る事もやむなし。
とりあえず縁起を担ぐためにも、持て余した性欲はエリナを使って解消しておくか。
久しぶりに呼び出して、徹底的にブチ犯してやる。
親子で性感帯が同じ可能性もあるし、再確認をしておくに越した事はないしな。
♢
翌日、アトラを訪問した私を待っていたのは意外な人物だった。
「いらっしゃい、聖女様」
「待ってましたよ、ティアナさん……♡」
「ネ、ネイさま…なぜ…?」
「わたくしを仲間はずれにして、二人で楽しくお茶会なんてズルいわぁ…だから来ちゃった♪」
「と言う事で、ネイ様をお招き致しました」
「はぁ、そう言う事ですか」
チッ…ネイの好感度を上げすぎた事が裏目に出たか。
ネイの事は好きだけど、今は邪魔だなぁ。
アトラと二人きりの状況がマストなんだが。
「うふふ…ティアナさん、今日も特別なモノを用意したから、三人で楽しみましょうね?」
ネイが何やら持ち込んでいるらしい。
何だろう。
「特別なモノ、とは?」
「コレよ!コレ!ティアナさんの大好きな、王家御用達のコレ!」
王妃は傍に居た侍女に、籠から瓶のような容器を取り出させた。
侍女は容器の栓を抜き、内容物をグラスに注いでいく。
「あ゛あ゛っ!それは!」
酒だ!酒に違いない!
こないだの王宮の祝賀会で飲んだアレ!
あのお酒!めっちゃくちゃ美味かった!
どんな高級な酒場でも拝めない、王家御用達のお酒!
前世でも飲んだ事がない、最高にウマい酒!
飲みたい!飲みたい!飲みたい!飲みたい!
飲みたい!飲みたい!飲みたい!ノミタイ!
ヨコセヨ!ヨコセヨ!
ウマイサケヨコセヨ!
「あの時のオサケ………ッハ!…ネ、ネイ様…昼間から王宮で酒盛りとは、流石にまずいのでは?」
「ウフフ…ティアナさん、このお酒大好きよねぇ?先日の酒宴で、すっごく気に入られている様子でしたので、用意しました♪これねぇ…王国が独自に作らせているから、市場に流通しているモノではないの…この機会だから特別に、三人で愉しみましょう。アトラさんも、ね?」
「ええ、勿論です。昼間から酒宴とは、何だか背徳的で…三人のヒミツですね!」
「アトラさんも乗り気ですから、ね?ティアナさん?」
「ノミタイ………………ノミタイ…………飲みます!」
「これより、私達は秘密の茶会を開きます。お前達は下がって結構よ」
王妃は侍女を退室させたな。
つまり、女三人で女子会ってかぁ!
一人偽物がいるけどなぁ!
あはっ!
もうアトラ攻略とかどうでもいいやぁ!
女子会の始まりや!
美味い酒!旨い酒!ウマイ酒!
酒が飲めるぞぉー!
