第78話 奇妙丸様のお守り中です!

ども、坊丸です。


短い火縄銃の試し撃ちの結果、信長伯父さんは、きちんと火縄銃をきちんと返却してくれました。良かった…。

でも、熱々の火縄銃を投げてくるのは、人としてどうか?肩衣姿てワンハンドシュートする姿を格好いいと思った時間を返してほしい…。

で、何故か、奇妙丸様と遊ぶ羽目に。


「坊丸様、奇妙の相手をしていただけるとか。奇妙も喜びましょう。では、我らとともに、あちらへ」


奇妙丸様と手を繋いで、奥御殿の方に行くことになりましたよ。

橋本一巴さんの形見の鉄砲を貰ったよ!って、報告に来ただけのはずなのに、なんでこうなった…。


あと、信長伯父さんの悪戯で、射撃後、まだ冷えてない火縄銃の銃身を一瞬だけど触ったせいで、左手に少し火傷したし。

ヒリヒリして少し赤いし、小さい水疱も出てきたよ…。

早く冷水で冷やして、包帯を巻きたい…、

できれば、抗生剤とかステロイドが入った軟膏塗りたい…。

イソジンやアルコールで消毒したい…って、軟膏もイソジンも無いよね…。高濃度アルコールもね…。


飲用で日本酒レベルのアルコール度数15-19度位のやつは有るけどさぁ…。


石田村に持ち込まれる酒粕を蒸留して、焼酎作れるか試すかぁ…。粕取り焼酎でも、40度くらいは行けるだろうし、複数回蒸留すれば、さらに度数上げられるはず。消毒に使うなら60%以上は、ほしいんですがね。


なんて、考え事しながら、右手を奇妙丸様とつないで、ブンブン振り回されながら歩いて行くと、奥御殿に到着。


さて、何で遊ぼう。とは言っても、まだ、相手は満2歳にならない幼児。

って、自分もまだ満で4歳ってところなのですがね。


「坊丸殿、奇妙のお相手、申し訳ございません。ただ、奇妙は、先日の饗応以来、何故か、そなたを気にしていたので、今日、会えたのは、良かったかも知れませぬ。少しの時間、付き合って、たもれ」


「はい。奇妙丸様のご希望のようですし、伯父上からの命でもありますれば」


「すみませんね、坊丸殿。ほんに、坊丸殿は、しっかりしておる。ところで、先程の鉄砲の試し撃ち、十分、楽しまれたかえ?」


「はい、伯父上も短い火縄銃を、堪能なされたようですし、橋本殿から譲り受けた火縄銃は、無事、自分の手元に戻りましたので、満足しております」


「ふぅ~ん、殿が満足、ねぇ。やはり、殿が自分から撃ちたくなったのですね?」


「あ、いえ、それがしから、伯父上に撃つ姿を見せてほしいと、頼んだのです」


「良いのですよ、坊丸殿。殿の思い付きに付き合わされたのでしょう?うすうす、わかっておりましたよ」


なんつうか、濃姫様の誘導尋問に引っ掛かった感じがするぅ。

で、濃姫様にどう答えるのが正解か頭を回転させつつ、信長伯父さんに迷惑かけちゃなんねぇと心臓はばくばく、左手は火傷でヒリヒリと、もう、何が何やら。

さっきより、左手の痛みが増した気がしますよ、ホント。


「ところで、先程から、左手を気にしておいでの様子。如何いたした?」


「はぁ、撃った後の火縄銃の銃身を少しさわってしまい、軽い火傷をしたようです」


「では、奇妙丸の相手よりも先にそちらの手当てを致しますか?」


「えぇっと」


「坊丸兄、遊ぼぉ!」


「少し、奇妙丸様のお相手をしてからにします」


「うん、坊丸兄、遊ぼぉ」


とりあえず、奇妙丸様と鬼ごっこをする事に。


繋ぎの八畳間2つの襖を開け放ち、十六畳のスペースが準備され、まずは、奇妙丸様が、逃げる役、自分が鬼役をやることに。


当然、接待&自分より幼い子供に会わせた鬼ごっこだから、すぐには捕まえず、近づいたり、わざと距離を取ったりしながら、それなりの時間、走り回らせてから、捕獲。


それでも、全身を使って走り回り、楽しそうな奇妙丸様。

よし、接待鬼ごっこ、上手くできてる、はず。がんばれ、オレ。


これを数回、繰り返すと、奇妙丸様が鬼役をやりたいと言い出しました。


「今度は、奇妙が、鬼~」


「ハイハイ、交代ですね、奇妙丸様」


鬼になってもね、接待鬼ごっこですから、右手をわざと後ろでヒラヒラさせて、捕まりそうにみせて、ギリギリで逃げるを何回か行い、奇妙丸様が少し息が上がったところで、速度を落として捕まります。


「坊丸兄、もう一回、鬼やってぇ」


「ハイハイ、良いですよ」


今度は、右手、左手を交互に後ろでヒラヒラさせて、逃げます。

つづきの八畳間2つを、8の字を書くように逃げていると、足を滑らせました。

とっさに、右手をついて、転ぶのを避けましたが、その瞬間を奇妙丸様が見逃さず、こちらを捕まえに来ます。

って、隙を見逃さずに、飛び込んで来ましたよ。

そして、こちらの左手を両手で捕まえるようにダイブ。


火傷して水疱ができた赤くなった左手に、奇妙丸様の両手が、そして、奇妙丸様の全身の体重がぁぁぁぁ!

奇妙丸様を怪我させるわけにいかないから、身を捻って、仰向けになりながら、受け止めますが…。


「痛ってぇぇ!」


ダメです。左手が耐えられません。大声が出ちゃいました。たぶん、水疱の一部も破けた感じ。

そして、急に大声を出し、痛がり出した自分にビックリして、奇妙丸様が泣き出してしまいました。


「何事です!どうしました!」


隣の部屋でみていた侍女の人がすぐに飛んできて、奇妙丸様を抱えます。帰蝶様、吉乃様もやって来ました。


「どうしました!奇妙、坊丸!見ている限り、坊丸が転んだところを奇妙が捕まえただけに見えましたが?」


さすがは、大名の正室になる人、場の把握も完璧ですよ。

奇妙丸様に状況の説明なんてできないだろうから代わりに、痛みを堪えて説明します。


「奇妙丸様に捕まった時に、火傷した左手をさらに痛めたようです。痛テテテ」


と言って、左手のひらを帰蝶様、吉乃様に見せます。

ちなみに、二人に見せる前に、ちらっと自分でも見ましたが、掌の三割くらいが水泡になった上に破れて、真っ赤に見えました。


「ひっ」


と、火傷の傷を見た吉乃様は、声をあげます。

うん、普通の女の人の反応だね。


「だから、言ったではありませぬか、先に手当てしてから、と!」


って、帰蝶様には怒られてしまいました。

もう、帰蝶様、気丈過ぎますよ、ホント。


「まことに、あいすいません」


ホント、頭を下げるしかないっす。


「何事です!」


「何が起こりました、義姉上方」


泣き止まない奇妙丸様の声を聞いて、他の侍女や警護の人とかも集まってきちゃう感じっぽい流れに。

ああ、なんか、大事になりそうな予感。たぶん、やっちまったぞ、これ。


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