メモ

私は一人暮らしを始めたばかりだった。


新しいアパートは静かで、住民も親切だった。


特に隣に住む中年の男性、田中さんはよく声をかけてくれた。


ある日、僕が仕事から帰ると、部屋のドアの前に紙袋が置かれていた。


中にはおいしそうな手作りのお菓子が入っていた。


紙袋には


「時間が無く直接渡せませんが、お近づきの印にどうぞ」


と書かれたメモが付いていた。


私は感謝の気持ちを持ちながらも、親切にされるのは珍しいことだったから、すこし驚いた。


翌日、田中さんに直接お菓子を渡しに行くと、彼はにこやかに「わざわざお菓子をありがとうございます!いつでも何かあれば言って下さいね?」と言った。


私はその言葉に少し安心した。




数週間が過ぎ、田中さんとは朝よく話すようになった。


彼はとても親切で、私の話をよく聞いてくれた。



私の生活にも少しずつ慣れてきたが、ある日、仕事から帰ると部屋の中が少し乱れていることに気づいた。


ドアも窓も閉まっているのに、不思議なことだった。


しかし、その日は疲れていたので、あまり気にせずに眠ることにした。


翌朝、ドアノブにまた紙袋が置かれていた。


中にはおいしそうなクッキーと、「多く買ってしまったので良ければ。疲れていたようなので元気が出るように。」と書かれたメモが入っていた。


私は田中さんの親切に感謝した。


その後も朝になると、メモと一緒にお菓子が入った紙袋がドアノブに掛けられていた。


部屋の中も少しずつ乱れることが増えていった。


物が勝手に移動していたり、酷い時は食べ物が減っていたりしたのだ。


ある晩、仕事から帰ると、部屋の中が異常に散らかっていた。


私は怖くなり、田中さんに相談することにした。彼は心配そうに私の話を聞き、


「それは怖い。嫌でなければ、僕が今晩は一緒にいてあげるよ?」と。


その夜、田中さんが僕の部屋に来て、一緒に過ごすことになった。


彼は親切にも掃除を手伝ってくれ、その後、一緒にテレビを見たり、ゲームをしたりしリラックスした夜を過ごした。


私は田中さんの存在に心強くあり、少し安心して眠りについた。


しかし、真夜中にふと目を覚ますと、田中さんが何かを探しているのを見た。


私は驚いて声をかけた。


「田中さん、何してるの?」


田中さんは少し驚いた様子で振り返り


「ごめんね、何かドアから音がしたから確認してたんだ。けど何も居なかったよ。」


私はその言葉に安心した。


翌日、仕事から帰ると、また紙袋が置かれていた。中にはクッキーとともにメモがあった。


「一緒に居た男は誰だ」

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