酒乱ティアナ

国王の公妾アトラとのファーストコンタクト、それ自体は悪くないものだった。

王宮に入り込んだヴァニタの仲介もあり、アトラとの邂逅後は円滑にコミュニケーションを取る事が出来た。

また実娘のエリナとも、パーティーを組んでいる事も、大いに幸いした。

アトラと打ち解けるのも、大して苦労しなかったからな。

次回以降の訪問についても、約束を取り付けたし、初回にしては上出来だ。

 

しかし、アトラ攻略における最も大きな問題は未だクリアしていない。

彼女にアプローチする時間が、そう多く残されていないのだ。

魔族領で二つ目の秘宝が手に入れば、残りは秘匿された神殿を解放するだけ。

私は物語から消え去る。

心苦しいが今生の実家や王都にも、寄り付くこともあるまい。

出来れば王都を離れる前に、彼女を堕としたいのだが…

 

これ以上、思い悩んでも仕方が無い。

私のプライドが許さないが、いざとなれば強硬手段に出る事もやむなし。

とりあえず縁起を担ぐためにも、持て余した性欲はエリナを使って解消しておくか。

久しぶりに呼び出して、徹底的にブチ犯してやる。

親子で性感帯が同じ可能性もあるし、再確認をしておくに越した事はないしな。

 

 

翌日、アトラを訪問した私を待っていたのは意外な人物だった。

 

「いらっしゃい、聖女様」

 

「待ってましたよ、ティアナさん……♡」

 

「ネ、ネイさま…なぜ…?」

 

「わたくしを仲間はずれにして、二人で楽しくお茶会なんてズルいわぁ…だから来ちゃった♪」

 

「と言う事で、ネイ様をお招き致しました」

 

「はぁ、そう言う事ですか」

 

チッ…ネイの好感度を上げすぎた事が裏目に出たか。

ネイの事は好きだけど、今は邪魔だなぁ。

アトラと二人きりの状況がマストなんだが。

 

「うふふ…ティアナさん、今日も特別なモノを用意したから、三人で楽しみましょうね?」

 

ネイが何やら持ち込んでいるらしい。

何だろう。

 

「特別なモノ、とは?」

 

「コレよ!コレ!ティアナさんの大好きな、王家御用達のコレ!」

 

王妃は傍に居た侍女に、籠から瓶のような容器を取り出させた。

侍女は容器の栓を抜き、内容物をグラスに注いでいく。

 

「あ゛あ゛っ!それは!」

 

酒だ!酒に違いない!

こないだの王宮の祝賀会で飲んだアレ!

あのお酒!めっちゃくちゃ美味かった!

どんな高級な酒場でも拝めない、王家御用達のお酒!

前世でも飲んだ事がない、最高にウマい酒!

 

飲みたい!飲みたい!飲みたい!飲みたい!

飲みたい!飲みたい!飲みたい!ノミタイ!

 

ヨコセヨ!ヨコセヨ!

ウマイサケヨコセヨ!

 

「あの時のオサケ………ッハ!…ネ、ネイ様…昼間から王宮で酒盛りとは、流石にまずいのでは?」

 

「ウフフ…ティアナさん、このお酒大好きよねぇ?先日の酒宴で、すっごく気に入られている様子でしたので、用意しました♪これねぇ…王国が独自に作らせているから、市場に流通しているモノではないの…この機会だから特別に、三人で愉しみましょう。アトラさんも、ね?」

 

「ええ、勿論です。昼間から酒宴とは、何だか背徳的で…三人のヒミツですね!」

 

「アトラさんも乗り気ですから、ね?ティアナさん?」

 

「ノミタイ………………ノミタイ…………飲みます!」

 

「これより、私達は秘密の茶会を開きます。お前達は下がって結構よ」

 

王妃は侍女を退室させたな。

つまり、女三人で女子会ってかぁ!

一人偽物がいるけどなぁ!

 

あはっ!

もうアトラ攻略とかどうでもいいやぁ!

女子会の始まりや!

 

美味い酒!旨い酒!ウマイ酒!

 

酒が飲めるぞぉー!

