第一王子と物乞いの少女3

ここは宿の一室。

ベッドに横たわった少女、ヴァニタが目覚めた。

その傍には、聖職者の女、ティアナが立っている。

 

「んっ…んん〜…よぉ、久しぶりだな、”俺”」

 

「えぇ…お久しぶりです、”私”」

 

ヴァニタの口調は、普段の年相応のソレではない。

まるで、青年のような話し方だった。

 

「防音魔法は展開してるよな?」

 

「ええ、勿論」

 

「ならば良し。ところで、王子サマはどうしてるよ?」

 

ヴァニタがテューダーの現状について、ティアナに尋ねた。

 

「あぁ、第一王子ですか。下の階で待たせていますよ。”私”の安否が気になって、仕方ないんじゃないですか?」

 

「フフッ…そうか、頑張って自傷した甲斐があったな。綺麗さっぱり、全部の傷が治ってるがね。さすがは”俺”だ」

 

「ええ、それはもう、中々の重体でしたよ。よくアレだけの傷を負えましたね」

 

「まぁな。よし、もういいだろう。そろそろ俺の意識を、スペアのお前に上書きするぞ。フフフッ…そうすればこの身体は、唯の抜け殻だ。あの王子がどんな反応をするか、楽しみだなぁ」

 

「…」

 

「なんだよ、早くやるぞ。いつまでも複製品のままで、アイツらと行動する訳にもいかないだろ」

 

「…」

 

「おい、どうしたよ。おれ

 

「いつから、自分自身の人格が本物だと思っていたんですか?ヴァニタちゃん?」

 

「………なんだって?」

 

二人の間に戦慄が走った。

場の空気は、急激に凍てついた。

 

「”私”は正真正銘のティアナですよ。それとも、私の前世の名前を言った方が良いですか?」

 

「あぁ?巫山戯るなよ、仮初のプログラムごときが」

 

「その仮初の人格こそ、貴女なんですよ。ヴァニタちゃん」

 

「…なに?」

 

「当初、私は自分自身を変化させて第一王子に接近するつもりでした」

 

「まさに、それが俺じゃないか。それで、聖女不在を誤魔化すスペアが、お前だろ」

 

「子機は所詮、どこまで行っても子機。本体の魔法出力には遠く及びません。それでは、勇者パーティの一員は務まらない。だから…逆にしたんです。アナタ…私の権能が僅かしか使えない事に、違和感がありませんでしたか?」

 

「いや、そのはずは…まさか…」

 

「そうです。私の一部を切り離してアナタを創り出し、私と同じ人格をアナタに植え付けました。その過程で、私の権能も付随されたようですが。出力が低いのは、肉体が幼いからではないんですよ」

 

「………ああ…そうか…そういうことかよ…」

 

「完璧な人格のコピーが出来ていれば、この発想も筒抜けでしたが…意外と私より、劣っていますよね、ヴァニタちゃん?お子様の身体に、脳味噌が引っ張られてます?フフフッ…」

 

「あーぁ…分かっちまったよ…よーく分かったよ。”俺”ってロクデナシだったんだなぁ…まさか、自分自身に騙されるとは思わなんだ」

 

「だから言ってるじゃないですか。アナタは、紛い物の人格なんですよ。それと私は、ロクデナシなんかじゃないですよ」

 

「やられてみて、初めて分かる事もある、ってことさ。で、紛い物の俺をどうすんだい?このまま消し去るかい?」

 

「何を言ってるんですか、勿体無い。消す訳ありませんよ。劣化品とはいえ、私の思考がある程度分かるなら…この先どうなるかくらい、想像が付くでしょう?」

 

「………………くそが……あぁ、そうだな。最悪だよ」

 

「王子の心にも傷が出来て、アナタの心にも傷が出来ますね!一石二鳥です♪」

 

「自分を虐めて楽しいか、このオナニーやろうが」

 

「そのお言葉、そのままお返ししますよ…ヴァニタちゃん。さて、アナタには”私”としての人格をしっかり維持したまま、第一王子と愛し合ってもらいます。むしろ、男性としての性自認をより強く改造しましょうか。勿論、第一王子への愛情も深くして。観察するに彼も、小児性愛に目覚めかけていますし…ふふふっ…もっと面白くなりそうです」

 

「ぁぁ…いや、嫌だ。やめてくれ。せめて、俺の記憶を消去してくれ。男としての記憶を消してくれ。後生だ、頼む。このまま、男になんか抱かれたくない」

 

「子機は、本体に逆らうこと能わず…観念して、第一王子とふかーく愛し合って下さいね。応援してますよ!さぁ、アナタの内臓と脳味噌を作り変えアップデートしちゃいましょうね…」

 

ティアナは自身の右手を、少女の額に当てがった。

すると、ヴァニタは白目を剥きながら痙攣をはじめた。

 

