第88話 今一度、投扇興的な…。

ども、坊丸です。


酒粕から粕取り焼酎を作って、さらにもう一回蒸留したことで、消毒用エタノールを作り出すことに成功しましたよ。これで、感染症の対策ができるようになりました!

消毒用エタノールのつもりで作ったものを割らずに飲用にした人たちもいたけどね。

って、なんでしたっけ?ああ、そうそう、福島さんに酒飲みながら作ってもらったやつですね!


「えぇっと、福島さんに作ってもらった、この木工品ですね。これは、帰蝶様やお市の方様に頼まれた品ですね。ちょっとした遊びに使う道具ですよ」


「坊丸様、帰蝶様やお市の方様に頼まれた、ですと!」


ああ、そうか、文荷斎さんは、橋本一巴さんの墓参りの時は一緒だったけど、その翌日に信長伯父さんに会いに行った時は一緒じゃないもんね。

火傷したり、奇妙丸様と追いかけっこしたり、投扇興的なものを捻りだしたり、大変だったんですよ。


「橋本一巴さんの形見を伯父上に見せに行ったあと、奇妙丸様と遊ぶことになったんですけど、その時に、帰蝶様や吉乃様、お犬の方様、お市の方様とも、ちょっと、ご縁が」


まぁ、火傷の話や奇妙丸様に追いかけっこで捕まって大声出したあげく、大変なことになりかけた話はカットしておきます。自分の名誉のために。


「信長様の奥方様たちと妹様方ですよ!ちょっと、じゃないとおもいますが。いやぁ~、まぁ、坊丸様ですから、仕方ないですな」


文荷斎さんが驚いたり、呆れたり、ため息をついたりと、大変なことになっておられる。

しかし、加藤さんだけでなく文荷斎さんにも『坊丸様ですから』とか言われているぞ。何故だ?解せぬ。


「それはさておき、ちなみに、あの木の細工物はどう使うのです?」


加藤さん、話を元に戻してくれてありがとう!

う~ん、でも、説明すると面倒くさいなぁ。

よし、実際にやって見せたほうが早い気がする。


「仁左衛門さん、適当な扇子ないですか?」


「扇子、ですか。自分はもっていませんが、妻ならば…。借りてきますか?」


「坊丸様、仁左衛門殿、扇子ならば自分が持っております。坊丸様、これを」


懐から男物の扇子を出して渡してくれる、文荷斎さん。

座敷にあがり、畳一枚分離れたところに、福島さんに作ってもらった箱を置き、蓋を箱に立てかけます。


その上に、銀杏の葉の形の的をたて、文荷斎さんから渡された扇子を投擲。

よっし、当たった!って、一番普通な感じで、扇子も的も両方奥に別々に落ちただけですけど。

自分で扇子を拾って戻った後、文荷斎さんに扇子を渡して、ニコッと笑って投擲を促します。


「それがしも投げるのですかぁ…。それがし、こういった類いは得意ではないのですが…」


って、仁左衛門さんや加藤さんは興味はあるが、実際にはやる気ない感じだし、福島さんは酔っ払いですからね、消去法で、文荷斎さんですよ。

ぶつぶつ言ってますが、文荷斎さん、先程の自分の位置に扇子を持って構えます。

なんのかんの言って、キチンと対応してくれる文荷斎さん、す、て、き。


「えい」


ガツッってなかなか鈍い感じの音がしましたが、箱の方に当たり、パタリと蓋が倒れます。

少し悔しそうですが、こちらとしては、良いデモンストレーションですよ。


「と、まぁ、こんな感じで、扇子を使った的当てですな。奇妙丸様と遊んでいるときに、まぁ、なんというか?こういうのをやるはめになった、と思ってください」


「それがしも投げていいですか!」


お、加藤さん、やる気ですね、良いでしょう。是非、遊んでもらいたい。


加藤さんと仁左衛門が投げて、自分と文荷斎さんは、観戦。

福島さんは、ヤジを飛ばしながら、焼酎をちびちび呑んでます。

ほんと、酒呑みがぶれませんね、福島さん。


お互い、五回ほど投げて、当たった回数が同じ。延長ですかねぇ。

確か、テレビで見たときは、扇子や的の位置関係がレアな倒れ方だと高得点みたいな感じだったハズですが…。覚えてないし、倒れ方の名前考えたりして点数表とかつくんのは面倒だな…。


そこは、お姫さま達に丸投げしますか。

お付きの女中さんの中できっとそういうのが得意な人とかいるだろうし。きっと、多分。


「なかなか、この扇子が予想もつかない動きをするのが醍醐味ですな。ところでこれは、織田の奥方様や姫様にお渡しするのでしょう?もう少し華やかさがあった方が良いと思いますが?」


お、良いこと言うね、加藤さん。


「そうですね、何か良い案あります?」


とりあえず、周りのみんなに聞いてみます。


自分で思いつかないときは、周囲の力を借りるのに、躊躇はしない。それが坊丸のメソッド。


で、みなさん、何か良い案あります?


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