ティアナの自由な1日
そうだ、風俗に行こう
今日は久々に街で、自由な行動が出来る日だ。
アルト君は冒険者ギルドで、依頼達成の報告と報酬の受け取り。
アーシャは市場で、魔道具の買い出し。
エリナは役場で、王国へ活動報告。
聖職者の私は、街の教会でお祈り。
お祈りと言っても、秒で終わらせたが。
そして1日の残りをフリーなった今、ふとそう思い付いたのだ。
風俗に行きたい、と。
いや、性欲は発散できている。
アーシャとエリナがいるから。
極上の美人二人を、交互に抱くのは至高の極みだ。
それでも、やはり専門家にお願いしたくなる事もある。
私は攻められたい!
前世で受けた、マットプレイのような全身サービスを受けたいんだ!
正直言って、ついこの間までアーシャとエリナはえっちをした事が無い。
仕方ないが、テクニックがまだまだ覚束ないのだ。
私はマグロが良いのだ!
そのまま、つま先から頭まで全身くまなく感じさせて欲しい!
今の二人には到底不可能だ。
だから風俗にいく。
皆んなバラバラに行動してるし、バレへんやろ、大丈夫大丈夫!
ーーーーーー
娼館に入るやいなや、私は客とは思えないような目線を店員から向けられた。
そして、店の奥から男性がやって来た。
「ここは教会でも孤児院でもございやせん、娼館ですぜ?道に迷ったんならお送りしますぜ、シスター…教会の聖職者様が、こんな娼館に何のご用で?ここを糾弾しようってんなら覚悟して下せぇ、俺らや嬢達も生活が掛かってるんでさぁ」
頭髪も薄くなりつつある、オーナーらしき小太りの中年男性が怪訝な顔をして話しかけてきた。
「何を仰っておいでで?私は客として、その嬢を買いに来たのです。勿論、お金も持っています」
「……えっ?えぇ!?はぁー、こいつぁ驚きだ。男の聖職者は来たこともあるが、こんなの初めてでさぁ。しかもお客さん、とんでもなく別嬪さんじゃありやせんか」
そりゃ驚くよな、聖職者でしかも女が客として来たんだから。
でもちゃんと金は払うぞ。
「そんな事はどうでも良いので、早く案内して下さい」
「へい、分かりやした」
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個室に案内された私を待っていたのは、それは可愛らしい女の子だった。
「ユノって言います、よろしくお願いします。女性でしかも、こんな美人さん相手なんて、私初めてで緊張します」
「私はティアナと言います。どうぞ、よろしくね?」
おや、このお嬢さん…性病持ってるな。
まだ症状は悪化してないけど。
「ふむ…………」
私は自分の下顎に、指を添えながら思案する。
「な、何かお気に召さない事でも?」
「いえ、ユノさん。貴女、性病を患っていますね」
「…え?」
「心当たりはありませんか?妙に下腹部が痒くなってきたりとか、出来物が増えたとか」
「あっ…あの…その…あ、あると思います…でも私、本当に病気なんですか?今までは、自然とおさまってたのに…今回はなかなか治らないんですよ」
これは今のうちに治しておかないと、感染が広がるパティーンだ。
防疫の意義もあるし、治療するに越したことはない。
「放置しておくと、お仕事出来なくなりますよ?私こう見えても治療のプロなんです。見ればどんな病理か状態異常も分かる程度には。ですが…そうですか、ここで会ったのも何かの縁です、治療しちゃいましょうか。モロチン、タダですよ?お互い気持ち良くなるついでに♡」
「えぇ!?良いんですか?治療をするとなると、私達の稼ぎじゃとても払えない負担なのに!」
「もしそう思うなら、そうですね…治癒魔法が済んだら、ユノさんの最高のサービスをお願いします」
「も、勿論、こちらこそ!こんな美人の女性相手は新しい体験です!絶対に満足してもらいますからね!」
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「店長!店長!さっきの美人なお客様!すごいですよ!」
「なんだ、そりゃ凄ぇだろうよ。俺だってあんな上物、今の今まで見た事がねぇ。俺が金払って抱きてぇくらいだ」
「あのお客様、私の病気を治してくれたんですよ!私病気持ってたみたいで、何となく自覚はあったんですけど、治療費も無いし周りに言い出せなくて…それで!」
「なにぃ!?オイ!幾ら治療費寄越せって言われたんだ!まさか料金踏み倒したとかじゃねぇだろうな!?」
「違うんです!料金はしっかり払ってくれました!しかも色を付けて下さって!その上で病気を治療魔法で治してくれたんです!」
「…はぁ?じゃあ、なんだ…あの美人な聖職者様は金だけ払って嬢の病気を治療して帰ったって事か!?なんだそりゃ!?まるで聖人じゃねぇか!?」
「店長!勇者パーティの聖女ティアナって聞いたことあります?」
「あん?そのくらい俺でも知ってらぁ」
「その人ですよ!あのお客様!!間違いありません!あっという間に私の悪い所、全部治っちゃったんですから!」
「オ、オイ…冗談じゃなかったのかぃ…」
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その後、定期的にティアナは娼館に出入りする。
従業員の煩っている病気を見つけては治療していき、報酬を請求するどころか金を置いていく始末。
オーナーは勘違いしていた。
