第45話 二人乗りで石田村に Go! ですよ!

ども、坊丸です。柴田の親父殿が、ここ数日領地の見回りに行っていたのは、農業改革に協力してくれる村を探すためだったようです。


卵を時々持ってきてくれる村の名主、石田村の仁左衛門に話をつけてきてくれていたとは知りませんでした。そういうのは、黙ってやらなくてもいいのにねぇ。


ま、そこが柴田の親父殿らしいんですが。




「どうする坊丸、さっそく、石田村を見に行くか?」




そりゃあ、見に行きたいですけど、石田村の方にも都合があるんじゃないですか?


名主の仁左衛門さんだって、一度帰ってから、我々を迎えたほうがいいんじゃないんですか?




「親父殿、今年の稲の植え付け前にいろいろ村の状態を見たい気持ちはありますが、仁左衛門殿にも都合があるのではないですか?」




「いえ、坊丸様、見て回るだけなら大丈夫ですよ。あ、でも、柴田の殿様と坊丸様が馬で向かわれると、自分は徒歩で帰りますから、自分は村の案内はできないですな」




「ふむ、儂と坊丸が二人乗り、次兵衛と仁左衛門が二人乗りの騎馬で向かえばいいではないか」


さすが、信長配下の人、村人と家臣を馬に二人乗りさせればいいと軽く無茶ぶりします。




「いえいえ、殿様、わたくしごときが吉田様と騎馬に二人乗りなど恐れ多いです。ひとっ走り先に帰って、一刻ほどしたところで、ごゆるりと向かってもらえばいいかと」




それが、普通の反応ですよね。でも、信長配下の人には通じないと思うよ。




「まぁ、それもよいがな、善は急げじゃ。よし、次兵衛に話してくる、二人は支度を整え、門の所で待て」




ね、無茶ぶり上等なんですよ、信長配下の人たちは…




坊丸です。いま、石田村に向かっています。


ちなみに、次兵衛さんは、ため息一つついた後、普通に馬を出してくれました。




自分と柴田の親父殿はいつもと同じなので平常運転での騎馬二人乗りですが、吉田次兵衛さんと石田村の仁左衛門さんは、無言なうえ、表情がめっちゃ硬いまま、騎馬に二人乗りをしています。




さすがに次兵衛さんの馬は大人二人を乗せているので、ゆっくり&時々休みを入れながら、石田村にむかうことになりましたが、四半刻ほどで石田村に到着です。


そして、仁左衛門さんは馬を降りた時の安堵の表情が印象的でしたよ、ええ。




そして、自分の村の名主が殿様とその配下と一緒に馬に乗ってご帰還の様子に、ちょっとざわつく村人たち。


名主さんの家の傍の木に馬をつないで、人心地ついたとき、名主さんの家から奥様と思しき女性が飛び出してきました。




「これはこれは、柴田のお殿さま、本日は、うちのものがお屋敷に卵を届けたはずですが、このような様子とは、なにか、うちのものが粗相を働きましたでしょうか?」




めっちゃ恐る恐るって感じで、柴田の親父殿の前に進み出て、頭を下げました。




「俺は何もやらかしちゃねぇよ、柴田の殿様が、坊丸様を連れて、早くうちの村を見たいっていう話になったもんで、馬に乗せて送ってもらっただけだ!はなから亭主が粗相したつもりで話を進めるんじゃねぇよ!」




「だって、あんた、殿様と吉田様が二人で現れて、しかも、お前さんが一緒に馬に乗ってたら何事かと思うのが普通だよ!」




「殿さま、吉田様、坊丸様、ほんと、どうもすみません。うちのかかぁが早とちりして騒ぎ立てまして、本当にすみません」




「よいよい、儂が坊丸に早く村の様子をみせたいと急がせたせいでもある。気にするな」




「じゃあ、本当に、おまえさん、何もやらかしちゃいないんだね、良かったよ」




「たく、人のことなんだと思ってるんだ。昨日、柴田の殿様が来て、話してくれただろう。コメの取れ高をあげるための各種の試みに協力すれば、年貢をすこし優遇してくれるって。


その試みの案を出すのが、こちらの坊丸様だ。少し前に柴田の殿様が、うちの村から献上した卵で、いろいろ作って、織田の殿様に献上したって話をしてくれただろう。その、いろいろを作ったのがこちらの坊丸様だ」




「へぇ~、こんな幼いのにすごいんだね。お前さんに爪の垢を煎じて飲ませたいよ。


じゃ、うちの村をよくしてくれるかもしれないんだね。うちの村とうちの亭主をどうかよろしくお願いいたします」




と頭を下げると、ささっと、家に引っ込んでいく仁左衛門さんの奥さん。かしましい人だなぁ。




「って、ほんと、うちのやつがすみません。柴田の殿さまと吉田様は、見回りやら年貢のことやらで時々はうちの村に来ていただいているんで、すでにご存じと思いますが、本当に小さい村でさぁね。うちをいれて16戸、祖父の代に新田開発して、新しい村として認められたんですが、思ったよりも土地がやせていて、収穫量が上がらないんですよ。あと、村の端に小川があるんですが、どうしてもその周り以外は田んぼにしづらくて…」




その後、村を一通り見せてもらいました。


小川の周りに田んぼと家々が存在し、少し離れたところは畑です。さらにその向こうに、雑木林が広がっています。




「この雑木林の一部と荒れ地を、祖父とその仲間たちが開墾したのがこの村の始まりなんですよ。今ももすこしづつ、冬場は林を開墾していますが、以前ほどは進んでないですね」




畑の土を見せてもらったけど、三世代目の畑にしては、あまり土がよくない感じ。礫も多いし、土がぼそぼそしていて、やせている様子。


プランターでミニトマトとか育てた時に使った美味しい野菜が育つ土とか花と野菜の土とかいう感じの20リットル入り腐葉土とか培養土とかとはかなり違うご様子。




「ちなみに、仁左衛門さん、田んぼや畑の肥料ってどんなかんじですか?」




「田起こし、代掻きのときに、周りの雑草をすきこむ緑肥が主ですな。使い物にならない稲わらと貝があればすきこんだり、灰にしてまいたりもします。あれば、ですが。あとは、適宜、牛馬のふんと下肥ですな」




「下肥?」




「肥溜めにためた糞尿ですよ」




「肥溜めにね、溜めたやつね。わかりました」




う~ん、今の感じだと、藁を焼いた草木灰は良いとして、それ以外は、炭素/窒素比率のわるいものが多いなぁ。牛馬の糞くらいか、大丈夫そうなの。緑肥とか稲わらだけだと、たぶん窒素飢餓も起こりやすそうな感じがするなぁ…。




これはまず、たい肥づくり、土づくりからですかねぇ…


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ここまで読んでくださりありがとうございます。




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