第91話 鉄砲の修練の場にて、加藤さん頑張って!

ども、坊丸です。

信長伯父さんに鉄砲の修練の連絡が来ましたので、今回は早合の準備をして参加です。焼酎と投扇興も献上する予定だしね。


そんなこんなで、清須城のそば、五条川の河原に設けられた鉄砲の試射、練習会場に到着です。


河原に張られた陣幕のなかに、入ると既に信長伯父さんが床几に座りながら今日使うと思われる鉄砲を自身の手でチェックしていました。

こちらに気が付くと、鉄砲を小姓の人に渡してスッと立ち上がり、声をかけてきました。




「勝家、坊丸、それと、中村文荷斎だったな。今日はよく来た。佐脇、立たせているわけにもいかん、勝家らに床几をだせ」




くっ、鉄砲をもった加藤さんもいるのに、加藤さんは無視ですか。


この感じだと、加藤さんは、火縄銃の運搬を担っている柴田家の家人だと思われている様子。


そして、やはり、床几は三名分。

加藤さんの分も要求しようとして、加藤さんのほうを一瞥すると、軽く微笑んだのち首を振っています。

加藤さんは何も言わずに、火縄銃と早合や火薬、鉄砲の弾など入れた加藤さんと相談してつくった携帯用の小さい鞄をもって、自分の斜め後ろに座りました。


加藤さんのほうに首をひねって小声で、加藤さんに、試射をやる役なんだから、床几をだしてもらいますかと尋ねたら、今の自分は織田家とは関係ない町民なのだから、そこまでしてもらうわけにはいかないと返されました。

う~ん、今日の加藤さんは、鉄砲の試射、早合の成果確認の主役と言ってもいいのに、なんか納得いかない。


「で、坊丸。一巴が言っておった、早合とやら、どうなった?

鉄砲の修練の連絡入れたが、前回は参加せずに、今回は参加ということなのだから、なにか形になったのだろう?

何かしらの成果を見せてもらえるのだろうな?」


「はっ、伯父上。早合についてですが、それなりの形にできましたので、此度は披露させていただきます」


「で、あるか。儂の鉄砲の修練、試射をした後に見せてもらう。5発ほど撃つので、その間に準備いたせ」


そういうと、信長伯父さんは、小姓の長谷川橋介殿から火縄に点火済みの火縄銃を受け取り、陣幕より歩み出て、河原に並べられた腹当を装備させた巻き藁人形に向かって、照準を合わせてる様子。


「パァァァァァァン」


前回の時も思ったんですが、やっぱり、信長伯父さんはあまりゆっくり狙わずに、パッとみて照準をつけたら、すぐに引金を引くスタイルの様子。

多分、織田信長のことだから、じっくり照準を合わせて、納得したところで撃つっていうような感じではなく、戦場にいることをイメージして、射程内に入ったら、見敵必殺?みたいな感じで射撃しているんじゃなかろうか?と思うわけです。


「次!」


一発撃つとすぐに次の火縄銃を要求する信長伯父さん。

そして、撃った後の火縄銃を回収してすぐに撃てる状態の火縄銃を渡す小姓の長谷川殿。

当たった状態を報告する佐脇殿が十分離れたことを確認すると、すぐに火縄銃を構えて手早く撃つ信長伯父さん。うん、前回と同じ光景。


この調子だと、5発なんてあっという間な気がしたので、加藤さんに声をかけて、準備を進めてもらいましょう。


そうこうするうちに、信長伯父さんが五発の試射を終えて、戻ってきました。

加藤さんの準備の方が気になってあまりよく見てませんでしたが、機嫌が良さそうなので多分、命中率高め立ったんでしょう。


「うむ、今日は調子が良いな。で、早合の試射の準備はどうだ」


「はっ、準備整いましてございます。まずは、普通に二発ほど撃った後、早合で数発撃つ予定でございます」


「で、あるか。して、誰が撃つのじゃ。勝家か?中村か?それとも…まさかと思うが、坊丸、お前が撃つのか?」


撃ち終わった火縄銃を小姓の岩室殿に渡しつつ、片手は顎の辺りを撫でながら、少しニヤっとして言う、信長伯父さん。


「はい、こちらに控える加藤殿に撃っていただく所存です」


「ん、誰だ、そのものは?勝家のところの家人ではないのか?」


「殿、恐れながら、私めが説明させていただきます」


お、文荷斎さん、代わりに説明してくれるのか、じゃあ、ここはおとなしくしておこうっと。


「こちらに控えるは、加藤正右衛門清忠と言う者にございます。

愛知郡中村の者にて、我が幼馴染みにございます。

以前は、殿の義理の父上にあらせられる斎藤道三様にお仕えしておりました。

かの長良川の戦いにて、足などを負傷した為、今は、生家のある中村に戻り、鍛冶を生業にしております。

坊丸様が、農具や鉄製の道具を作り出すことがある為に、それがしが坊丸様にお引き合わせいたしました。

こたびはその縁にて火縄銃の試射の役をお願いしております」


さすが、文荷斎さん、立て板に水で、加藤さんのことを信長伯父さんに紹介してくれました。

自分じゃここまで流暢に紹介できなかったよ、多分。


「文荷斎殿より紹介にあずかりました、加藤正右衛門清忠でございます。本日は早合の試射の儀、宜しくお願い申し上げます」


そういうと、加藤さんは片膝をついて、頭を下げます。

さすがは、元武士、ここら辺の礼節はキチンとしているから安心です。


それと、加藤さんの諱って清忠って言うのか。

文荷斎さんは、最初の頃、正右衛門って呼び掛けてたから、加藤正右衛門が正式名称だと思っていたよ。


まぁ、以前は武士として仕えていたんだもん、普通に諱を持ってるよね。

今まで気にもしなくて、ごめんなさいね、加藤正右衛門清忠さん。


「で、あるか。では、加藤とやら、坊丸に預けた火縄銃にて、試射をしてみせい」


信長伯父さんの指示が出たから、頑張ってもらいますか、主に加藤さんに。


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