王都への道中
街に戻って一泊した私達は、今度こそ予定通り王都へ向かう事にした。
ちなみに、拠点の街から王都までの道のりは結構長い。
目的地に到着するまでは、数日の移動は覚悟しなくてはならないだろう。
正味のところ、超強化人間の私と魔族のデカパイ女サティアが全力で歩けば、半日足らずで王都に行けなくもない。
魔王城から、徒歩で砦まで戻って来たのだから、出来て当然だ。
しかし有体に言うと、それをすると他のメンバーが付いて来れないのだ、私達2人に。
移動中アルト君は、私とサティアに先行して王都へ向かっても良い、と言ってくれた。
でもそれは違う。
仲間との道行を楽しむ事も、旅の醍醐味だろう。
新幹線や、飛行機を利用し最速で目的地へ向かう事が全てではない。
鈍行の列車で、のんびりと旅をするのも悪くはないだろう。
ケツは痛くなるけど。
それ故だろうか、道すがらその事について、アルト君から尋ねられた。
確かに、一朝一夕で魔王城から戻った移動方法が気になっても、何らおかしくはない。
“超高速!和平交渉”をしてきたのだから。
「ちなみに、ティアナ…その、魔王の城から、どうやって砦まで戻って来たんだ?さすがに魔族の本拠地が、砦の近くな訳ないだろう?」
「チャリ…ん゛んっ、徒歩で来ました。」
「………そうか」
彼はそれ以上、何も聞いてくれなかった。
正直に話したのに…
心なしか呆れられている気もするが、考え過ぎだろう。
ちなみに、私の超高速徒歩のスタイルは、それは見事なものだ。
ジッサイの方法はこうだ。
上半身がブレないようにする。
胸を張り、両腕を前に組む。
前傾姿勢になる。
足を、クッソ高速で動かす。
我ながらその姿は、チョーかっこいいと思う。
出来ればサティアにも、同じ事をして欲しかったが。
私の、超高速徒歩スタイルを見た彼女は…
「何だ、その走りは…気色悪い」
と、とても気味悪がっていた。
何故だ、チョーかっこいいのに。
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「よし、今日はこの辺りで野営するか。次の宿場町まで、まだ距離もあるしな」
「では、天幕を設営いたしましょう」
私は何処からともなくテントを取り出し、瞬く間に展開した。
私が用意したテントは三つ、全て二人用だ。
久々の野営で、私は内心盛り上がっている。
この世界において、私のキャンプは楽チンだ。
色々と制約のあるアイテム欄は裏ワザにより、何でもアリの状態。
大概の道具は、何でも入る。
所持数制限も無い。
全ての物は、大体入れたい放題だ。
四次元○ケット最高。
「ホント、ティアナって相変わらずおかしいわね…何処にそんな大荷物仕舞ってるのよ…」
アーシャが呆れ顔で、私を褒める。
彼女のツンデレも大概だ。
ちなみに幻想奇譚エリュシオンでは某有名RPG同様、アイテム欄の名前を変える事ができる。
私は、アイテム欄の名前を”質屋”にして遊んでいた事もあった。
当然そこに質入れしても、所持金は増えない。
ちなみに、下ネタの入力はNGだから注意しておくように。
私は前生から一貫して清純ゆえ、そんなお下品な事は絶対にしないが。
「和平の使者には悪いが、次の宿場町まで距離がある。我慢してくれ」
アルト君が、一応サティアを気遣って声を掛けた。
「いや、気遣い無用。久しいが、私も野営は慣れている」
サティアは私達が野営をする事を、全く気にする素振りもない。
「そうか、悪いな。助かる」
サティアを交えた夕食は、意外と悪くなかった。
つい先日まで、殺し合いをしていた関係である。
それが今ではどうだろう、同じ釜のメシを食っている。
事情を知らない者が見れば、異様な光景として映るに違いないだろう。
ちなみに、今日の献立は回鍋肉だ。
私が作った。
ファンタジーな世界で、聖女が振る中華鍋も悪くはない。
あと意外にも、回鍋肉はサティアにも好評だった。
「魔族には無い味付けだが、悪くない。キサマにも、長所はあったんだな」
ちょっとだけ嬉しくなった。
さて、テントは張ってある。
