第44話 協力体制って大切です!

ども、坊丸です。

この世界線では干し大根のぬか漬けを「たくげん漬け」と呼ぶことでほぼ確定させることに成功しました。なんだか知らないんですが、信長伯父さんに意外と期待されてるらしいので、真面目に農業改革もしないといけない感じです。






今朝も、たくげん漬けが朝餉の漬物として出ました。うん、美味しい。でもまだ、大根内のでんぷんの分解が進んでないですかね。ぬかに漬っている期間が長くなればだんだん甘くなるはず。きっとたぶん。




そんなこんなで、朝餉の後、いつものように吉田次兵衛さんの執務の隣で勉学です。最近は、武経七書を読めとか言われてます。「六韜」とか「孫子」の白文とかマジでつらいわぁ。


少し前の教材の「千字文」は白文と訓読文の両方併記されたもの、いわゆる両点本があって、本当にありがたかった。


しかも、書道の時間に智永千字文で少し臨書させられたから、文面も最初のころ40文字分くらい見知ってたから入りやすかったし。はぁ、六韜の白文マジでつらい。




そんな気分で、六韜の白文に向かい合っている中、ここ数日、朝餉の後は、領地の見回りに行くことの多かった柴田の親父殿が、今日は庭で槍の訓練しているらしく、いつもの大声が響いてます。




義兄の吉田次兵衛殿に政務させていないで、自分も書類仕事しろよ!とか心の底で思ってますが、そこはそれ、口に出さないだけの分別はありますよ。


美味しいものを作るモチベーションを抑える分別はありませんが。はっはっは。




しばらく、六韜の白文に苦戦していると、訪問客のようです。お妙さんが対応しているようですが、いきなり、台所に通されてますな。出入りの商人でもきたんでしょうか?


ちっ、柴田の親父殿や次兵衛殿に来客なら、あとは、自室で適宜自習になるかと思ったのに。




お、お千ちゃんが、柴田の親父殿を呼びに来ました。柴田の親父殿も台所に行かう様子。


レアな食材が届いたなら、お滝さんから「坊丸様~、台所に来てください~!」って呼び出しかかるんだけどなぁ。そんな感じではないなぁ。




む、聞き耳を立てなくても響く柴田の親父殿の声から推察するに、卵をいつも持ってきてくれる村の名主さんが来た様子。




やった!今日の夕餉は卵料理確定だな。何か新作作れるチャンスないかな。茶碗蒸しとか。砂糖の代わりに麦芽水あめを使ったなんちゃってプリンとか。




「ぼ・う・ま・る・ど・の! 台所のほうが気になるのはわかりますが、もうすこし、しゃんとしてくだされ!六韜の書き下し文づくりの手が止まっておりますぞ!」


気もそぞろなのが、次兵衛殿にバレバレでした。まことにあい、すません。


ここは素直に謝ります。




しょうがない、真面目に漢文と兵法の勉強をしますか…


そう思った矢先に、お妙さんから声がかかりました。




「失礼します。坊丸様、柴田のお殿様がおよびです。広間のほうにてお待ちですので、お越しください」




やった!親父殿からの呼び出しですから、今日はここでお勉強終了ですかね?ですよね!


次兵衛さんの深いため息に見送られながら、広間のほうに移動です。




「親父殿、およびとのことで、坊丸、まかり越しました」


「おお、坊丸、まずは座れ。こちら、いつも卵を持ってきてくれる村の名主、石田の仁左衛門じゃ。信長様よりご下命いただいた、石高を上げる試みに協力してくれることになった」




「津田坊丸です。こたびは、それがしの石高増加の試みに協力いたたけること、かたじけなく存ずる」




「は、石田村の仁左衛門でござります。坊丸様は、先日、柴田のお殿さまに献上した卵で、新しい調味料を作られた神童とうかがっております。こたびは協力を惜しみませんゆえ、なんなりと申し付けください」




「ありがたいことです。でも、大丈夫ですか?石高増加の策とはいえ、子供の考えたものを村の人々が受け入れてくれるでしょうか?」




「うちの村は、私の祖父が仲間たちと新田を開墾したことで始まった比較的新しい村ですから、その辺は大丈夫です。柴田のお殿さまからお話をいただいた時に村の顔役たちも同席させましたが、反対する者はおりませんでした。


それに、うちの村は、石田の名前が示す通り、石の多い荒地を切り開いた村なので、取れ高がどうしてもほかの村に劣るのですよ。


正直、多く収穫出来ても年貢は据え置き、もし収穫が減るならそれに合わせて年貢が減らしてもらえる条件なら、うちの村としてはこの話にかけてみてもいいんじゃないか、というのが村の総意といったところですな」




うん、柴田の親父殿がすこし苦笑いしております。仁左衛門さんはかなりストレートにものをおっしゃるかたのようですな。嫌いじゃないけど、そういう感じ。




でも、協力してくれる村が決まったことですから、農業改革を実現して、信長伯父さんに更に認められるよう頑張りますか。


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智永千字文は千字文を楷書・草書を両方で書いたもの。王羲之の八世孫の智永が書いたもので王羲之の書風をかなり正確に伝えていると言われております。


村と庄屋さんの名前は「石田屋」「二左衛門」から。黒龍の銘柄で有名な黒龍酒造さんの最上級クラスの銘柄が由来ですね。


ここまで読んでくださりありがとうございます。




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