♢
「だからぁ〜ネイしゃまもぉーアトラしゃまもぉー最高なんれしゅよぉー…ヒィック!個人的にはですよぉ、美女なうえにぃ人妻でぇ!しかも経産婦!ポイントが高いんれしゅよぉ!ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ップゲェ〜。あとおっぱいでけぇ!さいこー!モンデナメタイ!ぱいじゅりしてもらいたい!もう竿ねぇーけど!ガッハッハッ!!」
「嬉しいわぁ。あら、ティアナさんのグラスが空いているわね…アトラさん、注いでやって下さいな」
「ええ、勿論です。ほらティアナさん、まだまだありますから、沢山飲んでくださいねー」
「へっへっへっ…いーココロガマエじゃねぇかぁ…ヒック!ゴクッ…ゴクッ…ぷはぁ!美女に囲まれて酒が飲めるとか!ここはセクハラ天国か!オラァン!テメーらのデカメロンもっと揉ませろや!」
「あんっ!ティアナさんったら、おませさんですね」
「ネイ様…聖女様ってお酒が入ると別人になるんですね」
「面白いお方よね。でも、これからもっと凄くなるわよ…」
「なに話してるんれしゅかぁ!ゴクッ…ゴクッ…わらし抜きでヒソヒソバナシはズルいれしゅ!ゴクッ…わらしも、まーぜーてー!ヒィック!………はれ?ここはどこ?わたしはだぁれ?あなたはザビエル?」
「壊れたわね」
「壊れましたね」
「壊れてなんかないもん!ティアナふつうだもん!ものたりねぇ!酒たんねぇよ!もっとのませろや!タルごと持って来いやぁ!」
「はいはい、まだまだありますから。大丈夫ですよぉー。アトラさん、悪いけど新しいの、栓を開けてくれる?」
「はい、どうぞ」
「おっ、気がきくやんアトラ!ヒック!おい、ネイさんよぉ…テメェの口移しで飲ませろやーオラー。ネイがおわったら、つぎアトラなー」
「ふふっ…ではお言葉に甘えて………」
・
・
・
ー翌朝ー
「オゲェ!ぎもぢわるい…げぇ…うぷっ…流石に飲み過ぎた…気が付いたらネイもアトラもいねぇし…うぅ…もう酒はやめよう…禁酒しよう……具体的には夕方まで禁酒しよう………うぐぅ……帰るか……もうヘロヘロだ…全身痛いし…酔って寝違えたかな…おぷっ!オッ…オロロロロロロロロロロ…」
王宮で目覚めた私は、誰の目にも触れる事なく王城を後にした。
醜態を隠しながら、トボトボと拠点に向かう姿は仲間に見られたく無いな。
でも走ると口から更にレインボーしちゃうからムリ。
「はぁ…はぁ…おぷっ!…ネイも…目を光らせてるし…やりにくいなぁ…ちょっとアトラ攻略は…へへっ…見送るかな……おっ…おっ…オゲェ!」
もう、飲酒は控えよう。
お酒、ダメ絶対。
下手打ったら、今までの作戦がお釈迦になってしまうからね。
酒は良く無い。
今度から飲む時は、もっと薄いお酒にしよう。
♢
「ねぇ、アトラさん」
「何でしょう、ネイ様?」
「ティアナさん、もしかしてーーしてらっしゃる?」
「おそらく初期ですが…ーーしているかもしれませんね」
「ティアナさん、ーーの色が少し変わり始めているわ。何度か一緒に入浴しているから、分かるの」
「酸味の強いフルーツも、気にせず召し上がっていました」
「濃いお酒に、酸っぱいフルーツは付きものだけれど…そんなに食べる程じゃないわね」
「一体何処の誰が…」
「酔ったティアナさんに、それとなく探りを入れてみたんだけど…分からなかったわ。もしかしたら、ティアナさん自身、自覚が無いのかも…」
「そうですね、寧ろ処女と思っていらっしゃる」
「教会の聖女がーーとなると、世間は大騒ぎになるわね。ティアナさんをーーせた男が気になるけど、それよりも私達で彼女を支えてあげた方が良いのかもね」
「そうですね。私達、人生の先輩ですからね」
「ここ、王宮なら設備が整っているから、ーーする時も比較的安全ね」
「ネイ様、聖女様がーーなら、危険な行動を諌めるべきでは?」
「大丈夫よ、アトラさん。ティアナさん聖女だけど、実は枢機卿でもあるの。彼女の力は絶大よ。何の心配もないわ」
「まぁ、そうだったのですね。ならば尚更、ーーした枢機卿を助けるべきですね」
「ええ、今度会ったら色々アドバイスしましょう」
「ああ、それとネイ様…また”お茶会”の機会があれば、我が娘のエリナを呼んでもよろしいでしょうか?聖女様、エリナと肉体関係にあるようです」
「あら、それは初耳だわ」
「聖女様から、エリナと同じ臭いがしたもので…おそらく、間違いないかと」
「うふふっ…ティアナさん…うふふふっ……勿論、大歓迎ですわ。エリナさんも加えて、四人でしましょう♡」
・飲酒は20歳を過ぎてから
・妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児、乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります
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