ティアナがしっかりと、従業員から性的サービスを受けているとは思わなかった。
ただ慈愛の心を以って治療するに飽き足らず、金銭すらも彼女達に施したと考えたのだ。
まさに、聖女と呼ばれる人間だと、学のないと自覚するオーナーもただ只管感涙した。
当人のティアナは、最高の性感サービスを受けて大満足で帰って行ったが。
故に、ティアナは娼館でも大歓待だ。
オーナーはティアナが来るたびに、奉仕と慈愛の塊だと感嘆した。
特に、オーナーの薄毛を治してくれた時はティアナに対して一生を掛けても返せない恩義を感じた。
(当の本人は気まぐれで魔法を掛けただけなのだが…)
オーナーの男は、ひたすらに感謝した。
神は自分たちを見捨てなかったのだと。
オーナーをはじめ娼館の利害関係者は、例に漏れず裏社会の人間である。
しかし、裏社会の人間は面子や恩義を重視する。
表社会から見捨てられたと思っていた彼らは、ティアナに深く恩義を感じ積極的に教会へ礼拝と布施をするようになった。
教会の信者に強面な人間が増えたことに対して、街の司祭は驚きを隠せなかったが、懐深く彼らを受け入れた。
なお娼館のオーナーは、この街でも指折りの実力者である。
特にアンダーグランドを通じたコネクションには、目を見張るものがあった。
飄々とした佇まいからは想像が出来まいが、敵に回したらその街では生きてはいけない程度には。
娼館でアクシデントがあれば、自ら表に出て従業員を守る事もある。
人望の厚い人間であった。
勇者パーティは、この街で不思議と良いサービスを受けるようになった。
宿屋は良い部屋を、いつもより安く貸してくれるようになった。
店で買い物をすれば、割り引いてくれたりオマケをくれた。
食事をすれば、サービスで何品も御馳走が出された。
酒を飲んでいれば他の客から、よく奢られた。
特に街での、ティアナの人気は凄まじかった。
パーティで道を歩いていれば、よく声を掛けられる。
ガタイの良い強面の男共が絡んで来たと思いアルトが身構えれば、ティアナに対して礼讃の言葉を述べて去っていくのみ。
アルト達は他の街や村と比べても、この街で良い扱いを受けた。
故に、暫くの間この街を拠点にする事を決めた。
アルトはその原因を、この後知ることとなる。
ーーーーーー
ある日ティアナが、一人きりで教会に行き礼拝をしたいと言った。
アルトを含む他2人は了承して、ティアナを送り出した。
この街に来てから、ティアナはしばしば独りで行動するようになった。
気になった彼等はこっそりと、三人でティアナの尾行をした。
確かにティアナは街の教会で礼拝をしたが、それはものの数分で終わりを告げ彼女は教会から出てきた。
これから彼女は何をするんだろう…アルトは少しだけ心配になってきた。
ティアナが向かったのは、意外にも花街だった。
聖職者がそんな所に、いったい何の要件があるのだろうか?
そのままティアナを追跡していくと、ある建物に堂々と入っていった。
娼館である。
アルトは卒倒しかけた。
しかしアーシャとエリナに支えられて、辛うじて立つことが出来た。
彼の胸中は例えようのない、不穏なざわめきに満たされていた。
数刻の経過が、アルトにとっては無限の時間に思えた。
漸く娼館から出てきたティアナは、それは満足した面持ちで花街を去って行った。
彼等は居ても立っても居られず、そのまま娼館を訪れた。
「すまない、支配人はいるか?」
「へぇ…私がこの娼館のオーナーでさぁ。んで、女連れのオニイさん、ウチに何のご用件でぇ?」
中肉中背だが、頭髪が豊かな男性が出てきた。
「おれの名前はアルトだ。ティアナと言う聖職者の女性とパーティを組んでいる。その彼女がここに出入りしている所を見たんだが
…」
「あ、アンタさんが勇者様ですかい!こいつぁ失礼しました!いつも聖女様には大変お世話になっております!」
「ん?どういう事だ?」
「へぃ、聖女様は時たまここに来てくれるんでさぁ。んで、店にいる病気持ちの従業員を、見返り無しで治療していただいてやす。その上、嬢に施しをしてくれるんでさぁ。あんな聖人、私ぁ見た事ございやせん!」
「なっ!そういう事だったのか!さすがはティアナ…」
「そういう男の私も、聖女様に病気を治していただいて、何度感謝しても足りやせん。さすが勇者様ご一行の一員でさぁ。もうこの街で、勇者様に無礼をしようって輩はおりやせん。私達ぁもう、社会に見捨てられたと思ってたんですがね…神様は見守ってくださったぁ訳です」
「そうか…そうだったのか…少しでも彼女を疑った俺が愚かだった!すまない…すまない、ティアナ!」
「聖女様は、裏社会に生きる私らを見捨てなかった。こんな私らでもね、恩義っつうのは何よりも大事にするもんでさぁ。んでね、どこの街でもそうですがね、何かしら表と裏は繋がってるモンでさぁ。だから困った事があったら、遠慮なく言って下せぇ、勇者さま。この街の人間の殆どが勇者様のお味方なんですからね」
このやり取りの間、アーシャとエリナはひたすら俯いて黙っていた。
女二人が顔を真っ赤にしていたのを、アルトを含め三人それぞれ気付くことはなかった。
その頃、ティアナは宿屋のベッドで満足げに、鼻提灯を出しながら爆睡していた。
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