組織を裏切った暗殺者の暗躍

水瀬 若葉

1話 誘拐

「お母さん、絶対、ぜーったい戻ってくるよね?」


「はいはい、戻ってくる戻ってくる、ひかるこそ知らない人について言っちゃダメだよ?と言っても目を離すのは20分弱だし、待ってられるよね..」


「うん!お母さん!」


その5分後黒塗りの車がきた


「わぁ、ブーブだー!おじさん達だーれ?」


無言で黒尽くめの男達は手慣れた手つきで睡眠薬を吸わせ、眠らせる。



         §

「やだよ!ここから出してよ!うぅ、、」


「静かにしろ!あと一週間まて、」


振動し続ける居場所でご飯とも言えないご飯を与えられる。


「うぅ..おぇ、」


(まずぃ、おぇ、でも食べなきゃ、)


食べなきゃ死ぬ、本能的に理解した。これを食べなければ、これを喰らわなければ飢えて死ぬ。臭い、苦い、気持ち悪い、それらは総合して不味いと言う感情に集約される。身体はこの食べ物を拒絶している。喉を通る前にこれは明らかに毒だと、食べたらいけないものだと。喉の奥をつっかえてくる。煜はそれを押し殺して飲み込む。死なないために。



         §

(あれから三日か、おぇ、)


あれから3日たった。煜は3回もの日が昇る瞬間を目撃したのだ。


(まずい、昨日食べた物の味がまだ消えないおぇ、はいたら..殴られる)


あれから煜は3日間同じ物同じ水を飲んでいる。ただしそれらを吐くと決まっておじさんが手に持っている木の棒で叩いてくる。“吐くな”とそして、殴られた後にはもう一度あの食事をすると言う地獄であった。だから煜は堪える、吐かないように戻さないように、誘拐されてから煜の口内、身体、喉は常に悲鳴や不快感を訴えてきている。これ以上飲むなと、これ以上叩くなと、そんなのお構いなしにおじさん達は毎日のようにあの食べものを食べさせてくる。


「はぁ、」


3日目になると、煜から目の光は無くなっていた。ただ呆然と揺らめく道路と日を眺めるだけだ。




あれから一日後も一日後も一日後もすべて同じだった。最終日になるとき。


「おい、これを飲め!」


丸い球体だった、煜の喉を通るか通らないかぐらいのそんなぎりぎりの大きさを攻めたような球体。煜は仕方なく飲む。


「っつ⁉︎」


(あぁ、苦しい、熱い、痛い、気持ち悪い)


ありとあらゆる不快感が襲ってくる、喉の息苦しさや熱、めまい、幻痛、吐き気、幻覚それらは10分ほど煜を苦しめ、煜の意識を闇に葬った。


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