 

 

「だからぁ〜ネイしゃまもぉーアトラしゃまもぉー最高なんれしゅよぉー…ヒィック!個人的にはですよぉ、美女なうえにぃ人妻でぇ!しかも経産婦!ポイントが高いんれしゅよぉ!ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ップゲェ〜。あとおっぱいでけぇ!さいこー!モンデナメタイ!ぱいじゅりしてもらいたい!もう竿ねぇーけど!ガッハッハッ!!」

 

「嬉しいわぁ。あら、ティアナさんのグラスが空いているわね…アトラさん、注いでやって下さいな」

 

「ええ、勿論です。ほらティアナさん、まだまだありますから、沢山飲んでくださいねー」

 

「へっへっへっ…いーココロガマエじゃねぇかぁ…ヒック!ゴクッ…ゴクッ…ぷはぁ!美女に囲まれて酒が飲めるとか!ここはセクハラ天国か!オラァン!テメーらのデカメロンもっと揉ませろや!」

 

「あんっ!ティアナさんったら、おませさんですね」

 

「ネイ様…聖女様ってお酒が入ると別人になるんですね」

 

「面白いお方よね。でも、これからもっと凄くなるわよ…」

 

「なに話してるんれしゅかぁ!ゴクッ…ゴクッ…わらし抜きでヒソヒソバナシはズルいれしゅ!ゴクッ…わらしも、まーぜーてー!ヒィック!………はれ?ここはどこ?わたしはだぁれ?あなたはザビエル?」

 

「壊れたわね」

 

「壊れましたね」

 

「壊れてなんかないもん!ティアナふつうだもん!ものたりねぇ!酒たんねぇよ!もっとのませろや!タルごと持って来いやぁ!」

 

「はいはい、まだまだありますから。大丈夫ですよぉー。アトラさん、悪いけど新しいの、栓を開けてくれる?」

 

「はい、どうぞ」

 

「おっ、気がきくやんアトラ!ヒック!おい、ネイさんよぉ…テメェの口移しで飲ませろやーオラー。ネイがおわったら、つぎアトラなー」

 

「ふふっ…ではお言葉に甘えて………」

 

 

ー翌朝ー

 

「オゲェ!ぎもぢわるい…げぇ…うぷっ…流石に飲み過ぎた…気が付いたらネイもアトラもいねぇし…うぅ…もう酒はやめよう…禁酒しよう……具体的には夕方まで禁酒しよう………うぐぅ……帰るか……もうヘロヘロだ…全身痛いし…酔って寝違えたかな…おぷっ!オッ…オロロロロロロロロロロ…」

 

王宮で目覚めた私は、誰の目にも触れる事なく王城を後にした。

醜態を隠しながら、トボトボと拠点に向かう姿は仲間に見られたく無いな。

でも走ると口から更にレインボーしちゃうからムリ。

 

「はぁ…はぁ…おぷっ!…ネイも…目を光らせてるし…やりにくいなぁ…ちょっとアトラ攻略は…へへっ…見送るかな……おっ…おっ…オゲェ!」

 

もう、飲酒は控えよう。

お酒、ダメ絶対。

下手打ったら、今までの作戦がお釈迦になってしまうからね。

 

酒は良く無い。

今度から飲む時は、もっと薄いお酒にしよう。

 

 

「ねぇ、アトラさん」

 

「何でしょう、ネイ様?」

 

「ティアナさん、もしかしてーーしてらっしゃる?」

 

「おそらく初期ですが…ーーしているかもしれませんね」

 

「ティアナさん、ーーの色が少し変わり始めているわ。何度か一緒に入浴しているから、分かるの」

 

「酸味の強いフルーツも、気にせず召し上がっていました」

 

「濃いお酒に、酸っぱいフルーツは付きものだけれど…そんなに食べる程じゃないわね」

 

「一体何処の誰が…」

 

「酔ったティアナさんに、それとなく探りを入れてみたんだけど…分からなかったわ。もしかしたら、ティアナさん自身、自覚が無いのかも…」

 

「そうですね、寧ろ処女と思っていらっしゃる」

 

「教会の聖女がーーとなると、世間は大騒ぎになるわね。ティアナさんをーーせた男が気になるけど、それよりも私達で彼女を支えてあげた方が良いのかもね」

 

「そうですね。私達、人生の先輩ですからね」

 

「ここ、王宮なら設備が整っているから、ーーする時も比較的安全ね」

 

「ネイ様、聖女様がーーなら、危険な行動を諌めるべきでは?」

 

「大丈夫よ、アトラさん。ティアナさん聖女だけど、実は枢機卿でもあるの。彼女の力は絶大よ。何の心配もないわ」

 

「まぁ、そうだったのですね。ならば尚更、ーーした枢機卿を助けるべきですね」

 

「ええ、今度会ったら色々アドバイスしましょう」

 

「ああ、それとネイ様…また”お茶会”の機会があれば、我が娘のエリナを呼んでもよろしいでしょうか?聖女様、エリナと肉体関係にあるようです」

 

「あら、それは初耳だわ」

 

「聖女様から、エリナと同じ臭いがしたもので…おそらく、間違いないかと」

 

「うふふっ…ティアナさん…うふふふっ……勿論、大歓迎ですわ。エリナさんも加えて、四人でしましょう♡」

 

 



・飲酒は20歳を過ぎてから

・妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児、乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります

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