夕食も頂いた。
あとは以前習得した結界魔法を展開して、寝るだけ。
つまり、これから始まるのは、お楽しみの”部屋割り”を決めるイベントだ。
「サティアさん、一緒の天幕で泊まりましょう!ホラ、こないだ魔王さんから、私に付くよう、言われましたよね!」
私はサティアを誘った。
魔王からの指示を、この女が違える筈がなかろう。
寝惚けたフリをして、そのムッチムチなデカパイを堪能してやる。
私は巨乳に飢えているんだ。
自分のデカ乳でも自家発電出来なくはないが、やはり美女の豊乳に包まれてナンボだろう。
残念ながら、エリナ(普)やアーシャ(貧)には出来ない真似だ。
「嫌だ!お前と隣合わせで、誰が寝るか!この変態クソ聖女!お前と同じ天幕で寝るくらいなら、私は外で寝る!」
何だか、いつの間に凄く嫌われていないだろうか。
心当たりはない。
私は常に、完璧な聖女ムーヴをしている筈。
「えぇー…良い機会ですから、友誼を深めましょうよ。ティアナとサティア、何だか名前も似ていませんか?良いコンビ名、作れますよ?」
「お前と組むなど、死んでもお断りだ!」
「むぅ…ケチんぼ…」
頬を膨らませて不満を訴えたが、けんもほろろに断られて私は傷心した。
結局、テントの使用者振り分けは…
A アルト君
B サティア
C ティアナ アーシャ エリナ
となった。
何故、私がいるテントだけ三人なんだ。
いや、唯一の男子アルト君が一人なのは分かる。
アーシャかエリナのどっちかは、サティアと同じくテントで寝れ。
この期に及んで、シャイな空気感出さんでもええわ。
このテントは、二人用だぞ。
三人入れば狭苦しいことこの上なし。
しかも、アーシャとエリナの匂いが充満してムラムラがムラってくる。
正直、彼女達に手を出してイチャコラしたい。
しかし、そんな事をすれば、お互いの肉体関係がバレてしまう。
だから、何も出来ない。
据え膳とは、まさにこの事。
一瞬、魔が刺そうとして防音魔法を張ったが、えっちするのはやめた。
誰でも良い、禁断の三人ピーという一線を超えなかった私を褒めてくれ。
ムラムラして寝られない私は、仕方なく秘蔵の酒コレクションを、アイテム欄から出した。
二、三杯引っ掛けた。
アルコールが心地よい眠気を誘い、私はあっという間に寝入る事ができた。
お酒は偉大。
ちなみに、防音魔法の解除はメンドーだから、効果時間が切れるまで、そのまま放置しておいた。
放置しておけば効果時間も長続きしないから、防音魔法はすぐに解除されるだろう。
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目覚めた時には、テントの私達はぐちゃぐちゃに手足が絡まっていた。
というか、他人の足の匂いを嗅ぎながら起きるってどんな状況よ。
目覚めたら、エリナの素足が私の顔に引っ付いてたぞ。
しかも、少しにおう。
あと何か、身体の所々がベトついていた。
相当な根汗をかいたようだ。
コイツらの寝相、こんなに悪かったか?
私だけローブはだけて、おっぱいモロ出しやん。
なんか寒いと思ったわ。
それにしても、コイツら寝苦しい筈なのに。
よくもまぁ、スヤスヤ寝られているものだ。
何故か、プリプリとした潤った肌で、満足げな顔をしているし。
いつでも何処でも、満足に睡眠できるというのは、羨ましい限りだ。
「はいはい…毎度お馴染み、浄化魔法”クリーン”」
さて、朝のキャンプめしでも作るかなぁ
TIPs 「ティアナの天幕」
ティアナが何処からか入手してきた、二人用のテント。
天井まで、ゆとりのある空間。
2ポールで簡単設営、簡単撤収。
防水加工された、通気性のある未知の布地で出来ている。
出入り口の布を閉めれば、虫一匹すら入れない密閉性。
天井部には、網状の小物入れや、ランタン等を吊るす為のS字フックがある。
どの商会でも流通していない、謎の品物。
定員までの利用であれば、快適に過ごせる事、間違いなし。
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