第2話 眞栄田岬

Aは朝6時に迎えに行くと言った。

随分と早いなぁと思ったが、潮の満ち引きも関係あるのかなと考えていた。

そして日曜日当日。

私はAがショップの人と車で迎えに来るものだと思っていた…


ピッ、ピピ、ピピピ〜!


甲高い(かんだかい)音が鳴り響いた。

部屋の窓から外を覗く。


A 『おーい!行くぞ!早く来い〜!』


ま、まさかの原付に乗ったAだった。


ピッ、ピピ


私 『今行くから、クラクション辞めてくれ!近所迷惑だよ。』


私 『まさか、原チャでいかないよね?』


A 『他に何があるんだよ。兎に角早く乗れって、時間ないよ。』


私 『どこまで行くの?』


A 『眞栄田岬だよ。天気も良いし、バイク気持ち良いよ〜!』


眞栄田岬は那覇から車でも約40分以上かかる場所だ。

原付、ニケツとなると恐らく2時間近くかかるし、警察に捕まるリスクもある。


私 『ヤバいって。原チャニケツ遠いし捕まるぞ!』


A 『大丈夫、大丈夫!裏道知ってるし、万が一捕まってもお前は大丈夫だよ。』


私 『でも…ヤバいよ…』


A 『つべこべ言わず、乗れって!』


ピッ、ピピ


私 『わかったから、クラクション‼️』


半分強引に原チャで行くことになった。


何事もなく、2時間かけて無事に眞栄田岬に着いた。 こんなに長い時間のニケツは初めてだった。


岬につくとワンボックスカーが2〜3台止まっていた。

みなダイビングショップの車だ。

空気タンクを出したり、ウエットスーツを着たり準備をしていた。


初めて見るダイビングの機材や、レクチャーしている人達を夢中になって見ていた。


私 『あのボンベでどの位の時間潜れるの?』


A 『深さにもよるし、タンクの容量にもよるけど、10メーター以内なら1時間半くらいかな。』


私 『流石!詳しいな。』


そして、ダイビング装備を着けた人達か次々と岬の下に降りて行く。

私は、岬の突端に行き下の様子を見る。


下に降りた人達が、インストラクターの合図で次々と海中に消えて行った。


私 『すげ〜。俺も潜ってみたいなぁ。』


A 『オープンウォーターが、3〜4日の講習で、3〜5万位だよ。』


オープンウォーターとは、ダイビングで最初に取る資格だ。

経験値と潜った回数によって上の資格を取ることができる。


オープンウォーター

アドバンス

ダイブマスター

インストラクター


基本はこんな感じでランク付けされているが、各団体によってはレスキュー、アシスタントインストラクター、などなど他の資格を取らないとランクが上がらなかったりする。


私 『値段高くて俺には無理だなぁ…』


私 『ところでお前のショップの人は?』


気がつくと岬には私とA以外誰もいなかった。


A 『今日は講習ないんだよ。』


私 『どう言うこと?』


A 『見ろよ!ほら!誰もいないよ。車3台、人が20人くらいだから、少なくても10万以上あるぜ!』


何と、Aは今から車上荒らしをすると言う。

私は怒った!

それは絶対ダメだと、俺はやらないと…

すると奴は言った。


A 『お前やらなくてもいいけど、同罪だよ。俺が盗んで、俺のバイクで帰るんだから』


脅してきた。俺はさらに怒った!


私 『もう、いい!お前とは縁を切る!俺は歩いてでも帰る!』


そう言い放ち、歩き出す。


A 『勝手にしろ!』


とは言うものの、近くにバス停はない。

この場所は車で来るような場所だからだ。

1時間ほど歩けばバス停があるはずと歩き続けた。


私 『奴は、エスカレートしている。その内空き巣でもやるに違いない。怖い。』


30分程歩いただろうか。炎天下の中歩いたせいで、喉も乾くし、疲れたので木陰で休む事にした。するとブンブンとバイクの音が聞こえてきた…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る