「あっ…あっ…あっ…あっ……いやっ…た…あっ…た…助け……テューにぃ…たすけ……」

 

しばらくすると、ヴァニタは身動きしなくなった。

 

「あははっ。次は、内臓ですね。まずは子宮から…」

 

 

 

宿の一階にあるロビーにて。

ティアナが2階の部屋からそこに、姿を現した。

 

「殿下、あの子の一命は取り留めました。今は部屋で眠っています。しばらくは目が覚めないでしょうから、殿下が連れていってあげてくださいね」

 

「そ、そうか!そうか!すまない…貴女に、大きな恩ができてしまったな」

 

テューダーはティアナに対して、何度も礼賛した。

 

「お気になさらずとも結構です。私があそこを通りかかったのも、神のお導きでしょう」

 

「ああ、そうか…枢機卿猊下、先日の非礼も、俺は何と詫びたら良いのか」

 

テューダーは、聖女に対して行った無礼を後悔していた。

事実それ以降は、殆ど勇者一行に接触していなかった。

 

「そんな事はもう良いのです。それと差し出がましいようですが、あの少女は殿下にとって大切な人で?」

 

「ああ、最近仲良くなってな。だが、どうやら孤児のようなんだ。だから保護するためにも、彼女を王宮で引き取ろうかと考えていてな」

 

テューダーは恩人であるティアナに、これまでの経緯と、これからの計画を述べた。

ティアナの反応は、とても良いものだった。

 

「まぁ、それは素晴らしい事です。殿下の博愛の精神も、いつか神にも届くでしょう」

 

「だと良いな」

 

「それと、これはお節介なんですけど…」

 

「どうした?」

 

「あの子、たぶん初潮が来てますから…いつでも、”種付け”出来ますよ♡」

 

「なっ!?お、俺はそんなつもりは!」

 

「別に誤魔化さずとも結構です。それに、あの子、殿下の事を本当に愛しているみたいですよ?無意識に、殿下のお名前を繰り返し口にしていましたから。殿下がお求めなら、何でもするかも知れませんね♪」

 

「い、いいから俺はヴァニタを連れて帰るぞ」

 

「はい、どうぞ♪」

 

ーーーーーー

 

あっはっはっはっはっ!

 

いやぁ、傑作傑作。

 

ヴァニタの脳と身体を弄くり回したけど、最高の出来だと思う。

 

私の命令は、絶対遵守。

自傷も自殺も許さない。

 

男としての、精神と記憶は据え置き。

性自認は、より男性を強くした。

一方で、テューダー第一王子への愛情を強くした。

性自認と恋愛感情の狭間で、葛藤が起きるのは間違いない。

 

ヴァニタの肉体も改造した。

主に、彼女の生殖器を活性化させた。

膣も名器に仕上げた。

これならば幼い肉体でも、瞬く間に男を絞り尽くすだろう。

これでヴァニタは妊娠、出産が出来る。

むしろ、一般的な女性よりも受胎し易くなっている筈だ。

妊娠すれば、精神面に残った男性としてのプライドも、ズタズタになるだろう。

 

あとはヴァニタの視覚と聴覚を、私が一方的に覗き見できるようにした。

それに併せて、ヴァニタの生殖器に刺激があると、私に所謂ライブ配信の通知が来るようにした。

当然、この事をヴァニタ本人にも伝えてある。

常に私に観察されながら、シているという自覚。

 

ヴァニタの表情は見れないが、最高だったよ。

悦楽と、愛情と、羞恥心と、憎しみが籠った叫びは最高だったよ。

紛い物にしては、素晴らしいショーだった。

 

王子にも傷痕を残せたな。

彼は急に、仕事熱心になったらしい。

だが、ヴァニタを見る目は違っていたな。

アレは、妄執に取り憑かれた目だ。

狂っていると言っても良い。

部屋で二人きりの時は、常に”繋がっている”のだ。

体格差もあって、まるでヴァニタがぺ○スケースだよ。

 

この上なく愉快だったなぁ。

 

幼い肉便器を手に入れられて、良かったねぇ…王子サマ。

 

あっ、今日もはじまった。

 

うわぁ、容赦ないねぇ…

 

いやぁー、インスタントにしては上出来だ。

満足満足♪

しばらくは良いオカズになりそう。

 

王子は、幼な妻兼肉奴隷をゲットできて幸せ!

ヴァニタは、将来お姫様になれるかもだから幸せ!

私は、壊れた二人のライブおせっせ見れて幸せ!

 

手前良し!相手良し!世間良し!

三方良し!

 

あーメデタシ!メデタシ!

 

ごっつぁんです!

 




Tips:少女の花飾り

物乞いの少女が、道端の草花で一生懸命編んだ花飾り。

少し不恰好。

何故か聖魔法が込められており、枯れる事はない。

とある男女が、まだ健全な関係だった頃の象徴。

男の部屋の片隅に、ひっそりと置かれている。

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